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魔珠  作者: 千月志保
第1章 魔珠担当官
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舞踏会(1)

「そうだな。ちょうどいい時間だと思う」

「じゃあ、もう行くよ。近いうちにまた寄るよ。情報交換とかしたいし」

「ああ。また連絡してくれ。気をつけて」

「ありがとう。またね」

 メノウは手を振りながら船に乗り込んだ。その姿を確認して帰ろうとすると、先ほど為替所に並んでいた男性とすれ違った。真っ直ぐ前を見て早足で歩いてはいたが、目が周囲を警戒するようにきょろきょろ動いていたのをスイは見逃さなかった。スイは何事もなかったかのように歩き続けながら、その男が船に乗り込むのを確認した。

 あの男はメノウが為替所に入ってから五番目に来た男だ。為替所の手続きは、その種類にもよるものの、ある程度の時間を要する。手続きがあんなに早く終わるはずがない。現に、三番目に並んでいた女性が今、建物から出てきた。あの男は並んでいたのに手続きをしていない。船の出航までにはまだ時間はある。少なくとも手続きを済ませてから乗り込んでも充分な余裕がある。なぜわざわざ列を離れて船に乗り込んだのか。

 つけられている。

 確信は持てなかったが、あの男がメノウの後をつけている可能性はある。スイは記憶に男の顔と容姿を刻み込んだ。


 外務室に資料を取りに行くと、キリトが声をかけてきた。

「無事に帰ったのか?」

「ああ。港まで送った」

「何か気になるような情報は入ったか?」

 スイは見ていた資料から目を離し、いったん顔を上げた。

「やはりマーラルの動向は気になっているらしい」

 やはりな、という表情をしてキリトは少し考えた。

「密偵をもう一人送ってみるか」

「何か分かったら教えてくれ」

 そう言い残すと、スイは部屋を去ろうとした。

「あ、そうそう」

 キリトに呼び止められて振り返る。

「今日、陛下主催の舞踏会行くんだろ? 一緒に行こう」

「誰かエスコートするご婦人はいないのか?」

 冷ややかな笑いを浮かべながらスイは尋ねた。

「お互い様だろ。お前こそもてるくせに。嘘でもいいから誰か誘ってやれよ。喜ぶぜ」

 スイ以上に意地の悪い顔でキリトが返す。そういうキリトだってスイには敵わないが、爽やかな好青年といった印象のなかなかの顔立ちと、巧みな話術で社交界の華である。

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