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魔珠  作者: 千月志保
第4章 マーラル魔術研究所
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王の実験室(4)

「美しい顔だな。それに色気もある。お前いくつだ?」

「十五です」

 顔を直視できなくて目を背けたまま答える。

「十五とは思えない色気だ。成長した姿が見られないのが実に残念だ。それに」

 ヌビスはスイの顎をつかみ、憎々しげに力を込めた。

「十五とは思えない落ち着きようだ」

 気に入らない。なぜだか分からないが、無性に腹が立つ。この実験室に連れてこられてこんなに穏やかな表情をした者はこれまでいなかった。なぜもっと怯えた目をしない。

 乱暴に手を外し、ヌビスは部屋の端にある背の低い棚の方に歩いていった。引き出しから銀色に輝く短剣を取り出す。つかつかとわざとゆっくりと足音を響かせながら、ベッドの方に近づく。この部屋は隣の部屋と違い、絨毯が敷かれていない。冷たい石材を靴のかかとで叩く音が残酷に木霊する。

 努めて動揺を隠すようにしたのが気に障ったのだろうか。スイは考えた。だが、ここは譲れない。一瞬でも気を抜けば、動揺に飲み込まれてしまいそうで怖かった。

「待たせたな」

 低い声に反応するようにベッドの横に立ったヌビスを見る。手にきらりと光る短剣が握られている。刃の形状が武器として使う短剣とは違うような気がした。そんなふうに冷静に分析していたのが良くなかったらしい。強い魔力を感じてスイははっとする。

「ほう。魔力は感じるか」

 短剣が青白い光を帯びていた。何が起こるのか分からなくてスイはじっとそれを見つめていた。ヌビスの口元に残忍な笑いがたたえられた。左手でスイの右手首を押さえつける。ゆっくりと短剣がスイの胸に下りてくる。

 斬られる。

 動かないようにはしたが、さすがにそれ以上見ていることはできなくて目をぎゅっとつぶった。胸に刃先が触れる瞬間を見るのも怖かったが、それ以上にヌビスの狂気に満ちた顔を見るのが怖かった。

 しかし、何秒経っても痛みは来なかった。どうしても気になってうっすらと目を開ける。剣先はまだあと三センチくらいのところでスイの胸を真っ直ぐ睨んでいた。スイは目を見開いた。すると、ヌビスが勝ち誇ったように笑った。

「怖いか。どうだ、怖いか」

 負けた。圧倒的にやられたと思った。この人の狂気を見てしまった。スイはある程度他者の行動を予測し、対処するのは苦手ではなかった。そうするように訓練されてきた。何パターンかの行動の可能性があっても、その可能性を予測し、対処すれば良い。だが、狂気に駆られた人はそうはいかなかった。思考回路が全く読めないのだ。対処できるという確信が持てないことがスイを不安に陥れる。

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