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魔珠  作者: 千月志保
第4章 マーラル魔術研究所
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唐突な誘い

「お前の言うとおり、昔、そう、士官学校に入ってすぐの頃だ。マーラルに交換研修に行くとお前にも話した」

 確かに行くという話は聞いた。だが、研修から帰ってきた後、詳しい話を聞いていない。

「マーラルに行ったんだよね。どうだった?」

「うん。勉強になった」

 そのあと、二言三言交わしたが、それで話は終わりになった。会ったのが研修から帰ってきてだいぶ立ってからだったため、もうあまり話したいこともないのかもしれないと思ってメノウもそれ以上聞こうとしなかった。

 スイは真剣な眼差しでメノウを見た。何か決意したような眼差しだ。

「そのときの話、聞いてくれないか」

 メノウはスイを見つめたまま、こくりとうなずいた。


 城に着いて他の研修生六名と合流した。講義室で今回の研修を担当する講師たちを紹介され、城を案内された。案内されたのは研修生たちが使用する棟と、城の窓口のような部屋の多い中央階段の周辺だった。一部の部屋は見学もさせてもらえた。

「エルリックと申します。研修の間、あなたの担当を務めます。よろしくお願いします」

 講師たちは一人ずつ担当する研修生も決まっていて、学習や生活の相談に乗るほか、城内を移動するときの事実上の監視役でもあった。

 エルリックは三十歳を少し過ぎたくらいの男性だった。物腰が柔らかそうで優しい目をしていた。講義はマーラル史の担当だった。笑顔も穏やかで、スイはすぐに打ち解けた。

 次の日の朝から講義が始まった。マーラルの歴史や文化などを担当の講師たちから一時間ずつ教わった。間に休憩時間もあり、他の研修生と話す機会にも恵まれた。

 夕方、講義が終わってエルリックと廊下を歩いていると、向こうから王冠を戴いた人物が護衛を従えて来たのが見えた。急に隣にいたエルリックが廊下の端に寄り、スイを自分の後ろに来るように引っ張った。

「今、隠そうとしたな」

 マーラル王ヌビスだった。鋭い眼光でエルリックを見つめている。

「申し訳ございません」

 無意識にしてしまった自分の行動を振り絞るようにして出した声で詫びる。しっかりした声にはなっていたが、震えが隠し切れていない。

 ヌビスは回り込むようにしてスイに歩み寄る。スイは何となく嫌な予感がして警戒していたが、それを表に出さないように無表情を装ってヌビスを見上げた。ヌビスはじっとスイの瞳を観察しながら訊ねた。

「研修生か?」

「はい」

「今夜、私の部屋に来い」

 あまりにも唐突な誘いで、返事ができなかった。もっともヌビスは回答など聞く気もなかったらしく、そのまま行ってしまった。

 否定などできるわけないのだ。

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