表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔珠  作者: 千月志保
第1章 魔珠担当官
3/134

噂(2)

 メノウはいつものケースを取り出すと、ロックを解除して開いた。ケースも特殊な合金でできているようだが、研究所などに分析をさせても不明の成分が出てくる。やはり魔珠の里でしか採れない金属が使われているのだろう。

 中には美しく輝く透き通った球がつめられている。一粒の大きさはビー玉程度だ。この小さな球体に膨大なエネルギーが眠っているのである。スイは慣れた要領で魔珠を数えた。

「確かに」

「次の注文票も用意してある?」

「ああ、これだ」

 注文票を受け取り、さっさと目を通すとメノウは微笑んだ。いつもとあまり変わらない数量だ。

「分かった。また持ってくるよ。決済はいつもどおり港の銀行でできるんだよね?」

「ああ。いつもどおりな。ところで」

 スイは切り出した。

「マーラルの魔珠の輸入量が最近かなり増えているとの噂を聞くのだが」

 すると、メノウがくすっと笑った。

「スイは何でも知っているんだね。そう。僕たちもちょっとマークしている」

「メノウ」

 スイは席を離れて窓辺に歩いていった。レースのカーテン越しからちらっと中庭を見て、くるりとメノウの方に振り返った。

「マーラル王にあったことはあるか?」

「見たことはある」

 メノウは腰かけたまま不思議そうにスイを見上げた。しかし、スイはすぐにメノウから目をそらし、窓の方に向き直った。

「マーラル王は何をするか分からないお方だ。気をつけた方がいい」

 その目は遠い空を見ていた。


 重要な任務から解放されると、二人は部屋を出た。雑談をしながら廊下を歩いていると、シェリスと会った。

「スイ様、何かお飲み物をお持ちしましょうか」

 念のため訊いてみる。

 シェリスはセイラムの頃からこの屋敷に仕える執事で、セイラムが郊外に移るときには引き続き仕えたいと願い出たが、セイラムの方からスイの面倒を見て欲しいと頼まれ、快く引き受けた。シェリスはスイよりもよく家のことが分かっており、セイラムの仕事も多少手伝っていたため、まだ若いスイにはなくてはならない相談相手でもあった。教えてもらうこともまだまだ多い。

「ありがとう。また後でお願いするよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ