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魔珠  作者: 千月志保
第4章 マーラル魔術研究所
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情報収集(1)

 クラークから船で海を渡り、アインという港からマーラルに入国した。リザレスからマーラルに行く一般的なルートだ。

 アインからマーラルの王都ラージュまでは徒歩で来た。馬を駆れば速いが、これからしようとしていることを考えると、なるべく足跡は残さない方がいい。

 ラージュに到着したのは、もう夜だった。計算どおりだ。休む間もなく、城に向かう。

 城壁の周りには研修に来たときと同じように兵士たちが何人か巡回している。城門には二人立っている。

 確認が済むと、スイは城から離れた。

 城の南側には森が広がっている。送られてきたあの見取り図を見てメノウが兵器製造の証拠をつかむため侵入するのは、城ではなく、この森の中にある魔術研究所だ。

 魔術研究所は交換研修のときに見学したことがある。もちろん見せてもらえたのは施設の一部だったが、立派な設備と高度な技術力を擁する研究所だという印象を持った。マーラルが魔術や魔珠の研究にどれほど力を入れているか見せつけられたような気がした。

 城からはかなり距離があった。スイはぐるりと回り込むように森の西側を歩いた。

 十分ほど歩いただろうか。高い木々の間から石造りの建物が見えた。スイは建物を通り過ぎてさらに二分ほど歩き、ようやく森に入った。少し距離を空け、研究所の様子を注意深く観察しながら、足音をなるべく立てないように歩いていく。何となく木に身を隠すようなルートを通る。

 もうすぐ研究所の入口の正面というところに差しかかったとき、スイは不意に身を翻した。そして、東、つまり研究所から離れる方向に進み始めた。

 研究所が見えなくなるくらい遠くまで来ると、歩を止めた。鋭い目だけを横に動かし、スイは低い声でつぶやいた。

「何か情報を持っているなら協力して欲しい」

 すると、木の上から人が降りてきた。

「やれやれ。気配を消しても駄目ですか」

 魔珠の里の忍びの者だった。

「魔珠の力で気配を消しても無駄だ。魔珠の力は察知できるように訓練されている」

 幼い頃からセイラムに魔珠の力を探し出す訓練を受けてきた。もともとそういった素質があったらしく、スイは魔珠の力を感知する能力には長けていた。セイラムにもその素質はあったようだが、スイほどではなかった。訓練はその能力を引き出すものでしかなかったが、魔珠担当官として必要な技能とみていたセイラムは、熱心にスイを指導した。

「あなたの目的は何ですか?」

 観念した忍びの者がスイに訊ねた。

「私はメノウを助けたい」

「助けたい、ということは、メノウがすでに捕まっているということをご存じなのですね」

 少し驚いた様子で忍びの者は訊いた。スイは冷静に答えた。

「あの見取り図は偽物だ」

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