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魔珠  作者: 千月志保
第2章 尾行
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針葉樹林(2)

「それじゃあ答えてもらおうかな」

 にっこりとメノウが微笑む。

「誰の命令で僕を尾行したのかな?」

 そのとき、尾行者が腰に手をやった。首を押さえていたスイがそれに気づき、尾行者の右腕をねじ曲げた。尾行者が痛みで悲鳴を上げたとき、腰にやっていた手から小瓶が落ちた。スイは背中に膝蹴りを入れながら白いハンカチを取り出し、尾行者の口元に当てた。尾行者は目を閉じ、ぐったりとなった。スイはため息をついた。

「手間がかかる奴だ」

「寝てるの?」

 完全に意識を失っている尾行者の顔を見ながらメノウが訊いた。

「尾行しながら、ハンカチに睡眠薬を染み込ませておいた。暴れるのではないかと思って」

「用意周到だね、スイは」

 スイはそっと尾行者を横たわらせて、先ほど落ちた小瓶を拾った。見覚えのある小瓶だ。蓋を開けると、特有の匂いがした。

「どう思う?」

 メノウに渡すと、メノウも瓶を鼻にあまり近づけないで匂いをかいだ。

「毒薬だね」

 スイは頷いた。

「こんなものを持って尾行して、失敗したら情報を漏らさないように自ら命を絶つ。こんなことをするのは」

「マーラル軍で間違いないね」

 メノウは立ち上がった。くすっと口元から笑いがこぼれる。

「ありがとね、スイ。君が気づいてくれていなかったら、大切な情報源を失うところだった」

「いや。間に合って良かった」

 スイも気配を感じて立ち上がる。

「いっぱいしゃべってもらうからね」

 意識のない尾行者にメノウが笑いかける。

「後はお任せしても良いだろうか」

 わざと聞こえるように少し声を張り上げると、背後の木から二体の影が落ちた。

「気づいておいででしたか?」

 黒装束の男が二人、スイの両脇を通って尾行者の左右に立つ。魔珠の里の忍びの者だ。この先の集落で待機していて、メノウと打ち合わせていた時間を見計らって林に潜み、動きを見張っていたに違いない。

「後は我々でやります。スイ殿はお帰りになって結構です」

「メノウ、お前はどうする?」

「このまま山を越えてパウンディア側のいちばん近い町に行くよ。協力してくれてありがとう、スイ」

 メノウがスイの手を握ると、いつものいたずらっぽい笑顔で片目をつぶってみせた。

「情報、楽しみに待っててね」

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