勇者の資質を
「勇者様、御目にかかれて光栄です。」
いかにも魔法使い、といった感じの少女は、見た目よりも大人びた口調で言った。
「私はルル、魔法学校で教師をしています。高等魔法には理論の勉強が必要ですが、簡単な魔法は呪文と、少しの想像力で発動することができます。」
大勢の町人に見守られ、僕は魔法学校で魔法の適性検査を受けることになった。
「どうも、ナギです。よろしくお願いします。」
「よろしくお願い致します、勇者様。早速ですが魔法の使い方について説明致します。まずは魔法の初歩、属性魔法です。」
「属性魔法…」
いよいよ異世界らしくなってきた。僕は昔からゲームやアニメで、光の魔術師とかそういうのに只ならぬ憧れを持っていた。光の属性魔法に適正がありますように…
「属性魔法には火、水、土、風があります。」
光魔法無いんかい。
「加えて、魔王の扱う闇魔法がありますが、私たちには扱えません。まずはてを前に出して、火を明確に想像してください。そして、身体を流れている血液を手に集中させるイメージをもってください。すると魔力が手に集中し、火となって放出されます。」
「わかりました、やってみます。」
僕は集中し、イメージした。僕の手から赤い炎がばっと飛び出し、メラメラと燃え盛る。炎はオレンジ色で、所々赤く、柔らかく光を放っていて…
「…」
「勇者様…ダメ…ですね…」
「あ、そうですか…」
「水!水属性なら使えるかもしれません!」
「やってみます。」
結論から言うと、全ての属性に適性はなかった。加えて、中級魔法に当たる治癒魔法や移動魔法も試したが、全く発動する気配がない。
こんなことがあるだろうか。
「勇者様、属性魔法に適正を持たないことなんてこの世界ではあり得ません。もしかして、本当に魔力を作る器官が無いのかもしれません…」
ヘラが申し訳なさそうに言った。
現実は甘くない。
「そうですか…やっぱり僕は役に立てないかもしれません。」
野次馬の町人は途中からぞろぞろと帰ってしまった。
「練習ならいつでもご一緒しますので、お声かけください。」
ルルはそう言ってくれたものの、魔力を持っていないなら、練習でどうにかなる問題ではなさそうだ。
どうしたものかなぁ…
ひとまず、ヘラの家へ帰ることにした。