死者蘇生
結論から言うと、死者蘇生は成功した。
パタパタと飛んで逃げるハルピュイア。
ただ、頭で強く念じると、ハルピュイアは羽ばたきをやめ、僕たちの前にひざまずいた。
「ナ…ナギ様…わたし信じられません。死んでいたものが生き返るなんて…しかも操ることができるなんて…」
いや僕だって信じなれない。
「それに、ナギ様が闇魔法を使えるということは、ナギ様は魔族ということになります。私、ほんとに今ちょっと混乱していて…」
「いいや、違うよ。魔族じゃない。」
僕は言った。
「僕をこの世界に呼んだ神様が、人間の神様じゃなかっただけだよ。」
そう。通常の四属性の魔法は神を、
闇魔法は死神を信仰している種族が使えるとされており、
人間は四属性魔法を、魔族は闇魔法を使える。
僕は神ではなく、死神に呼ばれ、死神に愛されているということだ。
「まさか…ナギ様は、ヘイラムのために、私たちの王や神が召喚した勇者様では無かったということでしょうか?」
「僕もそう思っていたんだけど、今回のことではっきりしたみたいだ。元々、魔力がないわけでもないのに、四属性の魔法全てに適正がない時点で少しおかしいなと思っていたんだ。」
そうだよ。異世界転生なんて、チートを使って楽して困難を切り抜けて、可愛い女の子とハーレムするもんじゃないか。
闇魔法が使えるとわかるまでずいぶんと時間がかかったが、これで少しは国王からのオーダーに応えられそうだ。
と、なんだか本質的ではない部分でホッとしてしまった。
僕は呼吸を整えて言った。
「ただ、闇魔法が使えるという事実を誰かに知られると面倒だね。魔族だと勘違いされてしまいそうだ。」
「申し訳ございません、私も勘違いを…」
「いいんです。少し整理させていただけますか?今日はもう休みましょう。」
そう。今までもそうだったが、
より慎重にならないと、立ち回りをミスれば死ぬ。
どうにか考えなければ。
また、もう一点重要なことがある。
死神はどうして僕を、このタイミングで、この世界に呼んだのか。
1000年前に召喚された勇者は現魔王だが、これはどちらの神に呼ばれたのか。
本当にこのまま人間陣営について、
魔王を打ち倒すのが、僕に求められた役割なのだろうか?




