恐ろしい魔王
僕は、王宮図書館で歴史書物を漁り、一番古そうな本を手に取った。
魔王は元々、向こう側の世界の人間だった。
約1000年前、ヘイラムの勇者として召喚され、国を救った後、国を追放された。
平和な世に、過ぎた能力は必要ないのだ。
そんな内容が、ヘイラムの都合が良いように書かれていた。
「義務教育では、勇者は平和をもたらした後、光に包まれもとの世界へ帰ったと習いました。」
ヘラは言った。
この国は、勇者を追放し、彼を歪め、魔王にしてしまったことを隠蔽している。
そして魔王は、異世界人である僕に宣戦布告した。
お前の手の内は分かっているぞと釘を刺されたのだ。
「不味いことになった…」
様々な特殊能力を持つ魔物を統べるほどの能力を発揮し、この1000年で魔王に君臨したことを考えると、彼は相当優れた人間だ。
しかも1000年生きているということは、この世界の魔法が使えるか、テロメアを弄るほど生物化学に精通しているかのどちらかだろう。
もしかしたら、僕のいた平成より未来から召喚された人間かもしれない。
ただの大学院生である僕では部が悪すぎる。
ここに来て初めて、魔王の恐ろしさを思い知った。




