勇者になった日
「期待以上であった、勇者よ。数々の無礼を許してくれ。」
王は言った。
「いえいえ、とんでもございません。」
僕はこう答える他ない。
王とはつくづく勝手で、都合がよくて、強欲なもんだな。
僕たちは先の戦地での功績が認められ、勇者として表彰、そして軍幹部として入隊することとなった。
勿論拒否権はないが、殺されたり、ヘラの故郷が焼け野原になるより随分マシだ。
たくさんの貴族や軍幹部、王族を交えた「勇者お披露目パーティー」は深夜まで続き、僕たちはすっかり疲弊して部屋に戻った。
「私が申し上げることではないのですが…。これで…よかったのでしょうか?」
ヘラが聞いた。
「これしか方法がなかったんです。正しいか正しくないかはさておき、僕たちにとってこれは最良の選択だ…。」
こうするしかなかった…。ここ数日、僕がずっと反芻して、自分に言い聞かせてきた言葉だ。
「そうですよね…!命も故郷もある。ついでに国まで救えるなんて最良ですよね…!」
ヘラは明るく振る舞おうと努めていた。
彼女の優しさも、きっといつか彼女の心を蝕むのだろう。
いくら国民に感謝されたって、王に誉められたって、心は晴れることはない。
それは、次の戦場への切符にすぎないのだ。
ダイナマイトを発明したノーベルは、発明したことを後悔しただろうか?
カラシニコフは…?ロバート・オッペンハイマーは…?
発明家気取りなんて烏滸がましいが、僕はきっと今、たくさんの偉人が経たこの境地にいるのだと思った。




