戦場
朝。
この3日間はほとんど寝られなかった。
僕は今日、初めて戦場へ行く。
「ナギ様。私は演習や狩りで戦闘に慣れています。ヤバくなったら、私を盾にとにかく逃げてくださいね。」
「ありがとう、ヘラさん。そうならないために、3日間訓練してきたんだ。絶対、絶対死なないでくださいね。僕も頑張りますので。」
「そうですね…。絶対生きて帰りましょう。まだしたいことはたくさんあるので!」
僕のせいで戦争に巻き込まれてしまったヘラには詫びても詫びきれない。
だったら絶対に守ってみせる。
大丈夫、きっと大丈夫だ。
ヘラは馬に乗り、僕は騎馬隊の後ろに乗せてもらい、国境付近に向かった。
魔族の軍は、もうヘイラムの国境ギリギリまで侵攻しているのだそうだ。
震えが止まらない。
ゲームでの戦闘とは訳が違うんだな。
分かってはいたけど、手汗が止まらない。
弓を避け、土煙を浴びながら、僕たちはついに前線の基地にたどり着いた。
馬から降り、魔術師のいる後方部隊と合流したときには、「勇者が後衛?」と部隊がざわつくのが聞こえた。
「よし、行きますよ!」
そんな兵士をよそに、勇ましく叫ぶヘラ。
「ぉぉおおおし!や、やるぞおおあぁ!やってやる!!」
これは声が裏返る僕。
「1時の方向にファイヤー!」
「はい!いきます!」
僕は戦場の真っ只中に水素を錬成し、ヘラはそれに火をつけた。
ドーーーーン
大きな爆発音と共に、一画は炎に包まれた。
仲間のいないところに打つのはやはり難しく、あまり大きな規模では攻撃できない。
それでも大魔法の発動に仲間の士気は上がったように思えた。
「じゃあ新技いきましょう!」
「はい!」
ヘラの土魔法で土を掘り返してもらい、僕は99%の鉄と1%の炭素でせっせと鋭利な破片を生成した。
そう、鋼鉄だ。
これをヘラの風魔法でガンガン飛ばすと、即席銃の完成である。
本当は比重の高い(小さくて重い)鉛で弾丸を作りたかったが、地中には鉄のほうが多い為仕方ない。
鉄は土1kgに約40mg。中でもここは鉱山付近であるため、鋼鉄の生成にはもってこいだ。
ヘラの働きにより、鋼鉄でも十分な戦果をあげることができそうだった。




