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夢から現実へ
これは夢じゃなくて、紛れもない現実なのではないか。
そう疑いを持つのに時間はかからなかった。
まず、飯がうまいのだ。さっきの美女が作ってくれたのだが、中世の西洋風の暮らしぶりだったために、てっきり固いパンと味の無いスープと…といったことを予想していた。しかしそれはすっかり裏切られてしまった。
パンも柔らかく、野菜も新鮮で、なにより塩味がしっかりしている。こういう時代って、塩とか砂糖とかは貴重なんじゃないのか。
そんなことはどうでもよくて、何が言いたいかというと、夢でこんなに鮮明に味覚がはたらくのかということだ。
風の冷たさも、恒星の暖かさも、人の温かさも、妙にリアルなのだ。
なにより、夢から覚める気配がないのだ。
夢から覚めなければ、ここで上手に生きていく他ない。
ひとまずはここが現実なのである。
勇者でーす!と軽々しく宣言したことが早速悔やまれた。
しかも、事態は深刻なようだった。