大賢者の詭弁
ヘラが処刑?
待って待って、待ってくれ。
もとはといえば、悪いのは僕だ。嘘ついて、取り返しのつかないことになって…
一緒に帰ろうって…
アマルガヘ帰ろうって言ったじゃないか…
「待ってください…」
勝手に口が動いた。
「僕は勇者ではありませんが、賢者です。異世界の大賢者です。僕のいた世界では、この世界よりも科学が発達しており、戦争はより高度な技術を駆使して行われています。異世界の戦争兵器や殺戮技術を伝授し、この戦争に勝利して見せましょう!」
「なっ!ナギ様!」
「ヘラは黙って!」
僕は何をいっているんだ?頭は真っ白だが言葉はなにかを取り繕うかのようにどんどん出てくる。就活の面接のときみたいだ。
「国民には、僕が勇者ということにしておけばいい。士気の低下も防げます。要は、魔王軍に勝てばいいんでしょう?」
「さらに嘘を重ねるというのか詐欺師よ。何を企んでいるのかは知らんが信用できん。」
「僕たちがここに来るまでに魔物の群れに襲われましたが、無傷でここにいることが証拠にはなりませんか?僕を殺すのは、試してみてからでも構わないではありませんか。それとも、他に戦争に勝つ策がおありで?」
「それは…」
王が口ごもる。
もちろん僕は戦争兵器も殺戮技術も知らないし、戦争に勝つ方法も分からない。大人をこんな風に煽ったのだって初めてだ。
「僕が使い物にならなければ、勇者を騙り、王を騙した反逆者として晒し首にでもしてください。」
ヘラを死なせたくない。
その一心から出た、ただの詭弁だ。
「…少し考えさせてくれ。衛兵、この者達を牢獄へ!」
僕たちは地下へ連れられ、牢獄に投げ込まれた。
「ナギ様…」
「ごめん、僕が悪いのはわかってるから。今は何も言わないで。」
「…すみません。」
牢獄にはランプの炎が燃える音だけが響いていた。




