国王謁見
「こちらです、勇者様。」
遂にこの日がやってきた。もしかしたら、人生最後の日かも。
「いよいよですね…私も王にお会いするのは初めてです。」
ヘラが緊張した様子で言った。
僕達は王宮の一室に通され、待つように言われた。テーブルにはこの国の名産であろう果物がカットされていたが、食べる気にはなれなかった。
「ふぅぅぅぅ…」
ヘラが大きなため息をついた。僕も緊張にはめっぽう弱いため、今日を乗りきれる気がしない。卒論発表会よりも緊張する。
「勇者様、クーゲル王謁見の準備が整いましたので、王室へご案内致します。」
「はい、よろしくお願い致します。えっと…ヘラも一緒で大丈夫ですか?」
「お付きの方でしたら同行可能です。」
僕達は王宮兵に連れられ、大きな扉をくぐった。
すると、王座にはいかにもなおじさんがどっしりと座っており、僕は緊張から頭を下げた。
「名はなんと言うのですか?勇者よ。」
「はい、国木なぎさです。皆からはナギと呼ばれております。」
「ナギ、遠くからはるばるご苦労だった。双方忙しい身であろう、早速本題なのだが…」
クーゲル王は髭を撫でながら言った。
「ヘイラム王国が危機に直面しているのは知っているかな?」
「はい、ヘイラム国民から聞いております。」
「ナギは異世界から来た勇者だそうだが、我々に力を貸してくれんか。我々と共に、魔王を討ち滅ぼして欲しい。礼なら何でもする。」
心が苦しい。ついに白状しなければならないときが来た。
「あの…それがですね…」
「クーゲル王、失礼致します。アマルガのヘラルーシ・ヘルラータと申します。」
ヘラが突然話し始めた。突然の出来事に、僕は固まった。
「実はナギ様が勇者様というのは私の勘違いでした。申し訳ありません。クーゲル王をはじめ、国民にいらぬ期待と大きな混乱を招いてしまったこと、どうか私の命で御許しいただけませんでしょうか。」
…まってまって、今私の命って言った?話が違うじゃないか。
「待ってください!確かに僕は勇者ではありませんが、国のために戦うことはできます。魔王討伐には協力しますので、ヘラの命だけは勘弁していただけないでしょうか。」
「ナギ様…」
王は眉間にシワを寄せ言った。
「その女の言うことが本当なのであれば、図らずとも国家の混乱を招いたことは許しがたい事実である。私自身もえらく失望した。国民の士気の低下は避けられん。その女を処刑しろ。」
…え?は??
鼓動はどんどん早くなり、頭が真っ白になった。




