再戦
他にすることもないため、本を読んで一日を過ごした。
セーミャから二日ほど馬車を走らせると、遠くにアシハルトの町が見えてきた。
「あれがアシハルト…」
「あー本当に楽しみです!私、行ったことないので。」
ヘラがはしゃいでいる。観光じゃないっていってるのに…
もうすぐで本も区切りがいいし、僕も早く馬車から降りて伸びでもしたいなぁ…なんて考えていたその時、大きな揺れと共に馬車が止まった。
大きな衝撃だったため、僕たちは椅子から投げ出されてしまった。
「痛ッ…。どうしたんでしょうか?」
僕たちは警戒しながら、窓から外を覗いた。
「ーーッッ」
僕は叫びだしそうになるのを必死におさえ、窓から顔を離した。
魔物だ。
豚のような、猪のような、二足歩行の魔物の群れに囲まれている。ざっと10体はいそうに見える。
「な…ナギ様、大丈夫です。兵士たちもいますし、私も応戦しますから。」
僕は魔物との戦闘を思い出した。胸の大きな鼓動と、脂汗が止まらない。落ち着け、落ち着け、、
ガン…ガン…ガシャンッ…
馬車が攻撃され、今にも横転してしまいそうだ。
「ナギ様、外へ出ましょう。」
扉を蹴破り、僕たちは兵士と合流した。兵士たちは魔法や剣でそれぞれ交戦している。兵士の1人が走り寄ってきてた。
「勇者様、ご無事でしたか!」
「はい、なんとか…そちらは大丈夫ですか?」
「二人が負傷しました。今戦えるのは私を含めて4人…」
戦況は思わしくない。
「私もお手伝いします!ナギ様、下がっていてください。」
杖を取り出し、ヘラが言った。
ここでこそこそと隠れていては男ではない。そう思ったが、僕にできることはなにもなかった。
僕にも魔力さえあれば…。悔しさが込み上げる。
「ハッ!」
ヘラは魔物に向けて炎を放った。いつもの温厚なヘラからは想像もつかない姿だ。
炎はばっと広がり魔物たちを怯ませたが、致命傷を与えるほどの威力ではない。
「私には時間稼ぎしくらいしか出来ないかもしれませんね…ナギ様、負傷した兵士と一緒にできるだけ離れてください!」
女の子に庇われて、敵前逃亡。本当に情けない。
僕にできることは…僕にも戦う手段があるはずだ…
僕にできることは…
「そうだ、その手が…」
僕は手を叩き、魔物の群れの真ん中にかざした。
「ヘラさん下がって!」
「ナギ様、何をしているんですか?!早く逃げて!」
「いいから!下がって魔物の群れの真ん中に炎を投げ込んで!」
「えっ…分かりました。やぁッ」
ドーーーーン
ヘラが炎を放った途端、大きな爆発音と共に、炎と爆風が広がった。爆発の起きた辺りには数体の魔物が倒れており、立っている魔物も驚きからか動きを止めた。
「な…何が起きたのですか…。あなたは一体何者なんですか…。」
兵士はヘラの顔を見て驚いた様に言った。
「ナギ様!私に何をしたんですか!もう一回!次で全部倒しますよ!」
「はい、任せてください!」
どうやら上手くいったようだ。
僕たちは畳み掛けるように攻撃し、残りの魔物も追い払うことができた。




