読み書き学校
「さあ、出発しましょう。」
馬車に乗り、僕たちはセーミャを出発した。
「次の町はアシハルトです。ワクワクしますね!」
「アシハルトでは何が有名なんですか?」
「お金持ちが多い町というイメージです。観光とか産業はあんまり有名ではないんですけど、ご飯が美味しいですね。」
美味しいご飯か…楽しみだな。しかし観光にきたわけではないのだ。
僕はペンとノートを取り出した。
「良かったら、アシハルトに着くまで文字を教えてくれませんか?」
「もちろんです!」
ヘラはそういうと、僕のペンを取り、丁寧にも字を書き始めた。
こちらの文字には、漢字や片仮名に当たるようなものはなく、文章は全てアルファベットのような48文字の組み合わせで出来ていることが分かった。
話すこともできているし、あとは文字と音を対応させるだけだった為、すぐに覚えることができた。
「やっぱりナギ様は頭がいいですね。」
「そんなでもないよ。しかも勉強以外は全然だし…。そういえば、勉強苦手って言ってたけど、ここにも学校はあるんですか?」
「はい、小さい頃はみんな同じ学校に通って、読み書きとか計算を学びます。卒業すると、さらに専門的な知識を身に付けられる学校に行くか、職に就くかを選ぶんです。」
「へぇ、僕の世界とあまり変わらないですね。ヘラさんは卒業後、進学したんですか?」
「はい、魔法を専攻していました。私こう見えて、四属性と中級魔法が使えるんですよ!」
「四属性!?それってすごいじゃないですか。」
「いや、つい自慢しちゃったんですけど、それがそんなに珍しいことでもないんですよ…5人に1人くらいは使えるんです…」
驚き損である。
「で、でも、5人に1人でも凄いですよ!僕なんか一属性も使えないし…」
「そっちの方が珍しいですよ!」
ヘラがクスクスと笑った。
ヘラも言い返すようになってきたな…
「うう…いいです、僕には錬金術があるので。勉強するから邪魔しないでくださいーだ。」
僕はヘラに買ってもらった錬金術の専門書を手に取り、ヘラに背中を向けた。
「わああナギ様、すみません!邪魔しないようにするので、こっち向いてください。一緒に勉強しましょう!」
…かわいい。
僕は仕方なくヘラの方を向き、二人で読み進めることにした。




