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化学修士の僕が異世界で錬金術を専攻した結果  作者:


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錬金術との出会い

「それでは、右の容器に塩を、左の容器に水を移動させることを明確にイメージして、手をかざしてください。」


目の前には食塩水。これは僕たちが持ってきた塩と、水を混ぜ合わせたものだ。

そして明確に、という言葉。魔法の適性検査の時にも言われたが、重要なキーワードのようだ。


「呪文とかは…」

「特にありませんよ?」


魔法の時もそうだったが、なんだか締まらない。まぁとにかくやってみよう。右の容器には白い粉がさらさらと現れ、もう一方では透明な液体がじわじわと容器を満たしていく…。


「だめ…ですか?」

「だめみたいですね。」


何がいけないんだ。神様僕のこと嫌いすぎだろ。ハードモードにも程があるわ。折角異世界に来ても地球の常識に囚われ、魔法も錬金術も使えないなんて…


「錬金術は想像力です。いかに明確にイメージできるかが鍵なので、魔法と違って知識が重要になってきます。錬金術師には頭の良い人が多いのも特徴です。知的なナギ様ならきっとできるはずです。諦めずに、がんばりましょう!」

「僕は知的なんかじゃないですが…ヘラさんがそういうなら、もう少し練習します。」


明確なイメージ、塩、錬金術…

食塩水中のNaとClを想像する。HとOは無視して、それを取り出すように右の容器に集める。Na+とCl-が引き合って、NaClとなって容器に流れ込む。最後に大好きな某錬金術アニメをイメージし、一度パンッと手を叩いてから容器にかざした。







「すごいすごい!やっぱりできたじゃないですか!」


ヘラが大きな声をあげる。右側の容器には、塩がさらさらと降り積もっていく。


「よかったぁぁぁぁぁ」


僕は心底ほっとした。錬金術まで使えなかったら、僕は本当に無能の無能である。


「あれ、これって…」


僕が錬成した塩を見てヘラが言った。


「真っ白?」

「なにかおかしいですか?」

「一般的に流通している塩は、少し黒っぽいものです。私たちが錬成すると、必ずそうなるのですが…味見してみてもいいですか?」


ヘラと僕は塩を少しずつ口に含んだ。


「うーん、普通ですけどね。」

「いえ、すこし風味が違います。癖がないというか、なんというか…」


この世界のものと食べ比べてみたが、確かに雑味が少ないように感じる。


「地球の塩の方が、純度が高いのかもしれません。」

「純度、ですか。どのようにイメージして錬成したのですか?」

「水中のナトリウムイオンと塩化物イオンを、容器の上でイオン結合させるような…」

「待ってください、何をいっているのかさっぱり分からないので是非とも説明してください!」


ヘラがワクワクした目でこちらを見ている。


「この世界には、化学という概念はありますか?」

「科学ですか?ありますよ!」

「じゃあ元素記号とか、周期表とかは?」

「うーん、わかりませんね…」


ヘラとの話のなかで、この世界にはサイエンスの科学はあるが、ケミストリーの化学がほぼ存在していないことが分かった。化学を専攻してきた僕は分子式や原子の構造をイメージすることができるため、「明確なイメージ」が大切な錬金術との相性が抜群に良いことも分かった。

僕の異世界生活に、一筋の光が差した。


「ナギ様、すごいです。きっと偉大な錬金術師になれますよ!」

「塩ひとつでそんな大袈裟な…。ところで、錬金術って攻撃や防御に応用できたりしますか?」

「防具や武器の素材作りには欠かせませんが、残念ながら、直接戦闘に参加することはないですね…」


錬金術の適性があったものの、過酷な異世界を生き抜く力が皆無なことには変わり無いようだ。

ひとまずは僕が異世界で唯一得た特技を大切にしようと思った。



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