第4話 自己紹介 2
大好きな人を苦しめてはいけない。
例えそれが自分を苦しめようとも・・・・・・。
それならば、大好きな人たちにとって「僕」という存在事態がその要因になるならば、いったいどうすればいいのだろうか。
透明になりきることなんて出来ないこの現実で、存在を否定された自分は、いったい・・・・・・・・・。
僕たちの関係は近からず遠からずという表現がぴったりなものだった。
漫画のように毎日べったり側にいるわけでもなく、それでも廊下で会えば少し話し込んだりするし、たまにいっしょに帰ったりもする。クリスマスや初詣などのイベントも三人で祝うことが多かった。
しかし、時を重ねるということはそれだけでなにかしらの変化をもたらすらしい。もしくは僕たちも恋愛というものに憧れる年齢になったのかもしれない。
とにかく、仲のいい三人という枠組みもしだいに変容していった。それも形だけはそのままに・・・・・・・・。
中学生の終わり頃のことだっただろうか。僕は自身の周りの環境を完璧に理解したのは。
僕に対する呼称は年を重ねる毎に変わっていった。
小学校の頃はチキ君。
中一で千秋君
中二、中三で星野。
そして今、高校二年生では福部、もしくは宇井野の知り合いとなっていた。
月が昼間は太陽の光でかすむように、対比物のせいで僕は限りなく薄くなっていった。中学はまだエスカレーター式で知り合いが多い分よかったが、高校では泣きたくなった。
そうなることを予見していた中学生の僕は、結構聡いタイプなのかもしれない。
僕は至ってふつうだ。
鍵かっこがつくくらいに、普通。
女の子が頬を染めてうつむくほど格好良くなければ、嘲笑されるほど格好悪くもない。
体型も中肉中背で、スポーツも勉強も得意ではないが、苦手でもない。
そんな「ない」が集まった僕が「ある」が集まった人のそばにいるのは、周囲の人間にとって気にくわないらしい。
知り合いと友達。そう分けて呼ぶのもその現れなのだろう。
それでも僕は二人が好きだった。
たとえ周りの人に疎まれようとも・・・・・・。
両親が僕に対して憐憫のまなざしを向けようとも・・・・・・。
酒に弱く、缶ビール一本で真っ赤になってからんでくる福部圭介の事が。そんな僕たちを見て、腰まで伸びる絹のような黒髪を揺らして、リスみたいにコロコロと笑う宇井野未兎の事が。
そしてわかっていた。
聡い僕にはわかっていた。
秀でた者は互いに引き合い惹かれ合うことに。仲のいい三人組は、二人と一人になるだろうことに。周りが思う仲のいい彼氏彼女とオマケ1という形に落ち着く事に。
わかっていたし、望んでいたんだ。
でも、二人はやさしかった。疎ましいぐらいに。
僕たち三人は皆、それぞれに気を使いすぎていた。