第2話 commit suicide
2月14日(土)
僕は透明人間になりたかった。
そこにいるのに見えない、そこにいるのに触れられない、そこにいるのに気づかれない・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんな存在に。
でも、それは無理だと知った。それは人間のできる範疇を越えていた・・・・・・・・・。
ならば、僕はどうするべきなのだろうか!?
そんな不毛な自問自答に終止符をうつ答えをやっと僕は見いだせた。いや、見いだすと言うと少し語弊がある。もうずっと前に、この選択肢は僕の頭の中に存在していたのだから。
でも、僕は躊躇っていた。本能と理性がうまくつりあって、天秤が一方に傾くことはなかった。
両義的感情の葛藤にくるしむだけだった。
それが・・・・・・・。
薄暗い部屋の中、しめきったカーテンの隙間から日の光が僅かにはいりこんでくる。それがいやに眩しく感ぜられた。
ふと顔をあげると視界のなかに立ち鏡が目に入った。天井からのびた荒縄を首にかけ、イスにうつろな感じで立っている男がそこには映っていた。
アホみたいだなぁ
無論、それは僕である。改めてみる自分は、やはり冴えない平凡な男子高校生の何者でもなかった。むしろ覇気がないぶんより悪い。若さがくすんで見える。
ふぅー
つい溜め息がこぼれる。親に申し訳がないという思い。それに瓜生たちにも。
自殺だなんてなぁ。
去年の今頃はこんな風ではなかった。
他の男子学生同様意味もなく盛り上がって、学校からの帰り道仲間と一緒に来年こそはなんて言って慰め合い、未兎からもらったハートの上にでかでかと「義理」と書かれたチョコにかぶりついていたはずなのに・・・・・・。
今年はこんな味気ないことになるとは
考えたくなくてもつい思考を止められない
自嘲の念をこめた笑いが顔を歪める。ここ数日でそんな表情もだいぶうまくなった。
僕はここまできてもまだ迷っているのだろう。
本当はこんな形で2人と別離をはかりたくなかった。その想いも確かだ。でも、馬鹿な僕にはこれ以外の方法なんて思いつかない。どんなに出来の悪い頭を捻ってもなにもでてこなかった。
こんな自分に反吐がでる。
それでも約束だけは守ろう。その想いだけが今僕を突き動かす。
たとえ他人からみたらただの自己保身だろうと、自己陶酔だろうと、自己暗示だろうと・・・・・・。
たとえ自分が苦しかろうが、悲しかろうが、痛かろうが、それが大好きな人からもたらされるものならば、耐えろ。そして、自分は絶対にその人にそんな思いをさせるんじゃない。
それが男ってやつだ。
僕は今までこの約束をひたすら守ってきたんだ。だから今回もそれにしたがうだけだ。
机の上の写真を見つめる。少し前までの僕らが写っている。最後くらいこんな風に笑いながら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・本当の暗闇に向かって、僕は、ダイブした。