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第四章第十九話 魔獣討伐作戦③

一度折れると復活が大変でした。ゆっくりとですが少しづつ書いていきます。お待ち下さった皆様に感謝を。

第四章第十九話 魔獣討伐作戦③



 ダークエルフの隠れ里から拠点に戻り、ダイニングでお茶にする。ホゥとひと時の休憩を入れ、皆が集まってきた所でどうするかの相談会だ。


「あたしサラと結婚するんだ。みんなはどうするの? 姐さん達もするってさ」


 当然の様にあっけらかんとリュディーが皆に報告する。


「私はもうゲシュタルの家から結婚したものとして扱われてるから・・・」


 何気に自分の現状を報告するヤルルーシカ。


「ティア達3姫も婚儀の準備で帝都に行ってるらしいな」


 マイヤが3姫たちの動向を確認して来る。あれ~。作戦練ろうよ。大森林での討伐作戦だよ? 大変なんだよ? 結婚の話になっちゃってるよ。


「あ、あたし達もかな? ライラ」


「・・・そうみたいだけど。どうするのアン」


「もうなんかいいかなって気がしてきた。ご飯はおいしいし、冒険も出来るし。風呂もあるんだよ」


「・・・そうだね。侍女さん達も色々やってくれるし至れり尽くせりだもんね」


「そうだよ。既に全部見せちゃってるし、なんも怖くないしさ」


「・・・うん。見せちゃってるね。見ちゃってるしね。って言うどころか触っちゃってるね」


「僕はいつでもドンとこいだよ。じいちゃんになんて言おうかな~」


 ミヤはあまり深く考えてないようだ。既に前回の馬車の中で覚悟をしていたのかもしれない。


「マイヤ。何かみんなノリノリなのですが、あなたはどうするのですか?」


「アンジュこそどうするんだ。身も心も捧げるとか言ってたんだからお前もノリノリだろう?」


「ええ。そこは別段既に覚悟していましたが、結婚するとまでは思っていませんでした。意外と捧げるのと結婚の覚悟は違うと言うか考えてなかったというか」


「まあ、そうだな。私もあまり深く考えてなかったが、いざするとなるとうろたえるな。まあ、でも良いじゃないか。みんなと一緒だ。それほどビビる必要はないぞ」


「心外な。私はビビってなどいません。ドンとこいです」


 ははは。とか笑い声が上がって満場一致で結婚はすることに決まったらしい。よく考えたら俺って結婚する事にしたんだっけ? なんか雰囲気に流されてるけど・・・。


 細かい事は後で考えよう。今は魔獣討伐作戦のために集中だ。


「え~っと。そろそろいいかな?」


「ああ、あ、あなた。いいぞ。なにするんだ?」


 おお~。とか声が上がってる。無理に呼び方を変えなくてもいいんだけど。どうも調子が狂うな。


「魔獣を呼び込むのに人が200人弱ぐらいいる。確実な所で300人もいればいいかと思うんだけど」


「そうだね。あなた。僕も呼び方変えてみるよ。ちょっと恥ずかしいかも」


 えぇ~。無理にあなたって付け加えなくてもいいよ? 普通に喋ろうよ。


「ええ、あなた。外に居る兵隊さん達にエルフとダークエルフの兵を加えればそのくらいになるから問題ないんじゃないかしら」


 うわぁ。ヤルルまで無理にあなたつけてきたよ。何かみんながモジモジしながらもあなたを付けるタイミングを図ってる感じだ。


 まあ、今までも時々あなただの何だのと言うのはぶっ込んで来てたから気にしないようにしよう。


「うん。人数はそれほど心配してないよ。問題は距離かな。小シュナイダー領の入り口から海岸まで道が通ってるから1週間もあれば駆け抜けられると思うけど、1週間ずっとは走れないよね?」


「そうやな。うちは出来ん事もないと思うけど、兵隊さんは無理ちゃうかな。あんさん」


 ぶふっ。あんさん最後につけてきた! 結構強引に付けてきたな。最後で思い出したんだろうけど。


 そうなんだよな。兵隊たちどころかまず俺だと1週間でも駆け抜けられない。それに最低でも俊敏持ちが前提だ。


「そうすると兵隊の適性を確認して、訓練からかな。家畜達も一旦大シュナイダー領に避難させて人間も避難だね。俺は、転移陣の設置と後ぶつける場所をどの辺にするか...か。そこまでは走り抜けてもらわなくちゃならないんだよね」


「1日中走るなら1週間はかからないかもしれんぞ? 途中野営を入れて1週間だろう? 全員俊敏持ちにするのだろう? 一般人とは訳が違うからな。稼げる距離も桁違いだ」


 そうか。野営なんて魔獣に追われてたら出来ないから、1日12時間ぐらい走る場合の半分くらいには縮まるな。でも1日中走り続けるのは無理だろう。


 その後もなんやかや話したけど、どうもいい方法が見つからない。そうだ。俺と後数人なら転移魔法で行く手もあるからやっぱり問題になるのは、兵隊たちか・・・。


「俺と皆は、最悪転移魔法という手もあるけど兵隊たちはどうするかな~」


「僕が思うに大森林に入って、直ぐに大侵攻が始まる訳じゃないからその間にどのくらい稼げるかだよね?」


 そうなんだよね。魔物達も集まるまでには時間が掛るはずだから世界樹までは問題なく行けると思う。そこから魔物達が追いついて来るまでに二日くらいかな。


 その間にこっちも海岸目指して移動するとしてラスト一日。スキル全開で海岸まで逃げ切って転移陣に逃げ込むしかないか。


 丸々一日スキル全開で走った後、戦闘行為が出来るまで兵達を鍛えるしかないな。よし。早速明日から皇都まで往復全開訓練だな。大凡の方針は決まった。後は実行あるのみだ。


 翌日から訓練漬けの日々だ。当然俺もその訓練には参加している。最も足を引っ張るのが俺だからね。それでもいざとなれば転移魔法で飛べる分俺には余裕がある。


 訓練を終えて新たに俊敏持ちや瞬歩に進化したスキル持ちが増えた。最低俊敏持ちが選出条件だ。もちろん俺も俊敏は生え無かったが、転移魔法があるので選出される。


 ただし瞬歩持ちが両腕を掴んで引っ張り移動速度を俊敏持ちに合わせるのが条件だ。くっ、俊敏生えなかった・・・頑張ったのに。仕方ない。


 スキルが生えるには一年間くらい修行する必要があるらしいからあと半年は鍛えねばならないだろう。さてうちのお嫁さん候補でお留守番は、アンとライラ、帝都に言っている三姫となる。


 残念ながらアンとライラは俊敏が生えなかったのだ。怪力は持っているのでパワーファイタータイプなのだろう。まあ、両手剣を使っている段階で分かると言うものだ。


 さらに家にいる戦闘メイド隊も全員俊敏持ちなため同行する。戦闘メイドの終了資格に俊敏と怪力、堅殻は入っているそうなので元々問題なしだ。


 エルフ、ダークエルフの精鋭部隊もほとんどが俊敏持ち一部薬師がお留守番。問題は人間の騎士だ。と言っても騎士本人は問題ない。その従騎士たちが問題だった。


 俊敏が無い従騎士が結構出た。本来従騎士たちは騎士の見習いか平民の騎士付き戦士がなるため、その騎士のお世話が仕事になる。力不足は否めない。


 かなり主人を置いて留守番にはごねたが、足手まといを理由に騎士たちに諭され、断念して留守番組だ。決行は明日だ。その前の最終確認のため主だった者たちを集める事にした。


 嫁さん候補たちに戦闘メイド隊の隊長、副隊長にエルフ、ダークエルフの隊長に副官、騎士団の騎士団長と副騎士団長だ。


「皆よく集まってくれた。決行は明日だ。その前に最終確認をしようと思う。明日0500に侵入を開始する。最初に突入するのは騎士団だ」


「はっ。一番槍はお任せ下さい」


「次にエルフ隊、ダークエルフ隊と続き、最後に侍女隊。殿は俺と嫁さん候補達だ。総勢312人」


 実際は殿に俺を配置したいがための編成だ。急な体調不良やけが人や病人が発生した場合俺の転移魔法で安全地帯に避難させるためだ。


 因みに騎士団が先頭なのは瞬歩持ちが発生しなかったので一番遅く、人数も多いからである。


「装備は重鎧を避け、軽鎧とする。当然盾は無い。普段と違い被弾には十分注意して受けるのではなく回避主体で頼む。特に騎士団は戦い方が変わるので徹底してほしい」


「十分完熟訓練をこの半月で行いましたのでお任せ下さい」


「うん。頼む。道中接敵した場合、戦闘は避け受け流して進行する事。世界樹までは3日の所2日で駆け抜ける。全力は出さないぞ。体力を温存してくれ。休憩は二日間で八時間。一日4時間しか休憩は取らない。その分速度は7割程度に落とす」


 世界樹に着いたら最後の休憩を取って後は休みなしの全力で海岸を目指す。この行程は一日だ。一日で駆け抜ける事にした。


 世界樹の近在でも大侵攻が起きるのかどうか分からないので速やかに世界樹の傍を離れる事にしたのだ。


 かなりの強行軍に思えるかもしれないが、想定はさらに過酷な状況を考慮して訓練をしたんだ。問題ないくらいには鍛えられている。


「作戦が始まれば十分に休憩は取れない。今日は体を休めることを最優先にして万全で臨んでほしい」


「「「了解しました」」」


 そして作戦決行。騎士団から速やかに森へと侵入して行く。殿の俺が森に侵入したのは1分後だった。


 早い! 情けないが、俺は俊敏が生えなかったので両脇を奥さんに抱えられて半分引きずられる様な形で走っている。俺を抱えてるのは瞬歩持ちで余裕がある姐さん達だ。


「ウォ! 早い、早い! これが俊敏持ちの速度なんだ。初体験! 」


「喋ってると舌噛むで。慣れん内は、集中しいや。とは言ってもジャンプしてる内にうちらが引っ張って距離稼ぐだけやからな~」


 そうなんだ。宇宙飛行士が月でジャンプするみたいにピョンっと飛ぶと両腕を抱え込んでる姐さん達がビュンてな具合に引っ張って行くんだよ。


 その加速に耐えるように腕には力を入れてるし、姐さん達は腕が抜けたり(脱臼ね)、折れたりしない様に腕全体を抱え込んでるんだ。胸が当たって気持ち・・・げふんげふん。


 でもまあ、いざとなったら転移魔法で前方に転移しちゃえば瞬歩持ちよりも早く進めるんだけどね。魔力温存のために引きずられてるんだ。


 先頭の騎士団は気張っている様でやや先行している。その後をエルフ隊、ダークエルフ隊がピタリと追従している。


 メイド隊はやや広がって殿の俺達を飲み込む様な形で前集団を追走している。全体が間延びしないまま一丸となって切り開かれている道を進行している。


 俺達が森に侵入して直ぐに森全体がざわめきだした。徐々にそのざわめきが大きくなり森全体に伝搬してく。


 大侵攻の予兆だ。この段階で森から退避しても小規模にはなるけど大侵攻が発生してしまう。後は突き進むのみ。


 数分もしないうちに周囲から魔獣たちの吠え声が聞こえて来て、活発に活動し出しているようだ。周囲の状況を完全に無視して俺達はどんどん進んでいる。


 昼食は走りながら摂る様にして数時間走り続けている。そろそろ最初の休憩に入るころだ。日は大きく傾き出して辺りは暗くなり始めている。


「全体止まれ!」


 俺の号令が先頭集団に届くまで暫くかかる。先頭を走ってた騎士団が停止し、全体が止まる。各隊の隊長格が俺の元に集まって来て指示を待つ。


「一旦ここで休憩に入る。各自用を足して次に備えるために体を休めてくれ。周囲の警戒は侍女隊と俺達が受け持つ。直ぐにかかれ! 解散!!」


 隊長達は何も言わずに指示通りに行動を開始する。これは予め決まっていた事だからだ。瞬歩持ちがいなかったり体力が低いエルフなどを休ませるためだ。


 周囲は常にざわめいていていつ何が襲いかかって来るか分からない状態だ。それでも今まで何にも襲われていない。


 これが大侵攻なのかもしれない。周辺の魔獣たちが騒いだと思ったら急に静かになってどこかに行ってしまう。その数倍もの気配が一気に膨れ上がってまたぞろ移動を繰り返しているようなのだ。


 徐々に規模を大きくして集まっているのかもしれない。その限界が来た時スタンビートが始まるんだろう。


 今はまだ集合中の様だ。俺達が移動し続けているからそれを追う様な形で集合と分離を繰り返しているらしい。


 何せ森の外に向かって進むのではなく中に向かって移動しているので外周に集合しようとする本能とは逆に集合しなければならないので魔獣たちも交差したりぶつかりあったりしてるようだ。


「大分集まって来てるね。僕もそろそろビビっちゃいそうだよ」


 ミヤが泣きごとを漏らす。索敵持ちはその概要が掴めるだけに恐怖が増すらしい。俺達が停止したことで魔獣の集合が早くなっている様子だ。


 全方位からひしひしと殺気がほとばしってくるが、唯一世界樹がある前方のみ空白地帯が出来ている。世界樹の周りの防護壁を避けて集まってくるためらしい。


 全体をみるとあちこちで体を休めている隊員達がいる。侍女たちも周辺警戒をしながらも体を休められる様にしている。


 この殺気の嵐の中休めるのは大した胆力だと思う。正直に言うと俺はもうガクブルだ。こんな殺気の中で休めるわけがない。


 殺気の中俺はまんじりともせずただただ小さくなっているだけで過ごした。


「よし。出発だ! 世界樹まで休憩なしに突っ走れ」


 周囲を魔獣に十重二十重に囲まれ始めていたけど一気にその包囲網を抜け出して一路世界樹を目指す。


 動き出した俺達に周囲の魔獣も動き出すが、数が邪魔をしているのと防壁までは破られていない事で進路方向が開けていた。ざわめきまた追走が始まる。


 まっ暗闇の中ひた走る俺達を混乱しながら魔獣たちも追走して来る。空が白み始めさらに数時間経った頃とうとう俺達は世界樹の圏内に突入した。

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