第四章第十七話 魔獣討伐作戦①
第四章第十七話 魔獣討伐作戦①
カイネ達との打ち合わせが済んでから慌ただしく動き出す。雨期に入ってのんびりしてたのが嘘の様だ。外は土砂降りだけどみんなやる気満々だ。
まずはカイネに渡す商材をマジックバッグに詰め込んで、無限バッグには自分達用と秘密の塩、海鮮、小麦、野菜を保管する。
カイネに渡した商材はそのままカイネに販売させ、ニコラスには俺が直接卸す事にした。資金がなかったんだっけ。
俺の商材を詰め込んだマジックバッグを持って何やらニコラス商会から仕入れて、そのままカイネは旅立つ。東周りで帝国を一周するつもりらしい。
ニコラス商会を訪れていた行商の何人かを雇い、ニコラスからさらに譲り受けた高速馬車をもう一台追加して荷物を満載して旅立って行った。
当然護衛の傭兵団も雇っている。これもニコラスに紹介して貰ったようだ。カイネを見送った後、ニコラスとの商談に入る。
「さて、ニコラス慌ただしくカイネが旅だった所でこっちも商談に入ろうか」
「はいはい。待ってました。この間カイネさんに卸して頂いた分はあっという間になくなっちゃいましたよ。今度はどのくらい卸してもらえるんですか? 坊っちゃん」
「うん。結構な量を卸してあげるよ。今、資金不足でね。そっちがどのくらい買えるか次第だよ。ふふふ」
「お、ニコラス商会の底力をお見せしましょう。大番頭、うちの金庫を開放しておきなさい。全部買い占めますよ」
「へい! 会頭。現場からも回収してきます。買い入れの中止は出来ませんが、逆に買い取りさせてやりますよ」
「よしよし、その意気だ。さあ、坊っちゃんどんと来いです」
「じゃあ、まずは魔獣の狩猟品から言ってみようか」
腰にずらりと並んだマジックバックの一つから取り出した魔獣の狩猟品の数々。
雨期に入る前に仕留めた昆虫系やら猛獣系から始まり雨期に入って現れ始めた両生類系や爬虫類系、植物系とより取り見取りだ。さらに海洋系の魔獣も今回は追加されている。
「結構な量ですね。これは・・・番頭を総動員して価格を決めろ。急がせろ。リストにするのを忘れるなよ。まだまだです。この程度はなら余裕です」
「ふふふ。さすがは大商会の仲間入りしただけはあるね。次はお肉、卵、魚、蟹、エビ、貝、フカヒレ、なんかの乾物、特殊な所では海竜の肉なんかもあるよ。美味しいらしいね」
「くっ。高級食材にレア食材まで。これは昆布ですか? 肉厚じゃないですか。これ良い品です。番頭たちはまだ魔獣の狩猟品の目利きに掛りっ切りでしょうから、大番頭これはあなたが捌いて下さい。数量は丁稚に数えさせて! 必ず2回以上数えさせて下さい。ぼっちゃん所は人手がないから数えられないからね。だからって誤魔化すんじゃないよ。カイネさんが居るから次はなくなるから絶対に誤魔化すんじゃないよ。間違えもダメだからね」
「へい。じゃあ、これはあっしが」
「坊っちゃん。これならまあ、大金貨の袋が二つくらいですよ。金庫を開放させたんだからまだ有るっすよね?」
「うん。お次は野菜。試験販売だね。ニコラスがマジックバッグを揃えたって言うから卸せるようになったものだよ。ワサビに三つ葉にクレソン。とうもろこしに枝豆。これが結構あってね。さらに量は少なくなるけどトマトにキュウリ、ナスにアスパラ、白菜、キャベツなどなど」
「・・・とうとう出てきましたね野菜。大きいですね。やっぱり美味しいんですか?」
「ああ、相当美味いよ。食いでもあるし。スイカもいる?」
「もちろんお願いします。これらが坊っちゃんの婚約発表会で出されたものっすか。物凄い問い合わせがありましたよ。香辛料系も結構な種類ありますね。胡椒、唐辛子、山椒の実、生姜に紫蘇、芥子ですか。茗荷、ミント、大蒜、らっきょ、辛子と。量は少なめですがやっぱり大きいですね」
「まあ、この辺は、自分達が食べる分だから量は少ないよ。これも大番頭に数えさせてよ」
「はい。大番頭追加だよ。これの価格は難しいよ。流通してないからね。しっかり見極めな」
「へい。あっしが直接やります」
「任せたよ。さあ、坊っちゃん出して下さい。お待ちかねの奴です」
「まだまだそんなこと言っちゃうんだ。じゃあ、大豆と小麦行ってみようか」
結局、ニコラスは全ての商品を買い付けた。さすがの資金力だねと思ったら買い付けに来ていた他の商会や行商人に即金で売りつけてたよ。
なるほどね。自分達だけじゃなくて速攻で売って儲けも出してたんだ。おかしいと思ったよ資金があり過ぎだもん。
「小麦と大豆は帝都支店に半分持ってけばいいのかな? あっちで商品の料金も受け取ると。ちゃんと運送料も貰うからな」
「分かってます。この手紙で2割増しで買い取りますから。ふぅ~。大商いでしたよ。これでうちの資産が数倍に膨れ上がりますよ。坊っちゃん、そんなに資金集めてなにする気ですか?」
「ああ、転移陣を使い捨てにして魔獣を討伐する。今回集めた資金でいけるかな転移陣」
「・・・どうでしょう。さすがに転移陣は扱った事がないですね。ちょっと足らないかもしれませんよ。坊っちゃんの事だから皇家から買うんですよね?」
「うん。そこしか伝手がないからね」
ニコラスとの取引を終えて次にすることはマルス兄様と父様に会うことだ。ニコラス商会から領都にある領館に行く。
「ただいまー。サラ戻りました。父様ー。マルス兄様ー」
「サラ坊! お帰りやさいって言うのも変でやすね。坊はもう当主なんでやすからここは他家でやすよ。まあ、そんな事は良いでやすがどうしやした?」
「ああ、カラナムのおっちゃん? ・・・随分出世したね」
「そりゃ坊。侯爵家の筆頭従士でやすから伯爵でやすよ。領地も頂きやしたし」
「おお、陪臣とはいえ伯爵か~。俺より偉いじゃんってひょっとして旧大シュナイダー領が領地か?」
「そうでやすよ。ミゲル達は新しい領地の方に引っ越しやしてここを貰い受けました」
「ならちょうどいいか。ちょっと大規模に魔獣討伐するから、失敗して大侵攻が起きちゃった場合の準備してほしいんだ」
「な、なに言ってるんでやすか! そんな簡単に出来る訳ないじゃないでやすか。発展したとは言ってもここ旧シュナイダー領でやすよ」
「・・・それもそうか。やっぱり父様か兄様にも頼らないとダメか」
「待ってくだせえ。どういった事情でやすか。ちゃんと説明してくだせえ。そしたらあっしがミゲルんとこ行きやすから」
「おお、ナイスおっちゃん。まあ、簡単に言うと大森林の余剰魔力は吸収したから新たな魔獣なんかが産まれ難い状況になったんだよ。とすると現在いる魔獣を何とかすれば入植も可能じゃないかと思うんだ。まあ1000人か2000人かは分かんないけど、そのくらいは入れるんじゃないかと思ってるんだ」
「余剰魔力を吸収でやすか? そんなものどうやって吸収できるんでやすか」
「うーん。鉱脈珠とかって知ってる? あれって周囲の魔力を吸って元に戻るらしいんだけど大森林だと物凄く吸収したんだよね。だから枯れ珠集めて吸えるだけ吸ったんだよ」
「そうでやすか。枯れ珠とはなるほどいいアイディアでやす。そんで魔力溜まりが出来難くなってると言う事でやすね。普通の場所よりは出来易いでしょうが大森林としちゃあ減ったって感じでやすかね」
「そうそう。世界樹が吐き出す魔力の10年分くらいは減ったと思うよ。だからここで次の一手を打ちたいんだ。前にちょっと話したけど海岸に居る海洋性の魔獣と大森林に居る魔獣をぶつけてみたいんだ。失敗した時はここに被害がでちゃうだろ? だから事前に準備してほしいんだ」
「なるほどって、そんなこと言えるわきゃないでしょうが! 地道に排除してきゃあいいでやしょーが」
「きっとそれじゃあ間に合わないんだよ。いくら魔力が減ってるとは言っても人数入れられない状態で狩ってるから増える方がきっと多いよ。枯れ珠も一回充填すると100年くらいもつって専門家が言ってたから同じ手は使えないからチャンスなんだよ。ここで魔獣を減らせれば人数が入れられてトントンぐらいまで行ける。そしたら今度は地面に溜った養分も吸いだせるだろ?」
「・・・そりゃそうでやしょうけど、危険過ぎやしませんか?」
「まあね。でもここを逃すと大森林を失陥しちゃう気がするんだよ」
「む。坊がそう言うならそうなのかもしれやせん。あそこを失陥しちゃあ元も子もねえでやすな。しゃねー。ミゲルとこっちは何とかしやす。坊は思う通り動きやせ」
「悪いね、カラナムのおっちゃん」
何とかカラナムを説得して大シュナイダーの事は任せられた。次は貴族の方と姫さん達か。まずはティアとグリンダを連れて帝都に跳ぶ。
ニコラス商会の帝都支部で残り半金になる品を渡して資金を得るためだ。ニコラス商会の帝都支店の暖簾をくぐる。
「支店長さんいるかな」
「あん? 支店長さんを呼びつけるたあいい度胸のガキだ。どこの丁稚だ。うせろ」
もちろん俺を知らないのだから下っ端の最近雇われた人足か何かだろう。時間もないし面倒なのでニコラスにやった様な事はしない。
「黙れ! サラ・シュナイダーが直々に来たと伝えればいいんだ」
「な、なんだとこのガキャア。サラ・シュナ・・・イダー? え? ちょ、ちょっとお待ちなせえよ」
支店長~。サラ・シュナイダーを名乗るガキが来てやすよ~。『黙れこのバカが! 坊っちゃんがいらっしゃったら丁重にお出迎えしろと言ってるだろうが』とか何とか聞こえてバタバタしだした。
慌てて奥から飛び出してきた男がひとり。ニコラスの弟子に違いない。
「サラ坊っちゃん。ようこそおいで下さいました。ささ、どうぞこちらへ」
「先に言っておくぞ。二度目はない。躾がなってないぞ。どんな客が来ようと丁寧な接客が出来ない様な商会と付き合う気はないぞ。帝都を任されてる全ての責任はお前にあるんだからな」
「へ、へい。すいません。きっちりと躾し直します」
「本店といいここといいどうなってるんだ。2流の商会どころか3流の商会だぞ。他の支店もこんなんじゃないだろうな。今度全支店を回るぞ。もし1ヵ所でもちゃんとしてなかったらお前ん所との付き合いもこれまでだ。ニコラスに伝えとけ!!」
「へい。すぐに伝えます」
まったく。どうなってるんだニコラスん所は。この間怒ったばかりなのにまだ改善されてない。俺が怒ってるのが分かってるのか商会の中が静かになってしまった。
「これがニコラスからの手紙だ。荷物は裏でいいのか?」
そう言ってさっさと裏に回る。人足やら若い仲買やらが商売をしている間を抜け倉庫の前の荷卸し場に着くと徐にマジックバッグから荷物を取り出す。
裸足のまま俺の後ろをついて来ていた支店長がニコラスからの手紙を読みながら周りの人間を排除している。
「お前ら下がってろ。坊っちゃんが荷降ろしするから。何も喋るな! いいから下がれ」
「手紙は読んだか? すぐに用意してもらおうか。こっちも時間がそれ程ある訳じゃないんだ」
「へい。すぐに用意致します。ご売却ありがとうございます坊っちゃん」
厳しい眼差しのまま辺りを見る。周りが怯えてるのが分かる。
「お前様。そうお怒りになさるな。皆が怯えておるのじゃ。ニコラスならすぐに対応するじゃろう。シュナイダーと付き合う商家の品格も直ぐに上がるじゃろう」
「ふぅ~。うん。そうだね。さすがに本店に続けて2度目だからイライラしちゃったよ。こんな質の悪い所と取引してるのかと思っちゃうと泣けてくるよ」
代金を受け取ってそのまま転移する。皇城だ。シュナイダーと皇城を繋ぐ転移陣が設置されている部屋だ。直ぐに控えていた侍女が一礼してくる。
「シュナイバッハ侯にご伝言お願い出来ますか? 侍女殿」
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
侍女さんに案内されたのは傍にある控室だ。そこで席を勧められて待つ事になる。
「あなたぁ~。私達はここで分かれてぇ~別件の方を進めたいと思いますわぁ~」
「うん、グリンダ。じゃあ、次は大森林での作戦が終了したら来るよ。ティアもそれでいい?」
「そうじゃな。大森林での作戦も見てみたかったのじゃが致し方ないじゃろう。こっちは儀式を進めておく。お前様にもどうしても参加してもらわねばならん儀式も何個かある。準備はしておくので体だけで来てくれればいいのじゃ」
「うん。分かった。こっちも作戦終了したら雨期の様子を見てみるつもりだから。資金はどうする?」
「大丈夫じゃ。自分の領地からの分と蓄えで何とかなるじゃろうし、陛下もおる。では行って来るのじゃ」
ティア達と分かれてやっと下準備の半分が終了した。




