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第四章第四話 スパルタ訓練

第四章第四話 スパルタ訓練



 ティア、アン、ライラを先頭にして、グリンダ、ヤルル俺がその後ろに着く。ヤルルはBランクだけど上位スキルを持っていないのでCランクと同じ扱いだ。


 俺の傍にメル姐さんとルル姐さんが張り付いて警護。アンジュ、マイヤ、ミヤ、リュディー、アイダは別行動。


 10層までは一緒に行くが、さらに潜る予定だ。訓練にならないからだって。まずは15層を目指すらしい。


 翌日は朝からどんどん潜って行く。姐さん達が攻撃を弾く敵にひたすら攻撃を加え続けるのは俺。もちろん魔法もガンガン打ちこむけど堅殻持ちの防御はそうそう破れない。


 姐さん達も余裕がある訳じゃないみたい。止めをさせない状態で防御し続けるのは至難の業だ。いくら自分が高ランクでも一撃貰えばそれなりに傷付くからね。


「サラやん。ええで、ええで。ちゃんとダメージ入っとる。もっと力籠めて!」


 俺の前にはミノタウロスがいる。前衛部隊の1体だけ俺が相手をしている状態。前衛部隊が殲滅を完了したら姐さんが止めを刺してしまい、また進むを繰り返している。現在は7層だ。


「・・・そこを右に行って真っすぐで階段があるから降りるで」


 ルル姐さんから前衛部隊に指示が飛ぶ。ここまでに来るのに1時間。途中途中で魔物に引っかかっているからだ。


 階層を重ねるごとに前衛部隊の処理時間が延びて来ている。さらに1時間かけてとうとう10層に到達した。


「じゃあ、姐さん後は任せたよ。私達はさらに潜る。早く追いついて来いよ」


 片手を上げてマイヤ達が離れていく。最短距離で階段を目指すのだ。


「さあ、うちらも始めようか。みんな気い抜くんじゃないで。ここからは敵も格段に強うなる。死ぬかもしれないんやで」


「「「はい」」


 ここからは俺がリーダーとしてどこに行くのか、何をするのか決めていく。姐さん達はいないものとして行動するのだ。


 まずは定石通り左手の法則で、マップを埋めながら進む。10層は小部屋が非常に多く。魔物達との遭遇確率が高い。


 左に進んで直ぐにもう小部屋がある。もちろん準備を整えて突入。小部屋の中央には1体だけ(・・・・)しか魔物がいない。


「1体だけ? 一気に殲滅する。ゴー」


 俺の指示に前衛陣が一気に間合いを詰めようとするが、小部屋を炎の嵐が襲う。今度こそ本物のファイヤーストーム!


 前衛陣が片膝をついて、途中で止まってしまっていた。今のは効いた。直ぐに全体に癒しが掛けられ、体勢を整える。また魔法障壁もかけられた。


「ヤルル、グリンダ。ナイスだ。皆ごめん。侮った。前衛陣は間合いを詰めながらも注意してこいつ強い」


 ティアが正面を受け持ち、左右にアンとライラが展開するも悪戯に仕掛けない。敵の姿がはっきりとして来た。


 頭には山羊の角を持ち肌は赤黒く、剛毛に覆われた下半身。矢印の様な長いしっぽを持ち呪文まで唱えて来る。


「レッサーデーモンじゃ! この階層最強の敵じゃぞ。いきなり当りを引くとはお前様も強運(・・)じゃな」


 嬉しくない褒め言葉だ。相手の正体が分かった所でティアが仕掛ける。ティアの斬撃をその長い爪で受け止められてしまう。一瞬後アンとライラも仕掛けるが、防御すらされない。


 俺が下層の敵にしてきた様な攻撃力しか出せていない。相手は金剛持ちなのか!? 違う! 僅かだけど傷付いている。皮膚が硬い上に堅殻持ちなんだ。


 恐らく剛力持ちであるティアの攻撃だけが自分の脅威と判断したのだろう。後方からさらに物理障壁も展開される。


「アン、ライラ。ちゃんと効いてる。そのまま攻撃し続けて。ティアごめん。標的になると思う。そのまま堪えて」


「了解じゃ」


 レッサーデーモンがいきなり振り向いて、ヤルルを攻撃するのかと思いきや、その長い尻尾がティアを打つ。剣で受けているにもかかわらずティアが弾かれる。


 さらにヤルルに向けその腕が振られるもヤルルは素早く後退して回避する。ティアを弾いて憂いがなくなった途端両腕を振り回してアンとライラを狙ってきた。


 二人は完全には受け切れなかったのか吹き飛んで玄室の壁に叩きつけられる。


「アン、ライラ!」


「「大丈夫」」


 二人から応えが戻ってくる。大したダメージじゃなかった様だ。全員が周りから離れた途端またもファイヤーストームが全員を襲う。


「ぐふぅ~。ダメだ離れたら魔法で全滅しちゃう」


 グリンダからの魔法障壁のお陰で最初に比べたら大分ましになっているとはいえ、そう何発も喰らっていい魔法じゃない。


 再度癒しが掛けられる。ティアが間合いを詰め魔法を打たせない様にするが膂力が違い過ぎる。援護のために俺が後方からポイント弾を打ち込むが、あっさりレジストされた。


「デーモン系は魔法が効きにくい。刀に集中した方がいい」


 誰からの忠告なのか確かめる余裕もない。俺もぐるっと回り込んで背後に回る。そこから刀で攻撃したいが常に俺を視界に治める様に動く。


 俺を警戒しているんじゃない。俺の両脇に居る姐さん達を恐れているようだ。前線に復帰したアンと、ライラも果敢に攻めるが攻撃力が弱い。


 ヤルルのメイスの攻撃も入る。ボコッと音がする程の攻撃だ。ん? ヤルルの攻撃は効いてる。なぜだ? アンとライラの攻撃は効いてないのに。


「・・・アン、ライラ! ちゃんと気を纏いな! 下層じゃないんやで!」


 『!!!』 気!? 闘気法か! 父様から聞いた事がある。途端にアンとライラから気が放出され始める。レッサーデーモンが警戒を顕わにする。


 これでやっと戦える状態になった。俺は刀を納刀して気を練る。魔力に似ているけど違う。気とかオーラとか言われてるものだが、その正体はよく分かっていない。


 剣士や闘士達の間で長い間伝えられてきた戦闘方法だ。全員に注意を向けた状態なので俺だけがその視界から外れる。一気に前進して間合いに入ると同時に抜刀する。


 十分に気を乗せた一刀がレッサーデーモンを襲う。俺の気に気付いたかどうか分からないが腕を持ち上げ防御しようと動くが遅い。俺の刀が右腕の半ばまで食い込む。


「上出来や。サラやん」


 すぐに左手の攻撃が俺を襲うが姐さんが受け止める。俺はその攻撃を回避出来なかったからだ。俺は慌てて下がる。


 右手から青い血を流しながらレッサーデーモンが俺を睨み雄たけびを上げる。


「もう1体来るで。早よ仕留めないと次から次に召喚されてまうよ」


 姐さんから注意が飛ぶが、そんなに早く処理できない。全周囲からみんなの攻撃が決まって行く。闘気法を使いだしたアンとライラも十分な殺傷能力を備える様になる。


 俺だけが今だ致命傷は与えられないが、手傷はおわせられる。


 最初の1体を斃しきった所で既に2体目が別空間から姿を現していた。ごー。本日三度目のファイヤーストームを喰らう。


 ここで俺の膝が砕ける。すかさずグリンダの全体回復魔法が掛るが大きな隙を見逃してはくれない。俺目掛けて頭上からの尻尾攻撃。


 前転しながら間合いを詰め、闘気法を込めた斬撃を左足首に叩きこむ。足元の俺に一瞬気を取られたレッサーデーモン。その隙を逃す様なティアじゃなかった。


 一気に間合いを詰めてレッサーデーモンの眼前でジャンプ。そのまま腰を捻りながらの斬撃で首を斬り飛ばす。クリティカルヒット。


 全員それでも攻撃の手を緩めず、一気に斬り掛って動かなくなるまで攻撃をする。


「ふ~。梃子摺ったの。これで中級の魔物じゃ。やはり魔物は魔獣以上じゃの」


「はい~。スキルが使えるのはやっぱり痛いですねぇ~」


「はいはい。すぐ陣形を立て直す。油断すな! 言っとくけどこんなの相手に闘気法使こうてたら話にならんで。普通に斬れるようにならんといかんよ」


「してその闘気法とやらはどうやって使うのじゃ?」


「私もぉ~。興味ありますぅ~」


「なんよ。ティア達は知らんかってん? 気を武器に流し込むんやけど要は自分の生命力を使こうて攻撃力を上げる技や。東の果ての方の剣術やな。100年くらい前におうた事があるサムライゆう奴に教わってん」


「俺は父様に聞いたよ。そうんなんだ。サムライねー」


「・・・刀もその東の果ての武器やで。気を伝えやすいとか何とか。うちらの弟子には皆教えてあるんや」


 ふーむ。ゲーム的にはHPを使って攻撃力を上げる的なものか。これって気を飛ばしたりもできるんだよな。


「レッサーデーモンいけるんやったら、もうちょい潜ろうか? ティア、グリンダ歩きながら説明したるさかいこっちきいや」


 なんとレッサーデーモンは10層ではめったに出ない高ランクモンスターなんだそうだ。なので11層で軽く戦闘をして、そのまま12層まで降りて来る。


 この階層からレッサーデーモンが普通に出て来るんだってよ。


「着いたな。じゃあここでレッサーデーモン狩りしよか。あいつら増えるよって、斃しきらんようにしながら延々狩るんや。今日はそれで腕磨くで。出来たら1対1で仕留められるようになり。今日は2対1くらいまでやな」


 うっそー。俺すげー自信無いよ。さっき死ぬかと思ったもん。どうなったらその発想が出るんだろう。ほんとに組み分けしだしちゃったよ。


「アンとライラ、ティアとグリンダ、ヤルルーシカとサラやんでいこか。一発ももろうたらあかんよ。アイツ爪に毒持ってるさかいな。ちゃんと避けるんやで」


 そこから12層を彷徨いレッサーデーモンを見つけた。3体に増えるまで待ってから攻撃開始だ。俺にはルル姐さんが張り付いてメル姐さんは全体を見てる。


 本当の紙一重になるまでルル姐さんが俺を庇うことはないどころか致命傷とかじゃないと助けてくれない。さらに言えば致命傷の攻撃を逸らしてくれるくらいで攻撃はヒットするんだよ。


 ゴロゴロと転がって壁に激突して止まるなんてしょっちゅうだ。でも死ぬ事だけはない様にしてくれてるみたい。


 俺とヤルルは後衛に居る事が多いから連携も取れてるんだけど、俺の攻撃力がない事がばれると一気にヤルルが苦しくなる。


 俺の事無視するんだもん。なのでそこで闘気法を使って隙だらけの尻尾を斬り落としてやる。ギュヤアアアーとか叫ぶけど後の祭りだよ。


 そこで振り向いちゃうから。ヤルルの攻撃が膝にヒットする。ひざから崩れ落ちてやっと頭に手が届く所に来る。


 まっ正面から俺が唐竹割りよろしく大上段から振り降ろす。でもこれは囮。俺の攻撃力じゃ仕留められないから俺に注意を向けさせたままヤルルが側頭部にもう一撃を叩きこむ。


 横倒しに斃れるレッサーデーモン。闘気法を用いて心臓めがけて突きを入れる。やっとこさ刺さったのを後は押し込んでいく。


 奴が回復する前に、心臓まで届けば俺の勝ち。あれ? レーサーデーモンの側頭部を振り抜いたまま回転してもう一回、今度はその頭目掛けて振り降ろすヤルル。グシャ。え~と。俺の努力は・・・。


「ナイスよ! サラ。上手くいったわ」


 満面の笑みを向けて来るヤルルーシカ。まあ、いいか。横を見るとまだティア達とアン達は戦ってる。ティアは単身で戦ってる。


 おお。援護もなしだ。アンとライラ達は苦戦してるみたい。闘気法を使わずに攻撃をしてるけど表面で止まってる。


「アン! 剣速上げるんや。ライラ、体重が乗ってへん」


 姐さんの指導がびしばし入ってる。


「・・・ほれ、サラ。ヤルルーシカ次が来るで。構えんでいいのんか?」


 一息つく間もなく次が召喚されて来る。慌てて俺とヤルルが向かう。さらにもう1体が現れるが、メル姐さんがアンとライラが戦って傷付いたレッサーデーモンをあっさりと始末してしまう。


「アン、ライラ。新手や、直ぐに対応しい」


 酷い! 後ちょっとだったのに。それから数時間延々と戦い続ける事になる。


 ティアとグリンダは交互にレッサーデーモンを斃しているので休めるかと思いきや1対1で倒せるようになると4体になってもメル姐さんが手を出さなくなった。


 ティアとグリンダは1対1のまま延々と戦い続ける羽目になる。一番消耗が激しかったのはこの2人だ。結局この日はアンとライラは1体も斃す事が出来なかった。


 俺とヤルルだけは順調に倒し続けているが、他の4人に比べると甘々なのかもしれない。かと言って俺はもちろんだけど上位スキルのないヤルルだって単独撃破はまだ無理だ。


 デーモン系は結構おいしくない。素材が取れないからだ。こいつら死ぬと核だけ残して煙の様に消えるんだ。


 討伐部位もないから証明も出来ないしね。たまに角や爪が残る事があるんだけど滅多にない。この日も角が1本出ただけだ。


 この後3日間潜り続けて鍛えに鍛えまくった。残念ながら俺にスキルが生える事はなかったけど忘れていた闘気法も思い出せたし良かったと思おう。


 さあ、キングスライムを斃しに行くぞ。

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