第一章第七話 大樹到着即作業
い、いかん。誤字脱字がめちゃくちゃある。読み難くて大変申し訳ありません。早く農業に辿り着きたくて確認せずに投稿してました。前のも見直さなきゃ。作者のモチベーション向上のため評価感想をお待ち致しております。何卒よろしくお願い致します。
第一章第七話 大樹到着即作業
大樹の圏内に入るまでは結構魔獣がいた。上級に近い魔獣もちらほら居たけど何とか斃せてる。そろそろはぎ取り品が持てないなと思い始めた頃、ピタッと魔獣の襲撃が止んだ。
大樹の圏内に入ったのだ。この辺まで来ると他の木はまばらになる。大地の下は大樹の根っこがはびこっているので根を張れないからかな?
その代わり草類は上面だけにしか根を張らないからか結構茂ってる。
大樹の落葉による養分がいっぱいあるからだろう。木々がまばらになり、まるで草原の様になって来ている。頭上からは木漏れ日が射し一種幻想的な光景だ。
そしてとうとう大樹の前までやってきた。大抵の人が思い浮かべるような光景。大きな木の前に佇む俺達。頭上からは陽光が降り注ぎ煌めく光と影の乱舞。
緑のグラデーションが濃い。周囲には丈の短い草がびっしりと生えているが雑草じゃない。薬草類だ。まるで薬草園を放置しておくとこうなるんじゃないかと言う感じ。
さらに大樹に近づくと薬草類も生えていない。唯一細い木だけがかろうじて生えてる。すぐにでも倒れてしまうような雰囲気があるがそうでもなくしっかりしている。
元々そんなに太くなる樹木じゃないのだろう。そしてその先は地面がむき出しだ。もう他の植物は生育できないのだろうかと思っていたが、大樹にはコケが生えていたりする。
傍にある大岩にも苔がびっしり生えている。そうか地面だと大樹に吸われてしまうけどそうじゃなければ大樹の落葉で栄養満点なんだな。
「これって世界樹?・・・だよね。大きいけど世界樹って言うほど大きくないよね?」
「若木だよ。あっちの細い木達は命の木の若木。これは凄い薬草園を見つけたみたいだね」
呆然とみんなで見つめていると視界の隅にちらちらと影がよぎる。
「鳥やら小さな獣なんかは結構いるね。よくこんなところまで入り込めたもんだよ」
さてやっと目的の場所に辿り着いた。長老はなんて言ってたかな。家を作って拠点にしながら周りの魔獣を狩れだったか。
世界樹の若木に近過ぎると養分を全部持ってかれちゃうかな? でもここだな。世界樹の若木と命の木の若木の間の空間ここに家を建ててそこを拠点にしよう。
農地はもっと離れないといけないけどたぶん作物位なら表面の養分だけでも十分育つと思う。問題は家の材料にする木が遠い事か。
「よし。今日はこのまま休もう。明日から拠点の家と言うより掘立小屋を作ろう。それと水源の確認だね。飲み水は何とかなるけど、作物を育てるとなると魔法じゃキツイからな」
野営の準備をして久しぶりにゆっくり休めそうな雰囲気だ。彼女たちもリラックスしている。ここに来るまでは殺伐とした魔獣との戦闘だらけだった。
この時のためにとっておきの食材を持ってきているんだ。来るまでに死んだら食えないから喰っちゃおうかと何度頭をよぎったか。取っておいて良かった。
持ってきたのは、チーズ、ソーセージ、小麦粉それに紅茶とはちみつ。この程度しか持ってこれなかったが干し肉に黒パンだけよりは大分いい。
到着祝に出したこれらの食材は、もちろん彼女達にも大好評だった。パンはさすがに無理なので小麦粉を練って太めの棒に巻きつけ直火で焼く。ソーセージも焼いておく。
小麦粉が焼き上がったら棒を引き抜いた穴にソーセージを刺して、チーズを薄く切った物をかぶせてもう一度焼く。
チーズが溶けだしたら塩とそこいらにあるハーブを振り、味を整えたら出来上がり。
スープもハーブが使えたので大分ましになった。そして食後に紅茶を楽しんで、もちろんはちみつを垂らす。一息入れている間、明日からの事を話し合うことにする。
「ここに拠点を構えるのは良いとして、命の木の葉と世界樹の葉でエリクサーと万能薬を作って売ればかなり稼げると思う。皆はそれを持って装備を整えるだけでも目的は達成できるよ」
「なんだ、サラここを一人占めするつもりか。ふふふ。分かってる。冗談だ。ここは良い。気にいったよ。ここを拠点にして冒険者暮らしが良いと思う。どうだみんな?」
ゆったりと座ったままマイヤが皆に問いかける。
「ええ。私も賛成です。ここならお金に困ることもなさそうですし。まだ見つけていない物もあるでしょう」
横座りをして微笑をたたえたヤルルーシカが答えると続いてミヤも賛成して来る。ミヤは西の山が気になっているようだ。
「にひひ~。西にある山、あれはきっと鉱脈あるね。複数の鉱脈があると思うよ。地形がそういう形なんだ。それも人が入っていない」
「夢を膨らませるのは良いけどここは大森林よ。B級でさえ全滅するって言う奴にまだ会っていないわ。あたし達があっさり全滅する危険をいつも孕んでる事は忘れちゃ駄目よ」
何となく和んでしまった俺達にリュディーがきっちり釘を刺す。でも自分も口元が緩んでいる事は気付いていない様だ。
「そうだな。遠い未来より近々の事だな。長老が言っていたように水場と周りの魔獣の排除が課題か。」
「水場に関しては私がどうにかできると思います。ウィンディーネに聞けばいいのですから」
リュディーが使える精霊魔法。これは種族的な特徴だからスキルとは関係ない。ユニークスキルになるのかもしれないけど俺は良く知らない。
「木の伐採や切り株の処理は私とミヤの剛力で何とかなる。家を建てる知恵がないことが問題か?」
「そこも大丈夫。俺が設計図を貰って来たから。その通りに作ればいい。俺の家は小さくて良いから」
「ん? 一緒で良いんじゃないか? なんで分ける」
「え? なんでって、そりゃ、男女で一緒って訳に行かないだろ?」
「・・・問題ないな」「なしです」「ないわね」「なっし~んぐ~」
「ちょ、なんで問題ないの? あるよ。あるよね! なんでみんな舌なめずりしてんの? ほ、ほら着替えとか体拭いたりとかするでしょ? みえちゃうよ? いやでしょ?」
「大丈夫だ。逆に見せてあげたいくらいだ。さっき見せたしな」
「いやいやいやいやいやいや、だめでしょ。見せちゃ駄目。大事にしないと。ね。ね」
「家は一軒で良いな? 二軒も作ると手間がかかるから」
「「「異議な~し」」」
なんか決まってしまった、数の暴力って嫌いだ。明日も早いからってもう寝るらしいけど、なんで俺を掴むの? いつもの事だけど。
ここではひっついてる必要なくない? まあ世界樹を発見して気分が良いから抱き枕になっても良いけどさ。
翌朝は皆早かった。朝食を済ませてリュディーが偵察兼水場探しに穏身を使いながら行くことになった。マイヤとミヤが交互に伐採。
シュナイダー領に向けて道を作りながら木を切ろうと言うことになった。ヤルルーシカが採取をしながら警戒をし俺が枝打ちすることになった。
思ったより最初の一本は早かった。凄い音が響く中マイヤが渾身の力を込めて斬り倒した。すかさず交代ミヤは連打だ。一撃一撃はマイヤの方が凄いけど数が半端ない。
俺の枝打ちの方が遅い位だ。二人が数本の木を切り倒した頃、二人が上半身裸になった。
「暑い。さすがに堪える。サラ、見ても良いが、手は休めるなよ」「にひひ」
「う、うん。なるべく見ない様にするよ」
さすがにこのペースで枝打ちをさせられていると俺も暑い。俺ももちろん上半身裸になる。
そろそろ斬り倒した木を運ぼうと言うことになり、マイヤとミヤが材木をそれぞれ一本引きずって、俺とヤルルーシカが二人で一本を引きずる。
とうとうヤルルーシカも上半身裸になってしまった。凄い重労働だ。材木って重い。
斬り倒した材木をあらかた運び終える頃には声も出せなかった。その頃リュディーもびしょ濡れになって帰って来た。手には魚を持っている。
「あんた達なんて恰好してるの!!」
なんて呆れてみながら自分も濡れた服を脱いで、干してる。
「水場結構あったよ。そこいらにたくさん泉とか小川みたいのとか。魚がいたから取ってきた。全然警戒してないから簡単に取れるのよ。お昼は魚の香草焼きにする? それとも塩焼き?」
「へへへ~。最初はシンプルに塩焼きで行こう。その後香草で蒸し焼き~。たくさんあるから両方食べようよ」
食いしん坊ミヤが言い出した。まあ俺も賛成だ。重労働だからものすごく腹が減る。リュディーが午後の予定を申告して来る。
リュディーはダークエルフだけど、エルフは森の人と呼ばれるくらいだからダークエルフでも森には精通している。森の中では心強い存在だ。
「了解よ。午後はあたし世界樹の葉を採取して来るよ。ついでに野鳥でも取ってくるから夜は鳥で良い? ヤルルーシカ警戒も必要ないでしょ? 命の木の葉を採取しておいてよ」
「そうですね。ここにはまだ魔獣は入ってこないようですので採取してからまた伐採の方に合流しますね。リュディーは?」
「あたしも採取と狩猟が終わったら合流するよ。伐採現場も見てみたいからね」
採取組が行動を決めると伐採組のマイヤがミヤに問いかける。
「ミヤ、あの間にある巨木はどうする? 材木としても太過ぎて使い難いだろ?」
「いや~、あれは高床式の柱にすればいいんじゃないかな~。午後に切り倒してみようと思ってたよ。あの位の巨木四本を柱にしてもう一本を梁にしてさ。あとは周りを普通の材木で囲う感じかな?」
「大きさにもよるけど五人で住む大きさなら中央にもう一本か二本柱がいると思う」
「なら私は切り株を引っこ抜くよ。サラ、切り株の周りを掘ってくれ」
最初はログハウスの様な家を作ることになるだろう。製材の知識は多少あるが技術がないからだ。乾燥させないといけないかな?
「切り株の周りの腐葉土を小さなゴーレムにするよ。『土よ! 小さき人形になりて我が意に沿え。マッドゴーレム』」
ポコポコと俺の背丈の半分位のマッドゴーレムが切り株の周りから生まれる。そこにカマキリ魔獣から取ってきた鎌を刺してマイヤがふんと引き抜く。
切り株を引きぬいた穴にマッドゴーレムがまた戻ってただの土に戻る。あっという間に午前中に切り倒した切り株を引き抜き終わる。恐るべし剛力。
マイヤがまた伐採に戻っていくのについて行って枝打ち作業を再開する。戻ってみるとミヤは巨木を一本切り倒していた。小一時間ほどしてリュディーとヤルルーシカも合流する。
リュディーとヤルルーシカには午前中に切り倒した原木の皮剥ぎをしてもらい乾燥のため世界樹の木に立てかけて貰うことにして俺とマイヤ、ミヤは伐採続行。
丸太の乾燥には時間がかかるためリュディーが魔法を使った。皮を剥いだ丸太から水分を精霊として呼び出して乾燥させる。伐採にも魔法を使うことにした。
あまり力を込めると斧の方が壊れてしまいそうで力が込められないのだそうだ。そこでエンチャンテッドウェポンと同じ要領で斧に風をまとわるつかせ巨大な風の斧にしてみた。
これでフルスイングが出来るようになり、一気に伐採速度が上がった。さらにミヤはハルバードで同じことをして切り倒し始めた。
そうなると使いなれた武器の方がよくマイヤもグレートソードで切り倒しだす。結局斧は俺が使って、三人で切り倒していく。正直剛力どころか怪力すら持っていない俺は戦力外だ。
初日で百本近い木を伐採出来ることが分かったので、とにかくシュナイダー領まで木を切り倒しまくることにした。
切り株は後回しとして、丸太小屋に必要な分以外の原木も端に避ける程度で放置することにした。こうなると早かった。
丸太小屋はリュディーが作り方を知っていたので設計図とにらめっこをしながらヤルルーシカと二人で既に運び終えている丸太を使って進める。
マイヤ、ミヤ、俺はひたすらシュナイダー領目指して伐採しまくる。およそ2m位の幅で切り倒しながらズンズン進む。あっという間に大樹の圏内は切り進んで圏外の伐採に入っている。
ここからは魔獣も出没するので伐採と討伐がセットになる。エンチャントした武器の威力がすさまじく、下手な魔獣なら輪切りにしてしまう。
木の伐採が進んでいるので戦いやすかった。拠点からは大分離れてしまったので一旦中止して拠点に戻ることにした。
何本か伐採した木を引きずりながら戻る。拠点では丸太小屋の基礎が出来上がっており巨木を支えにした1m位の高さに組み上がっている。
どうやら木の加工に苦戦しているようだ。何やら半円型の切り込みとか丸太の一部を平らに加工したり少ない大工道具でちまちまち削ってる。
半円型の切り込みならレイピアを円筒型に風のエンチャントを施して突く突く突く。ほら削れた。平面加工はもっと簡単だった。マイヤがグレートソードを一閃、鰹節みたいに削れた。
それを見ていたリュディーが、3cm位の位置にもう一度線を引いた。また一閃。平板の完成だった。ここでジョブチェンジ。
マイヤとヤルルーシカが交代して木材加工にマイヤが加わる。残りメンバーは水源までの小道を作ることになった。
リュディーが偵察した水源まではそれほど遠くなかった。世界樹の圏内だ。世界樹の圏内はおよそ半径300mくらいだろう。
第一の水源はちょうど真ん中くらいにある湧水による泉。第二の水源は崖から湧きだした水が小川となっている。これは圏内ぎりぎり辺りにある。
第三の水源は湖だった。これは圏外にありそこそこ大きい。まだあるようだが今日はここまでにして拠点に戻る。
ログハウス作りは進展してなかった。木材の加工を優先していたからのようだ。今まで出来ないので諦めていた加工を再度やり直したり次の工程のための加工をしたりしてたらしい。
マイヤが荒削り、リュディーが仕上げ削りと分担している。
日が暮れる前に野営の準備にかかる。薪には苦労しない。削りカスやらおが屑、木っ端材は捨てる程ある。今日のメインは野鳥の香草焼き。
雉の様な鳥を三羽絞めてあるので内臓を抜いたお腹に香草を詰め込んで大きめの葉っぱで包んで焚火にゴー。あ、慌てて取り出して塩を揉み込む。改めてゴー。
焼けるまでの間、リュディーと一緒にエリクサーと万能薬の調合に挑戦する。さすがにリュディーも初めてだそうだ。まずは俺から。・・・当然の様に失敗。
何とリュディーでも失敗している。何回か挑戦して無理かと諦めかけた頃。リュディーがエリクサーを完成させた。続いて俺が万能薬を成功させる。それぞれ一個づつしかできなかった。
他の皆にお披露目した。この二つ父様に上げたい旨を伝えると笑って了承してくれた。有り難い。そろそろ汗も引いたと思うから上着を着たらどうだろう。
俺も含めて全員が力仕事なので上着は脱いでいるままだ。もうあまり気にならなくなった。
・・・うそです。ちょー気になります。目のやり場に困りますしそのまま抱きつかないでほしいです。直で当たってますよ。
なぜかみんな上機嫌だ。彼女達からしたらまだそれほど稼げてはいないはずなのに。俺の目標の第一歩に踏み出した事を喜んでくれているのだろう。
良いパーティーに恵まれた。皆に感謝と何かしてあげたい。いや、そのままでの抱き枕は勘弁して下さい。こうして二日目の夜も暮れて行った。