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第三章第二十八話 大侵攻阻止作戦

第三章第二十八話 大侵攻阻止作戦



 俺達は直ぐに行動に移った。丸太を組んで大きな焚火を作る。スキル持ちがどんどん丸太を運んでくる。


 残りの藁もぶち込んで中心部にファイヤーボールをこれでもかってくらいに叩きこんで火を付けた。すぐに風魔法で風を送り込んで火勢を強める。


 何十本もの丸太が轟々と唸りながら火を噴く。ものすごい熱気だよ。傍の世界樹が心配だけど仕方ない。穏身と瞬歩を持った姐さん達が偵察に出てくれている。


 魔獣の群れの動向を探っているんだ。俺達は薪代わりの丸太をドンドンくべながらじりじりとして待つ。すごい勢いで姐さん達が戻ってきた!


「くっはっ。来た、来たで。物凄い数や。早よ火消して逃げんとどうにもならんで。急いで水球ぶち込んで逃げるで!」


 今度は水球を四方八方からバンバン打ち込んで火を消そうとしてるんだけど火勢が強過ぎて消えない。これって火災旋風になってる!?


 炎が凄い勢いで渦を巻きながら天に登ってく。周囲の温度がぐんぐん増して行って風が炎に流れ込んでる。


「だめだ。これ風の流れを止めないと消えない」


「シルフ達が悲鳴を上げてるよ。どんどん炎の渦に飲み込まれて行ってる。みんな逃げて~~!!」


 リュディーの悲痛な叫びがこだまする。姐さん達は限界のスピードで逃げて来てるからひゅ~ひゅ~と荒い息をついてて言葉が出ない。



 それでも目をかっと見開いて炎の竜巻を食い入るように見つめてる。どうしたらいいんだ。こんなになるなんて。


「グリンダ! 炎の周りを物理障壁で囲んで。みんな風魔法で周囲の空気をここから遠ざけるんだ。全員息を止めて。窒息しちゃう」


 俺の声に反応してグリンダが物理障壁を発動。周囲では風魔法を使い空気を取り除いて行く。咄嗟に考えたのは真空にして消化する方法だ。


 物理障壁内の空気をあっという間に消費して周囲からの空気も遮断してやっと消化に成功する。


 さらに水魔法をかけ異常な高温となっている、周囲の可燃物が自然発火しない様に冷ます。物凄い水蒸気がそこら中から上がって加熱した空気も冷まして行く。


「・・・も、もう時間がないで。こ、ここに殺到して来よるんや。早よ逃げんと飲み込まれてまう」


「みんな集まって!! 魔力が足りない。みんなも練って俺に魔力補充して。手を繋ぐのを忘れないで」


 みんなが駆け寄ってくる。なけなしの魔力をみんなが俺に注いで来る。・・・それでもぎりぎりか。全員を魔力の膜で覆いながら大シュナイダー領の前線に魔力線を通す。


 侍女さん達は3人ともいる。マイヤ、ミヤ、ヤルルーシカ、リュディー、アンジュ姫様達3人に姐さん達、アン・・・ライラがいない!!


「ライラがいないよどこ!?」


 周囲を見回すと、煙を吸ってしまったのか焚火の向こう側で倒れてる。周囲からは魔獣の叫び声が鳴り響きだしてる。


 もう間に合わない。ライラ! もう飛ぶしかないと言う所でアンジュが瞬歩でライラを抱えて戻ってくる。アンジュを引っ掴んでそのまま転移する。


 大シュナイダー領の草原に全員が投げ出される。俺の体勢が崩れたから着地点もずれてしまったみたいだ。横向きで着地する事になっちゃったからごちゃ~っと地面に寝転んで着地だ。


「お、重いよ~。どいてどいて。あたしが潰れちゃうよ」


 一番下になったのはリュディーみたい。


「ぼ、僕も潰れてるよ。早くどいて。だれ? こんなに重いの!?」


 ミヤがその次辺りか、なんかどさくさにまぎれて酷いこと言ってるな~。俺は真ん中らへんに居るから身動きが取れない。


 上の方からゴロゴロと素早く転がってみんなの上からどいて行ってる。モタモタ立ち上がってどく様な事はしないのは流石だ。


「はあ、はあ、はあ。みんな無事~? 誰か確認して~」


 マイヤが素早く数を確認。再度、名前まで確認してから全員の無事を知らせてきた。ヤルルとグリンダが煙を吸い込んでしまったライラの治療を始めてる。


 俺はと言うとアイダに抱えられて起き上がってる所。もう気力が尽きた。でもまだだ。まだ後始末が残ってる。周囲でビックリ顔の元護衛団。


「騎士団長! 全員を速やかに大シュナイダー領の領主館前まで下がらせて、急いで!!」


「はっ!」


 魔力ポーションを飲んで快復した魔力でダークエルフの前線とエルフの前線にも飛んで速やかに後退させた。


 2時間後、大シュナイダー領の領主館前。4000人以上の人間が集合している事になった。父様が送り込んだ元メルト子爵領の騎士団の大隊もここまで戻ってきている。


「あ~、サラや。ちょっとわしの所まで来てくれんか」


 ああ、父様が怒ってる~。


「まあまあ、あらあら。サラちゃんの仕業なの~ちょっとこっちいらっしゃい」


 ああ、母様も怒ってる~。


 俺頑張ったのに。どうして。重い体を引きずって父様と母様の元に行く。


「ただ今戻りました父様、母様。あとマルス兄様。ミランダ義姉様今日もお美しいですね。ジュリア姉様海鮮はお口に合いましたか」


「~~~~~!!! サラ~~~~! お前は何をしておるのだ。挨拶はいい。まず説明をしなさい」


 うぅぅ。俺のせいじゃないよ。危機を救っただけなのに。なんで俺ばかり怒られるんだ。


「義父様、お待ち下され。これには深い訳があるのじゃ。緊急のことゆえ説明もなしに行ったのじゃが決してイタズラとかではないのじゃ」


「そうですわぁ~。義母様も聞いて下さい。ああ、そんな殺気を飛ばされてはぁ~。説明も出来ませんわぁ~」


 ティアとグリンダがどうにか俺を擁護しようとしている。他のメンツは腰が引けて逃げ腰になってる。姐さんとジュディーは・・・あっちの隊長にものすごく睨まれてる。


「父様、大侵攻です。大侵攻が起きかけていたのです。なので慌ててその対処をしたんですよ。ちょ、ちょっと母様。く、首絞まってます。ギブギブ」


大侵攻と聞いてちょっと落ち着いた。なに! ってなもんだよ。


「怒る前にちゃんと訳を聞いて下さい。たぶん俺、英雄ですよ」


「サラちゃん。能書きはいいですからキリキリと説明しなさ~い」


「だから、拠点の間引きをしようとしたら北の方からすごい不穏な空気が流れて来てるじゃないですか。確認したら凄い数の魔獣が集まってきちゃってるから、こりゃ大侵攻だって。慌ててうちらの拠点で火を焚いて、生半可な炎じゃこっちに誘導できないから物凄い炎を上げたんですよ」


「そうなのじゃ、炎が強過ぎて消すのにまた一苦労したんじゃが、魔獣たちがこっちに引き寄せられたのを確認して慌ててここまで逃げてきたんじゃ」


「それでぇ~。大森林周辺の人数を減らさないといけませんのでぇ~、全員に撤退命令を出したんですのぉ~。一応目印に領主館って言ってですぅ~」


「・・・事情は分かった。良くやったと誉めておこう。で、ここに村の人口の十倍くらいの人間がいるんだがどうするつもりだ?」


「てへ。父様なんとかして下さい」


「ちょ、ちょっと待って下さい父上。落ち着いて下さい。サラを締め上げるのは後です。なぜ大侵攻が起きたのかそこを確認しないと」


「ナイス。マルス兄様」


 物凄~~く長いため息をマルス兄様は吐いたけど何も言わなかった。いつも兄様は優しいんだ。


「ふぅ~~。マルスの言う通りだな。各騎士団長はいるか?」


「「「はっ」」」


「私が命令を下せない部隊もいるが、まずは従ってくれ。駐屯地に少数で戻って、物資を引き上げて村周辺に駐屯し直してくれ。決して大森林を刺激しない様に注意してくれ。その指示が終わったら主だったものを集めて、またここに集合してくれ。対策を練る。以上だ」


 ここに集まった4千人が徐々にバラけて行く。村を囲むように分散するとそこから少数の部隊が離れて行き野営用の物資を回収しに行った。


 指示が行き渡ったのを確認してから騎士団長が集まってくる。まずは俺の所の騎士団長とその副団長2人と近衛侍女の総隊長。


 ダークエルフとエルフの隊長とその副隊長。父様の所の騎士団長とその副団長4人。領主館のダイニングに集まる面々。俺達は全員居る。


 侍女さん3人は、総隊長の指示のもと別行動中。マルス兄様、父様、母様、モニカとジェシカ。ジュリア姉様とミランダ義姉様は席を外した。


 全員にお茶が配られ、おのおの席に着く。シュナイダー領のメンツがソファーに座って、その他は立ったままだ。だってソファーがそんなにないんだよ。


「さて諸君。今回の顛末は先ほど聞いた通りだ。危うく帝国に大損害を出す所であった。疲れているだろうが原因を究明しておかねばならん。各騎士団は上位者に領主がいるな? よし。わしと、サラ、リュディーとメルにルルか基本はこの面子で決める」


 まあ、順当だな。実質シュナイダーが決めると言ってるような物だけど、エルフやダークエルフが言うこと聞く筈がないからリュディーと姐さん達をだしに使おうってことだよね。で


 もたった一言でこの場の雰囲気が一気に不穏なものになった。


「義父様、うちらも参加してええのんですか?」


 それを察した姐さんが父様を義父様と呼ぶ。うん。娘を呼び捨てにしても問題ないのはエルフでも同じか。エルフの隊長が驚愕してるけど、俺との関係性は伝わってないらしい。


 メルとルルに付けられた精鋭中の精鋭だからプライドもものすっごく高い。


「メルか。そうだ。サラの嫁の一人(・・)だが神樹王でもある。聖樹王と一緒にエルフをまとめて欲しい。巫女王も同じだ。リュディー」


 さらっと説明する。


「うん。義父様。わかったよ」


 リュディーが気にした風もなく答える。


「後はシュナイダーの問題だが帝国のオブザーバーとしてティア、グリンダ、アイダにも参加してもらおうか」


「「「はい。義父様」」」


 なんとティアまで呼び捨て。ここにいる全員がティアの素性は知っている。これで父様が上位者である事を認めざるおえない事を全員が理解する。


「さてと、まず前線で間引きをしていた部隊の代表はなにを(・・・)したか報告してくれ」


「ではまず某からここ数日間の活動を報告致しましょう。自分は小シュナイダー領騎士団長です。自分らは元ティア殿下、グリンダ公女、アイダ姫の護衛部隊です。大シュナイダー領に到着し、その任を解かれ婚家に組み込まれ小シュナイダー領の騎士団を創設致しました。その後は旦那様―サラ殿です―の意向を受けて小シュナイダー領で魔獣や獣の間引きを行っていました」


 騎士団長もさりげなく自分達の立場、仕えている姫たちの立場、現状の立場をぶち込んで来る。


「うむ。聞いておる。その方法を聞かせてくれ」


 父様が合いの手を入れる。


「はい。大旦那様(・・・・)。まず6人編成の部隊を複数作り、交代制で昼夜を問わず狩りを続けております。突入部隊が3つ、交代部隊は20部隊程でしょうか。これが昼夜を問わず。常に3部隊が大森林に入り狩りを行っていました。狩りを行う場所はごく浅い外縁部分から中層までです」


「大森林には18人しか入っていないのだな? では、魔獣よりも獣の方を多く刈っていたのか?」


「当初はそうでした。しかし途中から獣を森の奥へと追いやる様にしたのです。すると魔獣が多く現れる様になってきました。これ幸いと現れる魔獣を殲滅して居りました」


「わかった。次は・・・どちらが説明してくれる?」


「ほな、うちん所の隊長に説明させるわ」姐さんが答えるとしぶしぶエルフ隊の隊長が報告しだす。


「・・・私は神樹王様付きの居留地開拓部隊の隊長だ。横に居るのが聖樹様付きの隊長だ。先に言っておくが我らは巫女議会から派遣されている。そなたの指揮下にはない」


「黙り! うちの指揮下にあるんは本当やろ。うちがサラやんの嫁になるんも本当や。それも神樹王になる前から決まっとる。神樹王になったんも導き手たるサラやんがおったからや! お前ら森に帰るか? 任務に失敗したゆうて巫女王に報告するのか?」


「・・・神樹王に従います」


「ならうちの旦那、ひいては義父殿にも従いや。余計なこと言わんでええ。報告を続けな。ルル、お前のとこもええな?」


「・・・ええよメル。聖樹王も同じや。余計なこと言わんでええからな」


 メル姐さんとルル姐さんに一喝されて黙りこむ隊長達。


「それでは続けてくれ。ここに派遣されてからなにをした?」


 父様が促す。


「そちらの御仁とほぼ同じだ。神樹王と聖樹王の意向を受けて、小グループに分かれて間引きをしていただけだ。場所がここより西側に寄ってるだけで3グループが常に狩りをしていた」


「と言う事はエルフも18人森に入っていたんだな。 まさかダークエルフもか?」


 父様がダークエルフに問いかける。


「・・・俺は巫女王様付きの居留地開拓部隊の隊長だが、聞いてる限りは同じだ。18人が常に入っていた。場所は東よりの方だ」


「と言うことは全部で54人か。ぎりぎりだが問題ないはずなのだが」


 ダークエルフの報告を受けてぼそっと呟く。そこに大シュナイダー領騎士団の騎士団長が報告する。


「お待ちを大旦那様。自分達は3000人を率いて小シュナイダー領の封鎖のためここに着任いたしました。大シュナイダー領と小シュナイダー領の境界に布陣致し、何人も通さない様に致しておりましたが、一部部隊を森の中にも展開致しています。我ら3000人を抜けて森に入った者を狩りだすのが目的です。小部隊を巡回させる形で森のごく浅い部分だけですが20部隊120名程が巡回して居ります。狩りは行ってません」


「・・・そうすると174名が森に入っていた事になるか。外縁部だけとはいえちと多い。迂闊だったか」


 また父様がぼやいた。今回の騒動の顛末は人数超過が起きたためらしい。

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