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第三章第二十六話 塩どうする?

第三章第二十六話 塩どうする?



 食事も終わってお茶を楽しんでる頃、そろそろ明日の計画を建てようと言う所だ。


「明日は、午前中は海岸線の魔獣の殲滅作戦を敢行して午後は開墾です。一部は拠点に戻って拠点周りの魔獣の間引きを行います。当然これは転移がある俺が行きます。それから侍女さん達が来るので拠点で家を建てなければいけません。これはジュディーとマイヤが得意なのでお願いしたいです」


「了解した。侍女たちも連れて行くのか?」


「侍女さん達はここで訓練です。魔法がまだ甘いので良く教えてあげて下さい」


 俺の宣言に動揺を隠せない様だ。そこそこ自信があった様でここに来てダメ出しがあるとは思っていなかったのだろう。ああ、みんなの顔が悪くなってる。


「なら、あっちの間引きは誰がするん? サラやんだけじゃダメやんか~?」


「・・・それは認めるよ。一応高速戦闘が出来る人をお願いします」


「ならうちらやんか。一応ヤルルかグリンダ姫さんもお願いしとこか? 万が一があるさかいな」


「・・・そやな~。またハイスピードビートルが居ると厄介やもんな~」


「そうするとこっちをどう分けるかじゃな。ミヤ、アンジュ、アン、ライラ、グリンダ、アイダ、わらわに侍女3人じゃな」


 グリンダ姫様が物申す。


「侍女3人とアイダが高速戦闘を出来るのよねぇ~。なら2:2に分けて、お荷物のアンとライラも分けましょうかぁ~。癒しが出来るのは私とミヤ、アンジュですからぁ~これも分けましょう~。ティアと私、ミヤとアンジュかなぁ~」


「ではそのようにしましょう。因みにサラ達はいつごろ戻りますか?」


 アンジュがそう締めくくって、俺達の動向を聞いて来る。


「そうだな。マイヤ達を送って行くから、朝からあっちに跳んで午後いっぱいはかかるかもしれないね。そしたらまたマイヤ達と一緒に帰ってくるよ」


「なら完全にこっちとは別行動ですね。了解しました。何かあったらファイヤーボールを打ち上げることとしてその方向で進めましょう」


 もう一度アンジュが締めくくる。


 翌朝は、・・・侍女さん達の抱き枕になって目が覚めた。順応早いな! この娘達。まあいい。ちょっと早過ぎるから二度寝をしよう。


 次に目覚めた時は、侍女さん達は朝の準備をしていた。俺はと言うと・・・姐さん達か。ひょっとして夜はいろんな人に掴まってるのか?


 さっさと起き出して、朝の支度をする。侍女さんはその辺は素早い。いろいろお世話になります。


 みんなも起き出して来てお茶に食事と無難に進む。朝が楽になったな。食材を向こうから持って来て、こっちの海産物はまたカラナムのおっちゃんだな。


 生ものだから傷む前にさっさと捌いてもらおう。海洋性の魔獣の素材も預けてきちゃおうかな。そうだ船の設計図も頼んでおこう。


 小舟で良いからね。それと侍女さんの装備だ。ニコラスいるかな~。みんなのマジックバッグから要らないものを出してもらって詰め込む。


ちょっと足らないかな。ティアにも借りよう。もうちょい性能が良いのないかな~。マジックバッグ。贅沢を言っちゃいけないんだけど。


「もういいかな? なんか必要な物ある? 買ってくるけど」


「僭越ながら、やはり天幕をお買いになった方がよろしいのではないでしょうか? 潮風はお肌の天敵でございます」


 侍女さんの提案に全員の視線が突き刺さる。きっとお肌の天敵がいけないんだろうな。もろに反応したもの。


「う、うん。頼んでくるよ。他は?」


「はい。塩を試験的に流してみてはいかがでございましょう。最初は戸惑いますが、慣れてくればなかなか良い塩でございます」


「そう! じゃあ領主やってる人たちにも分けてみるよ。父様の所と兄様の所エルフとダークエルフの所も大丈夫かな」


「待ちなさいなぁ~。なんの話ですぅ~? 塩ですかぁ~」


 厳しい顔のグリンダから待ったがかかった。


「そう。この間実験で海塩を作ってみたんだよ。それを他にもって言う話」


「ふむ。次から次へと誠に難儀な問題を出して来るのう。お前様よ」


「ふ~。困ったものであります。そは大変危険です。帝国の根幹を揺るがしかねません」


 姫様達が3人とも苦言を呈して来る。


「あれ? やっぱりだめだった?」


「ダメではないのじゃが根回しが少な過ぎるのじゃ。大いに結構と言いたいのじゃが・・・敵が強大過ぎるの。こちらもそれなりのバックが付いていないとそれこそ暗殺者の雨あられじゃ」


「正直に言いますとぉ~。世界樹の利権の上を行くような話なんですよぉ~」


「故にですが、塩ギルドの力を削いでおきたいと言うのも帝国の思惑にはあります。それがこんな所であっさりと出来てしまっては私達もどうしてよいのか。これで2重に危険な存在になってしまいましたよ大森林は」


 うわぁ~。3姫が物凄いこと言ってるよ。塩は止めようかな。


「出来てしまったものは仕方がないのじゃ。いつか誰かが作ろう。ならばわらわ達がいた方がまだよい。じゃが、最初に持って行くのは、陛下じゃ。あとシュナイバッハも巻き込むのじゃ。まずはこっそりと持って行くのじゃぞ? 間違っても献上とかするでないぞ」


「う、うん。父上と一緒に行って来るよ。レシピも公開した方がいい?」


「ならん!! それは秘匿するべきじゃ。小シュナイダー領の財産じゃ。子々孫々に伝えねばならんものじゃぞ。これでわらわ達の子も安泰と言う物じゃ。くっあはっはっ」


 ああ、ティアが黒くなってく~。


 もう色々突っ込まれたけど早々に分かれて、それぞれの作業に分散することにした。まずは俺が転移で拠点に戻る。マイヤとリュディーを残して、大シュナイダー領にさらに飛ぶ。


「カラナムのおっちゃーん。生もの捌いて~」


「サラ坊。またでやすか? まあ、えらい人気でしたからええんでやすけどね。この辺じゃあ海産物なんてお目にかかれやせんから。奥様にお譲も大変喜んでやしたよ」


「そう? よかった。あの辺掃討しないと人が住めないからさジャンジャン狩ってるよ。これ昨日の分。また宜しくね」


「へい。さてさて、今度は新村の方にも卸してやらにゃあいかんでしょうな。おーい。ニコラス。お前んとこも一口噛むか?」


「はいはいはい。噛みます噛みます。いいんですか? カラナムさん。うわぁ~、ありがたいな~」


 もう手の皮が擦り切れるんじゃないかと言う勢いでニコラスが飛んできたよ。


「それと、ニコラス。小舟の設計図手に入らない? あと天幕。姫様達が寝るから豪華なやつ」


「小舟ならすぐですよ。今ここでも水路用の小舟作ってますから。中型くらいまでなら持ってきますよ。でも現物の方がいいじゃないですか? カラナムさんに売って頂けばいいじゃないですか」


「おお、ナイス意見。マジックバッグに入れてけば良いんだよね。カラナムのおっちゃん一隻ちょうだいよ。お金はいつもの通り売り上げから引いといて良いから」


「~~~。しょうがねえでやす。小舟程度なら持ってて下せぇ。十人乗りくらいでやすよ?」


「うん。やった~。これで近海の魔獣が一掃できるかも」


「それとサラ坊っちゃん。天幕ですが、豪華な奴になると皇都で購入する方がいいです。皇族用のはそれこそ貴族街にある大店の店で買うしかないですからあっしじゃ手が出ません」


「そうか~。分かった。陛下か宰相様に聞いてみるよ」


「え? サラ坊っちゃん、ま、待って下さい。いくらなんでもトップ過ぎます。その下の下の下位で良いんですよ?」


「でもそんな下の人知らないもん。じゃあ、元帥くらい?」


 もう色々諦めたニコラスが謝ってきた。


「・・・いや、すいません。言い方が悪かったです。木っ端役人で良いです。(皇都に居るかな~木っ端役人)」


 すったもんだしたけど船はゲット。あと天幕は皇都で買うと。そうだ父様居るかな。


「カラナムのおっちゃん。父様どこらへんに居るかな?」


「そうでやすね~。ちょうど隣の元子爵領辺りにいやすよ。スケジュール的にはまだそこら辺うろついてるはずです」


「サンキュー。ちょっと行って来る」


 シュンてな感じで、隣領の冒険者ギルドへ。


「や、受付のお姉さん。ご無沙汰」


「~~~~~~。若様~~~~!!!」


「え? なに言ってんの? お姉さん?」


「あ、いえ。ここメルト子爵領何ですけど、シュナイダー侯爵家に併呑されました。つい先日の事ですけど。ご存じない?」


「あ~。聞いた聞いた。父様の領地になったんだよね。でも俺この領地と関係ないもの。俺の領地別だから若様は言い過ぎだよ」


「へ? 別の領地? ご当主様? お貴族様になられたんですか?」


「そうだよ。小シュナイダー領って呼んでるんだ」


「・・・すいません。数々のご無礼をお許し下さい」


 受付のお姉さんが涙ながらに訴えてきた。ギルド長まですっ飛んで来て土下座する始末だ。


「き、気にしなくて良いよ。ついこの前までは喰い詰めてたんだから。そんなに変わってないから。何か悪いからもう行くね」


 早々に立ち去る事にした。ええ~。これからはあんなになっちゃうのかな~。あんまり正体をばらすのは止めようかな~。てくてくとこの間、門前払いを喰らった領主館に向かう。


「こんにちは。サラ・シュナイダーですけど父様居らっしゃいますか?」


 領主館前の門前で守衛の兵に声をかける。直立不動になって敬礼したかと思ったら走っていった。この前の兵隊さんだ。また房を付けた隊長さん連れてきた。


「はっ。若君。ご案内つかまつります。先般は大変なご無礼を! 申し訳ございません」


「ああ、気にしないで。あのときは全然違ったもの。対応は間違って無いよ。じゃあお願いします」


 小隊長さんの先導で、どんどん屋敷の奥に入って行く。最奥まで来て綺麗な扉の前でノックする。


「門衛、3番隊小隊長であります。ご子息がお見えになっておりますのでご案内致してまいりました」


 入れ! ってなくぐもった様な声が聞こえて扉が開かれる。小隊長はここで戻って行った。扉を入ると中には護衛の騎士と文官達、壁際には侍女が控えている。


 正面の執務机では父様が書類と格闘中だ。目線も上げない。


「どうしたマルス。急用か?」


「いえ、父様。長兄様じゃないです。サラです」


 そう声をかけた瞬間。ガバッと起き上がって大きな執務机を飛び越えて掴みかかって来た。前後左右にブンブン振り回されて叫んでる。


「お、おまえ~、やってくれたな~。わしの苦労を台無しにしおって。さらなる苦労まで押しつけおったな~。ええい、どうしてくれよう!!」


「父様。落ち着いて下さい。部下の前ですよ」


「どの口がほざくか~~!! わしがここに居るのもお前のせいだろうが! 一言言ってから動かんか!」


「え~と。父様居なかったじゃないですか。一応マルス兄様には帝都に行くって言ったんですよ?」


 暫くすったもんだをしてやっと父様が落ち着いた。周り中の部下達が唖然としていたけど今までの威厳が台無しだね。


 そんなことより来客用のソファーに座ってお茶を貰って一息。お互いに入れたところで父様が問うてくる。もちろん周りは人払いされてからね。


「なんだ。お前は開墾してるはずじゃなかったのか?」


「そうです。開墾してますよ。でも一緒に帝都に行ってほしいんですよ。ティア姫を始め3姫が全員内緒で帝都で打ち合わせろって言うんですよ。これ作ったら」


 塩を見せたら、父様がなんだ塩かみたいな顔でちょいと舐めてみる。徐々に顔色が変わってきた。あちゃーやっぱ大事か~。


「今何と言った? 作ったと?」


「ええ。開墾してたら海に出たので、海鮮とか届けてありますよ? 家には。それで実験的に作ってみました海塩」


 ・・・・・・・。額に手を当てて父様がうめきだした。


「もうわしの手には余るようだ。どうしろと言うのだ。誰かいるか? 直ぐに騎士団を編成しろ! 大森林前に防衛線を張って警戒をしろ。一個大隊を派遣せよ。何人も大森林に近づけるな」


 すぐさま元子爵領の大隊が大シュナイダー領南部に向けて旅立った。輜重車両などは後から追っかける予定の様だ。


 その処理を終えて一路帝都に転移。例の転移陣のある部屋に着く。そのままそこで待機している侍女に宰相シュナイバッハ侯に取り次いでもらう。


 シュナイバッハ侯の執務室の前で取り次ぎを待って人払いまで済ませたところでおもむろに父様が話を切り出した。


「シュナイバッハ侯。お忙しい中申し訳ありません。実は問題が起きました」


「どうなされました両シュナイダー卿がお二方も見えるとは。さて問題とはなんでしょう?」


「実は、サラが海塩の開発に成功致しました。これを」


 20kgばかりの海塩を見せる。シュナイバッハ侯は疑り深そうに一舐めしてみる。途端に顔色が変わった。


「誠に海塩でございますな。今までは商品価値がまるでありませんでしたがこれなら十分以上ですな。さてさて、困りましたな。暫くこちらでお待ち頂けますかな。直ぐに陛下の所に行ってまいります。いや、ご一緒に行きましょう。サラ殿も婚約を発表したからには問題ございますまい」

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