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第三章第二十二話 南海道開通そして海洋性魔獣。

第三章第二十二話 南海道開通そして海洋性魔獣。



 昨日で畑を全て終えてしまった。今日は朝から南街道を走っている。俺のスピードで。前に伐採を進めてたからあとちょっとで南街道は開通する筈。


 と、ミヤが言っていたので早速開通させてしまおうと早起きして走ってる。海岸までは森のままなら1週間ほどかかるはずだけど道が整備されてるから半分くらいで済むはずだ。


 さらに俊敏とか瞬歩とかならさらに早いんだけど、俺にはない。限界まで走ったら瞬歩持ちのアンジュが俺を抱えて走ってくれている。


 俺の息が整うまで俊敏持ちのスピードで進んでいく。また俺を降ろして俺のスピードに合わせた速度で走り続ける。


 魔獣は全然見かけない。街道は両側に防壁を立てているから侵入できないと言えば出来ないんだけど。南に行けばいくほど強敵が増えてたはずなんだ。


 うーん。嫌な予感。それとも人数が減ったからかな? 境界での間引きのせいかな? 休みなしで俊敏持ちが走り続けると、一日で走破しちゃうんだ。


 さすがに今日は何も出来ないけどとうとう端まで来ちゃったよ。ひょっとして俺が居ないともっと早いのでは? なんて考えが過ぎるが気にしちゃいけない。走らないと俊敏が生えないからね。


 魔獣と会う事もなく端っこで野営だ。明日から伐採を進めて海岸に出る予定。もうここまで潮の香りが漂って来ている。海が近いんだ。ワクワクする。


 海、見た事ないけど。前世の記憶では緑に汚れた海しかない。いや、なんか島に遊びに行って凄い青い海も見たな。怖いくらいに青いんだ。


 今日はパンを焼いて来た。走りながらだからサンドイッチみたいにして肉とかを挟んで昼食を食べるためだったんだ。夜もまだパンがあるから、干し肉と豆スープ。


 獲物が獲れなかったから寂しい食事になっちゃった。お湯玉で体を洗ってさっさと寝る事にする。一応、見張りも立てていたけど朝まで何もなかった。


「よし。じゃあ、サッサと初めて開通させてしまおう。アン、ライラお前たちもマッドゴーレムを作って作業を手伝わせろよ」


 マイヤの号令が掛る。


「やっぱり、魔法と作業の両方やるんですね。とほほ。なかなかまだ慣れないんでよね。ず~と、叱られっぱなしですよ」


「・・・アンちゃん頑張ろう。皆さん出来るんですからいつか私達にも出来るよ」


「どうする? 変形エンチャントもさせる?」


「ミ、ミヤさん。そこはほら、手加減しましょうよ。複数魔法の同時展開しながら作業とか無理ですって」


「いや、やらせてみよう。きっと大丈夫。私もやらされたから。こんちくしょう~」


 なんか昔を思い出して怒り狂うアンジュ。付き合ってられないとばかりにマイヤとミヤはサッサと伐採を開始してる。


 俺もマッドゴーレムで下草とかもう刈ってるし変形エンチャントで道幅を広げてる。


「アン! 直ぐにマッドゴーレムを再構成しなさい。手は休めない」


「ほらほら、ライラ鎌の形にしたエンチャントが崩れてますよ。あ、マッドゴーレムも崩れましたよ」


 みんな厳しいな。俺はそんなに厳しく教えたつもりはないけど。


「アン、ライラ! 無理だと思うから無理なんだぞ。やれば出来る。アンジュだって出来てるんだからな!」


「くっ。マイヤのやつ。私をだしに使うんじゃない。ちょっと早く出来る様になったからって」


「あっはっはっ。大分うまくなったぞ! アンジュ」


「アン、ライラ。サボるんじゃないよ~。手が止まっちゃってるぞ」


「ミヤさん。何で後ろ向きで分かるんですか!」


「うん。みんなそうだから何となく」


 小一時間ほどで視界が開けた。海だ。海岸だ。ビーチだ。蟹だ。でかい! 2mくらいある。海岸を闊歩してるよ。魔獣だよねこれ?


「蟹の魔獣って知ってる? みんな」


「ジャイアントクラブでしょう。物凄く力があるから叩き潰されない様に気をつけましょう」


「うん。何か一杯居るね」


「まあ、人跡未踏の地だからな。繁殖しててもおかしくない。よーし。野郎ども! 今日は蟹パーティーだ。喰いたい放題だよ。やっちまえ」


 なんか、野郎って俺だけじゃねっ。という気はするけどみんながスルーなので突っ込まない。けどマイヤを先頭に突っ込む。


 マイヤが正面に居たジャイアントクラブを唐竹割りで目と目の間をざっくり斬る。


「目と目の間が急所だよ。そこ以外は硬いから関節を狙いな。仕留めたら邪魔だからマジックバッグに収納するのを忘れるんじゃないよ。ミヤ! 右側を抑えろ。 アンジュは左側だ」


 奇襲の一撃でマイヤが1体仕留めてからは苦戦が続く。とにかく硬い。ハサミが凶悪。挟むだけじゃ無くそのまま振り降ろして来る。


 岩とか粉々になる勢いだよ。さらに砂浜が走り難い。それでもマイヤとミヤが徐々に仕留めてる。


「ヤルル! 俺が前で囮になるから後ろから甲羅カチ割って」


「了解。だけどつかっまちゃ駄目よ」


「わかってる。こんなのに捕まるのは俺だって嫌だよ」


 1体のジャイアントクラブを相手の前から村雨で腹をつつきまくる。大したダメージを与えてないけど俺の周りに鋏をガンガン振り降ろして来る。


 ドゴンドゴン凄まじい音が直ぐ横でする。めっちゃ怖い。それでも踏ん張っていると。背後からドゥオゴンと凄い音がしてジャイアントクラブが前に倒れ込む。


 背中の甲羅が欠けているがまだびくともしていない。でもちょうど俺の目の前に急所が落ちてきた。ハサミは砂浜を掴んでいるから襲ってこない。


 チャ~ンス! 渾身の力で村雨を蟹の目と目の間に突き込む。ぶすっと刺さった。あまり深くは刺さらなかったけど、とにかく刺さった。


 そのまま全体重をかけながら押し込む。ズブズブっとさらに刺さって動かなくなる。マジックバッグに収納した途端、ヤルルが飛んできた。


 がしっと受け止める。その後から別のジャイアントクラブが2体。


「ご、ごめん。後ろからいきなりやられて」


「こう数が多くちゃ仕方ない。一旦逃げよう。マイヤの傍に行こう」


 ジャイアントクラブ2体をトレインしたままマイヤに助けを求める。


「マイヤ、マイヤ。助けて。2体来る~」


「バ、バカ! こっちくんな。既に2体居るんだぞ。ミヤー!」


「無理だよ僕も3体トレインしてるもん」


 全員が全員ジャイアントクラブをトレインしたままマイヤの傍に集まってくる。


「て、撤収~。退却しろ~」


 俺達は一目散に逃げ出した。南街道を大分戻っちゃったけど何とか逃げ切れた。蟹の足が遅かったのが幸いしたよ。


 都合4回突撃したけど全て撤退。そこそこの蟹をゲットしたけど全然減るそぶりが見えない。それどころか増えてる。


「参ったね。あんなに居たんじゃ。直ぐに囲まれちゃうよ」


 仕留めた蟹を焚火で焼きながら食べてる所だ。蟹ウマ! 初めて食ったけど蟹ウマ! 海を見たのも初めてだけど蟹の襲撃でほとんど分からなかったよ。


「・・・」


「皆、何か言ってよ」


 蟹喰うと黙るよね。


「なんだっけ? ミヤ」


「・・・」


「ん? 遅いよ返事。なに話してたか忘れちゃったよ」


「蟹美味いねって話じゃないの?」


「そうそう。美味いね。もっとたくさん獲ろうよ。って違うよ。あそこを突破しないといけないんでしょ!」


「・・・」


「もういいよ。食べ終わってからにしよう」


「・・・」


「・・・」


 小一時間ほどして蟹を喰い終わった面々。


「いやー喰った喰った。蟹を喰うの久しぶりだけど美味いな~。おい、その甲羅に酒入れて火にかけると甲羅酒とか言うやつできるぞ。蟹ミソの味が混ざって美味いらしい。当時はまだ子供だったから飲ませてもらえなかったんだ」


 マイヤが親父みたいな事を言い出したよ。


「え? 蟹ミソってこれ? 食べちゃったよ?」


「ミヤ~。なんて事するんだ。楽しみにしてたのに」


「まあまあ、まだ有るから明日でも良いじゃん。きっと絶品スープとか入れて三つ葉を散らしたりしても美味しいと思うよ。蟹ミソ。でも1杯食うのでやっとだったね。食費が浮いちゃったよ」


「これはたくさん獲っておきたいね。マジックバッグ一杯にしよう」


「・・・あのさ。あれは全滅させなきゃいけないんじゃないの?」


「あれ獲りに来たんじゃないでしょ! 塩作るために塩田、塩田作るためにあいつら邪魔なんでしょ」


 さっきの話を蒸し返すミヤ。


「あ、うん。そうだね。蟹があんまりにも美味かったからつい」


「このままじゃあ、どのくらい掛るか分かりません。残りのメンバーも招集しましょう。きっと待ってますから迎えに行ってあげて下さい」


 アンジュがこちらも物量を増やそうって言ってきた。


「う、うん。じゃあ、蟹おみやげにして色々回って来るね」


 シュンってな具合に一気に転移した。最初はティアのところ。


「お前様! 迎えに来てくれたのか。待っておった。もう嫌じゃ、ここじゃ遊べんではないか~」


「ひい様。お待ちを・・・お見捨てになるのですか」


「あ~、ほら。これジャイアントクラブ。おみやげです。みんなで食べていいから。こいつが大量に居て先に進めないんだ。ティア借りてきま~す」


 問答無用でシュンと転移する。ダークエルフの拠点開拓組の所に行ったけどリュディーはここじゃないって。またジャイアントクラブをおみやげに置いて、隠れ里に転移。


「サラ~。連れてって連れてって。もうやだよ~」


「これはこれ東王様に置かれましてはご機嫌麗しゅう。私もお目にかかれて光栄に存じます」


「うわあ~ん。サラが意地悪する~」


「うそだよ。これおみやげのジャイアントクラブ。大おばあ様にあげてね」


「もう行くのですか? 幼姫、気おつけて行ってきなさい」


 小姫さんに見つかったけど、許してくれた。蟹食べてね。


 次は、エルフの里だ。メル姐さんが泣きながら書類仕事してた。おみやげを置いて逃げ出す。今度はエルフの拠点開拓組の所。


 居た居たルル姐さん。無言で崩れ落ちてる。おみやげ置いてまたまた転移。最後は帝都だ。ここは流石にどこに居るか分からない。


「任せておくのじゃ。恐らく自室に居るであろう。こっちじゃ」


「あらぁ~? あなた、迎えに来て下さったのですか? 遅いですよぉ~。毎日毎日、晩餐会やらお茶会やらもううんざりでわぁ~」


「ああ、私も行きます。くっ。ドレスばかりで気が狂いそうです。剣、剣を握らせて下さい」


 ふふふ。ついこの間まではグリンダもアイダもお茶会とかしかしてなかったはずなんだけどね。


 料理長におみやげのジャイアントクラブを渡して転移する。一応、兄様達と父様の所にもおみやげを渡した。


 今晩食べるって。何やら父様が叫んでたけどどうせお小言だから無視。転移で南街道の中ほどに戻ってくる。


「早いな。もう戻ってこれたのか」


「うん。なんかほとんど夜逃げみたいになっちゃったけど手紙も置いて来たし、おみやげも渡して来たから暫くは大丈夫だと思うよ」


「はぁ~。空気がきれいですねぇ~。大森林。戻ってきましたわぁ~。ちょっとあなた。私にもジャイアントクラブ焼いて下さいなぁ~。私も食べたいですぅ~」


 ジャイアントクラブに目をつけていたのかグリンダが真っ先に言い出した。すかさずティアも便乗する。


「おお、そうじゃ。わらわも食したいのじゃ」


「剣、剣を振れるなら良いです。もちろん食べますけど」


 まだアイダが剣、剣言ってる。


「リュディーはこのへんなの食べるのは初めてなんだよ。硬くて食べられないんじゃないのかな~」


 リュディーおいしいよ~、蟹。


「ジャイアントクラブは久しぶりやわ~。あまり海岸線の方にはいかんかってん」


「・・・かれこれ10年ぶり位やないの。美味しいんやけどね」


 後からの合流組のために蟹を一杯焼く事にしたけど、見てたらまた食べたくなっちゃった。追加でもう一杯焼いちゃおう。


 今度は甲羅に酒を入れて甲羅酒もしてみる。出汁スープを入れたのももちろん作ってみる。姐さん達は手酌で甲羅から酒を汲んで呑み呑み焼きガニを食ってる。


 これが乙なんだよ。蟹ミソスープも美味しいけど酒呑みには止められない。程々落ち着いて来たので状況説明を始める。


「なんや~。もう畑は終わらしたんか。そんで南街道を繋げたと、そしたらジャイアントクラブが砂浜を占拠しとって進めんからうちらを呼び戻したんやな」


「任せるであります。今までの鬱憤を全部ぶつけるであります」


「で、作戦はあるのですかぁ~」


「え~と。ないです。今日は4回程アタックを掛けたんですけど、どうにも数が多くて囲まれちゃうんで撤退ばかりになってます」


「そやな~。こいつら硬いから一撃で倒せんもんな~。うちとルル、アンジュ、アイダを控えにして皆そのまま戦ってええで。囲まれそうになったら高速戦闘で間引いたるよってな」


「・・・うちらは休み休み高速戦闘で間引くん?」


「あとは、手に負えん様な数になったら突撃かましたったら何とかなるやろ?」


「私は最初全開で戦いたいであります。お淑やかに歩いてばかりだったので存分に暴れたいです」


「ええよ。最初はアイダを突っ込ませよか。好きな様に暴れてもええけどちゃんと食材としては残さなあかんよ」


「承知。眉間を一撃で粉砕してやります」


「・・・殲滅姫の再来」


 流石に2杯分の蟹は食べきれなかった。明日の朝食にしよう。・・・でも酒は飲みきった。1升あったのに。酔いどれエルフも見られたから良いか。


 さあ、明日から討伐開始だ。

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