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第三章第二十話 開墾開墾また開墾

第三章第二十話 開墾開墾また開墾



 南部大森林に戻ってまずやったのは、ブレイクタイム。まずはお茶でも飲んで落ち着こう。現状は分かってる。


 南部大森林の外は置いておくとしても、食料がもう僅かしかない。お金があるから買って来ると言う手段もある。しかし今は大変動を受けて超売り手市場だ。


 高いものを買ってくるのは、どうにも気が進まない。前世の記憶の貧乏性が出てるのは理解している。しているが気に入らない。自分たちで作るべきだ。


 穀物などはおよそ一カ月。ドライアドさん頼みだが出来る。野菜はおよそ2週間ほどだ。これもドライアドさん頼み。ならばこの期間さえ凌げばいい。


 小麦は1週間分、ジャガイモは3日分、大豆は2週間分、トウモロコシ(乾燥)は1週間分。野菜はない。


 いや、ミツバは十分にある。節約すれば食いつなげるはずだ。いざとなったら買うしかないけど。


「報告します。食糧不足に陥りました。至急食料を作ります」


「大変だ。僕、飢えるのは嫌だよ。良い思い出がないんだけど」


「俺も嫌です。さらに言えば、美味しいものが食べたいです。なので早急に畑を作る必要があります。雨期になったら小麦は出来なくなる可能性があるので、急ぐ必要があります」


 ゆっくりお茶を飲みながら説明している俺。


「何でそんなにゆっくりしてるの! 僕、嫌だって言ってるじゃん。ちゃんとご飯食べたい」


「うん。みんなが状況を理解してくれるのを待っていたんだ。高速戦闘になると俺が非常に役立たずなので、安全地帯である世界樹の圏内にある試験農園で野菜を作ろうと思う。みんなは西から始めて伐採、開墾、街道の製作を西、北、東門付近でしてほしい」


「それは分かった。いくら安全圏と言っても確実じゃないが大丈夫か? 誰か残そうか?」


「ううん。人数も減っちゃってるからそっちの方が大変だよ。俺は、試験農園を耕しながら野菜を作ってるだけだから。そうそう、ミツバと魚の採取捕獲もお願いしたいんだ。卵と鳥は俺が獲るから」


「いや、卵と鳥もこちらが担当する。怪力のないお前では、一反を耕すだけでも大分掛るはずだ」


「・・・そうだね。お願いするよ。じゃあ、みんな宜しく」


 みんなと別れ俺はその足で試験農園に向かう。やっぱり放ったらかしにしていたので、野菜は出来過ぎになりもう食べられない。


 それどころか既に枯れ始めてる。大きく育ち枯れ始めている野菜の処分から始めないといけない。


 まずは、マッドゴーレムを出来るだけ作り、穴を掘る。マッドゴーレムと協力して野菜の残骸を引き抜き細かくして穴に放り込んで行く。


 出来過ぎた野菜も放りこんで行く。どんどん引き抜く。根っ子を残さないようにしないといけない。2時間位かかちゃったよ。


 ここで悩んだ。野菜は燃やしちゃった方がいいかそのまま腐らせて肥料にした方がいいのか分からなかったんだ。


 でも出来過ぎた野菜とかは、燃やせないからそのまま腐らせることにした。水魔法で水を生んで火魔法で少し温めてから入れておく。


 うん? なんで温めたかって? 何となく暖かい方が直ぐに腐ってくれるような気がしただけ。これで肥溜めの完成。数か月後には良い肥料になると思う。


 ここでは要らない気もするけどね。・・・結構一人での作業は寂しいな。みんなきっと上半身裸だろうな。別にプルンプルンしてるのが見たい訳じゃないよ。


 さて、少し休んでから耕さないといけないな。マジックバッグから淹れておいたお茶を出し、干し肉をかじりながら飲む。


 30分程休憩してから畑にクワを入れる。大分固くなってきているので深くクワを入れて柔らかくしながら残った根っ子を除去して行く。


 くそ。やっぱりキツイ。横一列にマッドゴーレムを並べ、土魔法で作った石のクワを俺の動作に連動させて耕しているが疲れ知らずなので一気に耕せている。


 33mを耕すのに2時間。マッドゴーレムと合わせて5列出来た。パワー重視なのでマッドゴーレムをそんなに出せなかったのだ。


 石のクワなので普通のクワよりマッドゴーレムにパワーが必要だったんだ。もう一列やれば合わせて一反が終わるけど。直ぐには出来そうにない。手はマメだらけになったし、筋肉は痙攣している。


 剣の素振りなら50回は出来る。けど一列耕すのに何回振り降ろしたんだろう? フルパワーで振り降ろしてるけど30cm程を掘り返すのがやっとだ。


 深くなればなるほど土が固くなってくるから、3回程振り降ろす必要がある。それを33m。1m進むのに50回位は振り降ろしてるんじゃないかな。


 当然休み休みだけど。良く考えたら普通の農家はこれいつもやってるのに怪力とか生えてる人居ないよな。ってことは一列でヒイヒイ言ってる俺が生える訳ないんだよな。


 これは先が長そうだ。もうお昼だ。御飯にしよう。今日はジャガイモを吹かしただけの簡単料理に豆スープと干し肉。まよねーずはマイヤ達に持たせたから俺は塩だけ。


 さっさと食事を済ませてしまおう。ん? マイヤ達か? どうしたんだ、こっちに来る。何か起きたかな。みんなで走ってくるから、危険なことが起きた訳じゃないだろう。


「どうしたの? 何かあった?」


「ううん、何もないわ。どうせ近くだから一緒にお昼にしようと思って皆で来ちゃった」


 後ろ手に手を組んで小首を傾げる感じでヤルルが言ってきた。


「ふふ。一人は寂しかったから大歓迎だよ。イモだけで味気ないけどさ」


「魚と鳥も獲って来てるから焼いて食べよう。アンジュ火を起こしてくれ。これ捌くから」


「はい」


「なあにこれ? ちょっと臭いけど僕見た事ないや」


「あんまり近づいて落ちないでよ。結構深いからね。肥え溜めだよ。数か月もすると肥料になるんだ」


「ふーん。何のために作ったの?」


「本当は野菜とかの栄養のために畑に播くんだよ。野菜とかを育てると土から栄養がどんどんなくなっちゃうんだ。それを補ってやるためだよ。ここでは必要ないかもしれないけどね」


「へー。他の農家とかもやってるのかな?」


「どうだろう。前にみんなの話を聞いた限りだとやってないかもね」


「やってますよ。ね、ライラ。あたしたちの村では、落ち葉なんかも集めておいてやってますね。そうしないと畑が痩せてきちゃいますから。動物なんかを飼っている所では、休耕地にして放牧なんかさせてる所もありますよ」


「・・・ええ。そうすると動物のフンとかが肥料になります。春にはまた植えられるんです」


「うん。連作はあまり良くないから次の年は休耕地にしたりと色々農家も大変みたいだよ。俺は家庭菜園くらいしか手伝って無いから肥料を足し足し毎年作ってたな」


「・・・小麦なんかは春と秋の二回収穫しますよ。ここではそんな常識が崩れちゃってますから手探りですね」


「ここは、あまり小麦には適してないんだよね。気候的に暖かいし湿度も高めだから。それを補って余りあるこの地味には驚きだよ」


「ここでも南国って言う程じゃないからさ。大丈夫じゃない? 冬はちゃんと寒いし」


 ワイワイ喋っていると魚と鳥が焼き上がった見たい。味気ない食事だったけど魚と鳥が追加されて豪華になったよ。


 皆で喋りながら食事をした。食後のお茶を飲んで、またそれぞれの作業に戻っていく。あっちは西門の辺りの木を伐採し終わった所だって。


 これから畑を耕して、小麦を植える予定らしい。俺もまず畝を作って野菜を色々植えていくと予定を話した。


 昼の休憩を終え、また別々に分かれて作業に入る。別れ際にミヤが大きく手を振りながらバイバーイって叫びながら去って行った。


 その横で小さく手を振るのはヤルルーシカ俺もまたあとでーと言いながら手を振る。さて、午後も頑張りますか。元気を貰っちゃったから張り切って種蒔きまで5畝分終わらせよう。


 畝を作るのは両側から土を盛って小山の連山みたいにしていく。それを綺麗に台形に成型し、その頂上に種を植えていくんだ。


 本当は台形にまでしなくても大丈夫なんだけどその方が見た目がかっこいいからしてるだけ。畝を作るのにもやっぱりに時間が掛った。3時の休憩にする。はぁ~、お茶がうまい。


 明日も同じことやるのかと思うと気を失いそう。まあ、明日の事はその時考えよう。台形の上辺に指の関節一つ分だけ突き刺して穴をあける。


 そこに一粒づつ色々な野菜の種を落としていく。土は軽くかぶせる様にしてかけるだけ。ギュッと押したりパンパンして土を固めちゃいけないんだって。知ってた?


 思わずやりたくなるよね? 長老がダメって教えてくれた。軽く水をかけておけば発芽が促されるんだ。終わった~。種は1時間位で終わった。ちょっと早いけど帰ろう。


 お風呂に入りたいだろうから作っておこう。昼がジャガイモだけだったから夜はパンを作ろう。生地を寝かせておけばちょうどいい時間になると思う。


 鍬を肩に担いで家路を急ぐ。ちょっとふらつくのは大目に見て欲しい。慣れない作業で掌はマメが痛いし、腰は中腰で痛い。腕と脚の筋肉はパンパンだし、これって慣れるのかな~。


 ん? これってまた収穫の美味しい所だけ姫様達に持ってかれるのか? しかたない。あっちはあっちで大変だろうからご褒美だね。


 やっと着いた。近い筈なんだけど疲れてるから遠く感じるよ。まずはパン生地を練って寝かせておく。次は風呂だな。久々の火球水球包みだ。


 ここのところ練習を兼ねて皆がやってくれるので俺の出番がなかったからだ。最近ではもう慣れたもので一気に複数のお湯玉を出しておける。


 まだ時間があるので、熱くしておこう。皆が帰ってきたときにちょうどいい湯加減になるように調整する。この湯加減は適当だったりする。


 そりゃあ、どのくらい冷めるかなんて感覚的なものだからね。よし、出来た。ここまでで1時間程が経過している。そろそろ帰ってくるだろう。


 ん~~。エリクサーと万能薬を作っておかないと、いざって時に困るからな。採取もしに行くか。入れ違いになるかもしれないけどまあ良い。


 命の木の葉と世界樹の木の葉。さらに触媒用の枯葉も拾って来なくっちゃ。触媒の効果もだんだん分かってきた。


 普通そのまま作ると100回に1回成功するかしないか位の確率なんだけどって、これは薬師の力量にもよるんだった。


 200回に1回成功する位の腕だと上級薬師、ただの薬師だと500回に1回も成功しない。だから俺やリュディーが成功したのは奇跡に近かったんだ。


 高級薬師だと若干上がるけど100回に1回位成功するかしないかだ。上級から高級に上がっても成功の伸び代は思ったほど上がらないんだ。


 ここで触媒を使うとその成功率はおよそ倍位になる。成功するかしないかくらいの確率が必ず成功する位になるんだ。


 ふふふ。実は何回かエリクサーと万能薬を成功させている俺とリュディーはスキルがランクアップしてる。そうです。既に上級薬師なのです。


 きっと難しい薬の調合に成功してる分経験値が早く溜ったと思われます。俺も既に下位素材を使って上位薬を生成できるようになっていますよ。


 はっはっは。良く使ってるスキルは伸びるのが早くて良いね。他は全然生えて来ないけどね。リュディーは直ぐに上級薬師になったから、高級薬師も早いと思う。


 ちなみに姐さん達は薬師のスキル取ってないそうです。ちまちました薬の精製などやってられへんわ~とのこと。うん。狂乱だからね。


 それと最近分かってきたんだけど採取できる木の葉には、何やら条件がある。採れるのと採れない木の葉があるんだ。多分なんだけど若葉なんかは採れない。成熟した木の葉しか採れないみたい。


 だって剛力で引っ張っても取れないんだから相当だよ。それでも無理に引っ張ると木の葉が千切れて光の粒子に戻っちゃうんだ。


 そんな事を考えながら採取に励む。もう良いかなっと思うくらい、集めてからお家に戻ると。既に帰宅していたみんなが夕食作りをしていた。


「もう戻ってたんだ。お疲れ~。お帰り」


「うん。ただいま。サラは採取か? 世界樹には、魔獣も居るから気を付けないとだめだぞ」


 そう。安全圏である圏内の唯一の非安全圏が世界樹の上。蛇の魔獣とか虫の魔獣たまに鳥の魔獣も居る。圏外の魔獣ほど攻撃的じゃなく大人しいんだけど魔獣は魔獣なのでたまに戦闘になる。


 ほとんどは中級や初級の魔獣ばかりだから俺でも複数に囲まれたりしなければ大丈夫だし、積極的に襲ってこないので逃げる事も可能だ。


 理由は分からないんだけどね。安全圏に魔獣も避難してるのかもしれない。そこのルールを破って侵入している俺達が襲われるのじゃないかと推測してるけどそのルールが分かってないんだな。


 まあ、その内経験則で分かってくるだろうと放置してます。


「うん。気をつけてるよ。意外と俺は襲われないからね。今日も訓練する?」


「そうだな。しておくか。疲れてる時こそきちんとした動きが出来れば訓練になるからな」


 へへへ。剣の訓練も始めたんだ。多分だけど剣とかで鍛えた方がスキルが生えやすい。怪力こ~い。


 俺は基本的な軍事訓練を父様に習ってるから、実戦訓練が主だ。マイヤと打ち合ったり、ミヤだったりと色々な武器と闘う様にしてる。


 思ったよりどうにもならないのが双剣使いのアンジュ。対人戦ではアンジュが最強なんじゃないかと思う。あの二本の剣を掻い潜るのは至難の業なんだよ。


 逆に二本の剣の攻撃を受けるのはもっと至難の業だったりする。でも難点もある。硬い相手にはパワー不足で攻撃が通じない。関節とかを狙ってるみたいだけど結構難しいらしい。


 レイピア使いも厄介だ。とにかく早いんだよ。それも最速の突きが主体だから間合いに入れない。俺が良い勝負を出来るのは杖使いのグリンダだけど、後衛職なんだよね。とほほ。


 マイヤ、ミヤ、ヤルルーシカの場合、村雨ちゃんが破壊されない様にするだけで手も足も出ないよ。防御の上からガンガン来るんだもん。


 今日はこのくらいで勘弁してやるか。地面に這いつくばりながら思うサラだった。

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