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第三章第二話 ほな、いこか。

第三章第二話 ほな、いこか。



「どこから話そうか。しくじった後からかな」


 俺も詳しくは聞いてない、クエストをしくじった後からの話だ。


 迷宮都市から少し離れた洞窟から命からがら逃げ出したマイヤ達は、既に意識不明に陥っているアンジュを抱え近くの街の施療院に駆け込む事になる。


 そこで応急処置を受けてから更に帝都の大施療院にアンジュを移し、稼ぎに出る事にしたんだって。


「ああ、迷宮都市じゃ自分らもう暫く潜られへんかったんやな。だから大森林にいったんか。そこでサラちゃんに会ったと。アンジュを治したんもサラちゃんやて? 今は押し掛け女房が3人もおるんか」


「ここまでの話、サラには選択の余地はないんだ。あたしらもだけどこうなっちゃったんだ」


「ええて。それは分かったわ。それで未知のダンジョンアタックが当面の緊急の仕事やな。そこまではええよ。分からんのはなんで従士とか側室にならなあかんねん」


「そこは話せない。姐さんがうんって言ってくれないと」


「・・・そこな。一番の懸案やねん」


「え~と。そろそろ離しません? 真面目な話だから位置的におかしくないかな?」


「なんやサラやん。うちの膝の上イヤなん?」


 なんでちょっと寂しそうなのかな。マスコットじゃないんだから。


「そう言う問題じゃないんじゃなかな~と。それに姐さん手、動いてます。そこら中撫で回すの勘弁して下さい」


「いややわ~。これ愛情表現やで。そこ喜ばなあかんとこやのに。まあ、ええよ。ほなマイヤんとこ行きいや」


「ちょ、マイヤ。違うでしょ。違うでしょ。もう膝の上から違うでしょ」


「サ~ラ~。大人しくしないとだめ。今大人の話してるんだから」


 どうしてこうなった!? 俺子供扱いなの? 誰か~教えて~。俺この話の主役だよね? だよね? なんで蚊帳の外? アーンじゃないって。自分で食べるよ。どんだけ世話焼き好きなの?


「この話受けるともう冒険者でいられないんやな?」


「多分そうなると思う。良く分からないんだけど政治的な配慮やら争いやらに巻き込まれる。だから貴族家、ここではシュナイダーだけどに所属してほしいんだ」


「メル姐さん、あたしとライラなら姐さんの判断で良いよ。サラちゃんが旦那になるのも別にいいよ。おっさん貴族とかだったら嫌だな~とは思ってたけど」


「・・・サラやん。ほんまにルル助けてくれるん?」


「ごめん。絶対かどうかは分からない。施療師じゃないから万能薬を手に入れて使っても効き目がないかもしれないから」


「正直もんやな~。さよか。そうやな。そこまではわからんやんな~」


「・・・姐さん」


「マイヤ。ほな、いこか。サラちゃんあんじょうよろしゅうしたってや。これでもまだ生娘やねん」


「「「ええ~!!」」」


「なんやなんや。傷付くわ~、うちかてまだ200歳そこそこやねんからおかしないやろ? あれ? 人間の感覚やとおかしいんか? うちらエルフの感覚やとちょうど結婚適齢期やで?」


「「「・・・」」」


 そこからはもう大宴会だった。飲み食いして、夜中までしゃべってぐでんぐでんに酔っぱらってメル姐さんにベッドに連れ込まれて寝ました。もう酔っ払いイヤ!


 翌朝姐さんにがっしりと抱え込まれたまま目が覚めた。俺良く窒息しなかったな。姐さんの胸部装甲にめり込んだ顔を何とか引き剥がそうともがく。


 やん。やん。とか言ってるけどかまってられない。このままでは死んでしまう。くっ。足を絡めるな! 逃げられん。


 これが俗に言うギガマンティスの斧とか言う奴か!? ギガマンティスの斧はそんな弱そうに見えないけど・・・。


 姐さんごめん。このままだと本当に死んでしまいそう。胸部装甲に手をかけグイッと押しながら何とか呼吸を確保する。はあ、はあ。


 じーっと見降ろす視線を感じる。恐る恐る見上げるとメル姐さんと目が合う。


「やさしくしてくれな。あかんで」


「ち、ちが、違う! 呼吸できなかったんだよ。そ、それより離して」


「ありゃ。ごめんごめん。ちょいゆる~したるさかい、やさしくやで」


「・・・もう堪忍して下さい」


 やっと解放してもらったので、そのまま風呂に入っちゃう事にする。くっくっく。賢者だ。俺は賢者として目覚めた。先に入っちゃえばいいんだ。ガラガラー。扉が開く音がする。


「なんだ、サラもう入ってるのか。どれ、洗ってやろう」


 愚者だった。逃げ場がない。それも後ろを取られてる。必殺の体勢じゃないかー!


「おったおった。アン、ライラーおったでー。風呂に居るさかい入ってまお」


「「はーい」」


・・・これが愚者の愚者たるゆえんか。今はアンさんとライラさん二人に抱えられて風呂に浸かってる所だ。朝風呂は止められん。・・・良い湯だな~。


「ほいで、これからどないするんや? マイヤ」


「ん? サラ。どうする?」


「・・・まずは離してもらう」


「え~」「なんでよ~」「アンちゃんアンちゃん。離してあげようよ」とか声がする。やっと自由の身になった。およそ半日ぶりくらい。


「最初はルル姐さんを迎えに行こう。そしたら装備を整えに行く。もちろんルル姐さんの分もだよ。直ぐに復帰してもらうつもりだから」


「直ぐにやるのか? リュディーが成功してたらいいけどな」


「うん。でも1000枚も試せば成功するでしょ」


「何の話や~」


「へへへ。最初の条件直ぐクリアするための話。向こうに着けば分かるから今は気にしないで」


「ぶ~。ぶ~。まあええわ。勘弁したる」


 風呂から上がって朝食を済ませてからチェックアウトする。仲居のメイドさん達にチップを握らせてまたねって言っておく。


 支配人にも金貨を握らせて口止めとまたの再会を頼んでおく事も忘れない。迷宮都市にある施療院に向かうために辻馬車を拾う。


 アンジュが居たのと同じような作りだ。病室のベッドで静かに眠るルル姐さん。


「え! あれ、メル姐さん?」


「ああ、そやな。サラやんには言うてへんかったわ。うちの双子の妹なんや。そっくりやろ? 生まれてからずーっと一緒や。ふふふ。ユニゾンも出けるけど、実は結構性格はちゃうねん」


 そこに寝ていたのはメル姐さんそっくりのルル姐さん。見分けはつかない。顔も体格もそっくりだ。


「ルル、行くで」


 そう言って静かに寝ている女性を抱え上げる。外出着に着替えさせて、そのまま辻馬車で移動する。もちろん着替えてる内に支払いは俺がした。


 見てないよ! ・・・で、何でおれが抱っこさせられてるのかな? 男の仕事? おかしくない? こんなときだけ男になっちゃうの。


「ルル姐さんは確保した。次は装備だな。いくらなんでもその初心者装備のまま大森林には連れてけないかな」


「あんな。サラやん。うちらお金無いんよ。ルルの治療とこの装備整えるんですっからかんや。ここのところ稼ぎがなかったのもあってな」


「心配ないさ。姐さん。ここはサラの驕りで良い」


「そう言う訳にはいかんやろ。給料からひいたってや。前借で悪いんやけど」


「ふふふ。それでもいいけど俺らの財布は一緒なんだよ。お小遣い制で多少はみんな持ってるけど」


「ほら、これがお小遣いだよ。姐さん」


 マイヤがジャラジャラと金貨が詰まっている小銭入れ(・・・・)を見せる。


「・・・これが小遣い? マイヤさん、一生ついていきます」


 ビックリ眼の三人を尻目にマイヤが一言。


「全然減らないんだ。普通はサラが全部払っちゃうし、大森林に居る時は使うところがない。実は重いだけ。いざって時のために持ってるけどその内サラに預けちゃうかもしれない」


 マイヤでさえこれだけの金貨を持っているのだ。サラはいか程の金貨を持っているのか気になるのだろう。三人の視線が物語っている。


 見せろと。苦笑しつつ、マイヤのものより一回り小さい小銭入れを出して見せる。


「なんや、みんなに分けてもうたのか。小さなっとるやん」


 中を見てビクッとする三人。中に入っていたのは大金貨だ。


「今手持ちの全財産だよ。他の仲間はそれぞれお小遣い持ってるけどね。装備を整える位なら十分でしょ。気にしないで。直ぐに稼いでもらうから」


「どないな稼ぎしたらこんなにあるんや! 200年も冒険者やってるけど冒険者でも一流どころの稼ぎやないの」


「てへ。たまたま良い所に当たっただけで俺は冒険者やってるつもりないんだ。開拓者だよ」


 そうこうしている間に一流どころの武具屋に着いて装備を選ぶ段になった。


「じゃ自分の獲物申告して。アンとライラ思い切って片手剣卒業しても良いんじゃないかな。姐さん達はやっぱりレイピア? エストックとかどう?」


「そうやな? 刺突剣ならええよ」


「ふむ。双子だから双子剣とかあったらいいのにね」


「おお、ありますあります。ちょうど良いのが在庫にありますよ。バラバラにするのが可哀想でまとめて引き取ってくれる方以外はお断りしていたのです」


「へー。見せて。刺突剣?」


「刺突剣とはちょっと違うんですが、双剣にしては長めなのでなかなか買い手がつかないままでして。直刀です。銘を麒と麟で麒麟いいます。切っても刀なので切れ味は抜群ですし直刀なので刺突もいけます」


「貰った! 絶対それいいよね。魔法付加されてる?」


「もちろんでございます」


「後、そちらのお嬢様方には、フランベルジュとクレイモアなど如何でしょう。やや小ぶりに出来ていて大剣としては使い勝手が悪いとのことでこちらも人気がありませんが、片手剣使いなら十分でございます」


「あれ? マイヤの大剣はなんて種類?」


「グレートソードだ」


「そうなんだ。また違う剣なんだね。アン、ライラ見せてもらいなよ。それと防具一式。今俺が着てるのと同程度の奴。マントとマジックバッグも見せて」


 それぞれが武器を選んでから採寸にはいる。ルル姐さんの採寸が難しかったけど店員さんの助けでどうにかなった。


 今まで着ていた装備は処分してもらう事にして、全員が真新しい装備に着替えた。もちろんルル姐さんにも装備させた。


「よし。じゃあいいね。店長さん転移魔法をここで使わせてもらうけどいいかな?」


「どうぞどうぞ、シュナイダー様。またのお越しをお待ち致しております」


 にこやかにお辞儀をする店長さんに別れを告げて、全員が手を繋ぎ、ルル姐さんを俺が抱えた。一瞬の酩酊感の後、景色は一変して世界樹を正面に臨む大森林の拠点前に出現した。


「みんなは森に入ってるのかな? マイヤ、合図の魔法を打ち上げて! ルル姐さんを寝室に置いて来るよ」


「了解した」


 唖然と世界樹を見上げる三人をおいてさっさと行動を開始する。マイヤがファイヤーボールエクスプロージョンバージョンを天空に打ち上げ合図を送った。


 巨大な火球が天空めがけて走り、世界樹の枝葉を抜けて爆発した。これでみんなもその内戻ってくるだろう。


 ファイヤーボールに驚いた鳥達が一斉に飛び立ち、ヘビやその他の小動物が世界樹からぼとぼと落ちて来た。


「姐さん、そろそろ再起動して。これが大森林の秘密、世界樹と命の木の若木だよ。絶対に秘密だからアンもライラも頼むよ」


 ギギギと音がしそうな様子で三人の首がこちらを向く。口をパクパクと開け閉めして何か言いたそうだった。


「ああ、言いたい事は分かるけど、意味無いから。あるものはあるんだよ」


「サラ、ルル姐さんは大丈夫か?」


「うん。寝かせて来た。俺は世界樹の葉と命の木の葉を採取して来るから後任せるね」


「ああ、お茶でも飲ませとくよ」


 暫く見上げていそうなのを確認して、マイヤがお湯を沸かしに行く。お茶受けは甘いものと塩辛いものを用意すると思う。甘パンと干し肉だろう。


 俺としては甘いのより塩辛い方が好き。そだ! 今度は漬物も作ろう。きゅうりはどうなったかな? きゅうりの一本漬け。茄子の漬物も良いしな。


 今日は世界樹の葉っぱ、上の方まで行って取ろうかな。何となくそんなことを思い登坂を開始する。かなり上の方まで行った。大森林の樹林を越えて周りが一望できる。へー。


 こんなに高くまで来るのは初めてだけど絶景だ。南の方を見ると白い一本の道がずーっと海の近くまで続いてる。その途中に土煙を上げている一団まで見える。


 アンジュ達だな。早い早い。俺が居ないとあんなに早いんだ。それでも合流するまでにはまだかかりそうだ。あ、湖だ。あれも調べないといけないんだよな。なにが居るか分かりゃしないからな。


 あそこでも何か獲れるかな~。西の方には山脈。ミヤが絶対鉱脈があるって保証してくれたけど何の鉱脈かな~オリハルコンとかだったらボロ儲けなんだけど宝石でも良いな。


 大シュナイダー領も見える。あ~、すごい。村が4つになってる。水路まである。領都が街って言っていいくらいに大きくなってる。


 発展速度が早い早い。父様たち頑張ってるな~。俺も頑張らないと。おっと、こうしちゃいられない。収穫。収穫。


 今度みんなで一緒に見に来よう。絶景だからみんなも喜ぶと思う。色々な所から葉っぱを収穫しながら思う。・・・・・・そろそろいいかな。


 失敗したらまた取りにくればいいや。次は命の木の葉だ。ふぅ~。結構登ってたんだな。思ってるより時間がかかった。周りを見回してもマイヤ達はいない。


 ダイニングにもう行ったんだろう。早く収穫して合流しよっと。命の木の葉を収穫し終わる頃アンジュ達や姫さん達と合流した。


「サラ~! お帰り。結構かかったね。遠かった? 僕らの方は色々あったけど何とか無事」


「ただいま。みんな元気にまた会えてうれしいよ。遠かったよ~。でもある事実に途中で気付いちゃったよ。それも後で話すね」


「姫様達もお疲れ様。もうここの生活には慣れましたか?」


「うむ」「は~い」「はいであります」


「ふふ、毎日楽しいのじゃ。お城で閉じ込められてた頃なぞもう考えられん。今度果樹も植えておきたいのじゃ。なに、たくさんでなくともよい。一本づつくらいで色々な」


「もうティアが毎日はしゃいじゃって今日は何をやるんじゃ~って大変なのよ。お魚取りは結構お気に入りみたいよ。投網でザバーっと取るより釣りで獲る方が好き見たい。ふふふ」


 ヤルルーシカが報告して来る。久しぶりに会ったからみんな話したくてしょうがないのかな。


「サラ、サラ! 見つけたよ。触媒。やったー。まだ上手くいってないけど、これでいける筈なんだよ」


「ははは、ヤルル、リュディー分かったからダイニングで話そう。新しい仲間もいるから」


皆で連れ立って拠点までを歩いていく。

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