第二章第二十三話 南街道の整備
第二章第二十三話 南街道の整備
うーん。はぁ。何ーか疲れてるな。あれからお風呂に入って魔法の練習をしてから休んだ。今日はヤルルと一緒に寝てたみたいだな。手を繋いだまま寝てた。
ヤルルのほっぺにキッスをしてから手を離す。そのまま風呂場に行って顔を洗って歯を磨く。濡れたタオルで体を清めてから外に出る。
今日も良い天気・・・じゃないね。曇りでした。そろそろ雨期に入るかな。屋外キッチンでお湯を沸かす。今日は緑茶にしよう。結構高かったんだよな。ニコラスが何でも外国産だとか言ってた。
温めのお湯で淹れて、少し蒸らす。ホォ~。苦みの中に甘みがあって美味しい。前世の記憶では良く飲んでたお茶だ。皆も飲めるかな~。
ダイニングにお茶セットを持ち込んだら既にヤルルとアイダ姫は身支度が終わっていた。
「おはよう」
「「おはようございます」」
二人にも緑茶を入れてあげる。ふふふ。眉間に皺が寄ったと思ったら直ぐにホワァ~とした。最初の苦みで焦ったんだろう。その後の口当たりの甘さで美味しい事が分かるんだよね。
「どう? 緑茶は?」
「美味しいであります。初めて飲みましたが、苦みがあって苦手かと思いましたが最後の口当たりには甘みが残るんですね」
「ええ。口の中がすっきりします。温度も飲み易いですし」
「一番茶と二番茶ではまた味が違うんだよ。二番茶は苦みが強くなるからなかなか慣れないと無理かもしれないね。俺は濃い方が好きだけど」
チュッ、ハグ、スリスリ、ペタペタの朝の儀式をヤルルと終えた所でアイダ姫が割り込んでくる。
「あの私も良いでありますか? 一応仲間に入りましたので儀式に参加したいであります」
「うん? あんまり気にしなくても良いと思うけど、どうぞ」
チュッ、ハグ、スリスリ、ペタペタ。
今まで姫さん達には手の甲にキッスをするぐらいだったからチュッまで入ってビックリしたけど嫌じゃなかった。アイダ姫もちょっと照れてる。ほんのり頬が紅色だ。
「キッスしちゃいましたね。クスクス」
「はい。しちゃいました。お妃様ですから。クスクス」
二人でクスクス笑っちゃった。隣でヤルルも微笑みながら見てる。ちょっと照れちゃったからヤルルに抱きついてスリスリしてごまかした。ギュってし返されたけどね。
三人で朝のブレイクタイムを楽しんでいると他の面々が三々五々起き出して来た。目を擦りながらティア殿下とグリンダ公女がそれぞれアンジュとミヤに手を引かれてお風呂場に向かう。
まだ自分でやる習慣が付いてないから放っとくとベッドでずっと待ってるんだ。桶に張った水で顔を洗って歯磨きをしてから戻ってくる。その間甲斐甲斐しくアンジュとミヤが世話を焼く。
びしょびしょになってるけどマイヤがタオルをそれぞれに投げてあげてる。リュディーは朝が弱いからふらふらしながら何とか自分の事をしてる感じだ。
「おはよう。みんな」
「「おはようございます」」
「なんじゃ、なんじゃ。なんか雰囲気が変わった様じゃな。アイダ、なにがあった?」
「ふふふ」
チュッ、ハグ、スリスリ、ペタペタと他の皆とも確認し合う。姫様二人には片膝をついて手の甲にチュッとしておく。
「さては、アイダ抜け駆けしおったな」
「卑怯ですよぉ~。寝ているうちに何かしたんですねぇ~」
なんて二人に責められているけど「ふふふ」と余裕の笑みだ。皆が席に着いたのでまたお茶を入れる。そうしてしばらくのんびりする。
「さて今日もまずは周辺の魔獣の間引きをしてから、ダンジョンまで道を繋いでおこうか。本当は南の海岸線まで繋ぎたいけど、お塩はニコラスが仕入れて来てくれたからまだ余裕がある。急がなくても良いから早めに上がって収支報告検討会と行こうか」
「了解した。作物も植え直したから暫くは大丈夫だろう。今の内に進められる所は進めておくのも良いと思うぞ。自分達が暮らす領地だし、今までやってきた事がどうなったかは知りたい」
朝食は、白パンにハーブのサラダ、魔獣のステーキの目玉焼き乗せにコーンスープ。ステーキがなんの魔獣かはもう把握してない。
なんだか色々な魔獣のお肉があるからどれがどれだか、よく分からなくなってきちゃったんだ。ちなみに今日のお肉は若干癖が強い。
ガーリックソースで臭みを消してるから全然分からないけど焼いてるときにはちょっと獣臭かったな。
パンにも一応ガーリックバターを用意してある。そのまま食べても良いしガーリックバターを塗っても良い。お昼にはジャガイモでポタージュスープにする予定だ。
朝食を済ませてから世界樹の圏外までみんなで移動する。人数が増えたのでフォーメーションを考えようと思ったけど、2パーティー編成にすることにした。
まずは大森林に慣れてきたマイヤ達のパーティーを前方において、その後ろに俺を先頭にして3姫を配置する。
基本は人数の少ない3姫のパーティーに入るとして、俺は臨機応変にマイヤ達のパーティーをフォローしたり、3姫のパーティーをフォローしたりと移動できる位置に居るんだ。
と言えば聞こえがいいけどスキルがない、お荷物の俺を2パーティーでサンドして守ってる形だよな~。
いやいや、ネガティブになっちゃいけない。2パーティーを同時に操り、全体を見回す指揮官の位置。全員の面倒をみるちょー重要な要だろう。うん。そう思うことにした。
「マイヤ達は前方に集中していいから、後方はアイダ姫がお願い」
「「了解」」
この編成は大当たりだった。前後どちらにも進める上に隙がない。挟撃されても狭撃にならないんだよね。バックアタックもなんのその。
バックがあっという間にフロントに早変わり。特筆すべきは剣の姫ことティア殿下だ。アイダ姫が強いのはもう分かってたけど、ティア殿下も負けてなかった。
上位魔獣を単独で撃破できる。Cクラスなのはそもそもあんまり冒険に出れないかららしい。ぐるっと圏外を一周して、およそ200体ほどの魔獣を撃破。
一応もう一周することにして更に10体ほどを撃破して1時間位しか掛らなかった。南の農園に続く道に戻って、伐採を始める。
「ちょっと待つのじゃ! そなた達、そのエンチャントは・・・。なんじゃ?」
「これ? うん。これもサラがやりだしたんだよ。サラは魔法の師匠に附かなかったからイメージで魔法が変わるを地で行っちゃってね。エンチャントもただ武器の周りを覆うんじゃなくって、覆う魔力の形を変えてたんだよ。僕達も最初はビックリしたよ」
ビックリしているティア姫にミヤが説明してる。
「あらぁ~。だからってすぐに出来る様な事じゃありませんよぉ~? そんな斧みたいな形に魔力を変形させるのはぁ~普通出来ないですよねぇ~?」
「ふふふ、最初はちょっと難しいんだけどこれが慣れると出来ちゃうんだよ。ねえねえ、ミヤあれやってあれ。ビュッてする奴」
グリンダ姫にはリュディーが説明してる。さらに何か思いついたのかミヤに遠当てをやらせようとしてるみたい。
「ビュッて、リュディーあの魔力を飛ばす奴? いいけどじゃあ見ててね。はぁ~あ、はっ!」
ミヤが刃部分のみに発生させた薄い魔力刃を気合一閃振り抜く。振り抜いた魔力刃が前方に射出されて徐々に大きさが増していく。これには俺も驚いた。
「おお~。ミヤ! 大きくなってくよ。この間と違うじゃないか。俺もビックリだよ」
前にみた時は、エンチャントした魔力刃がただ勢いよく飛んでいくだけだったのに、今日のは前方に行くほど魔力刃が大きくなって行った。周囲の魔力を吸収しながら飛んで行っているらしい。
「な! エンチャントを飛ばすだけじゃなくて魔力吸収でありますか? どうやったらそんなこと出来るんでしょう」
うんうん。驚くよね。アイダ姫が愕然としてる。これは俺も知りたい。いつの間にミヤはこんな芸当が出来る様になったんだろう。
「えへへ~。僕も成長してるんだよ。とまあ、こんな風にエンチャントもイメージ次第で変えられることが分かったんだよ。姫さん達もがんばってみて」
そう言ってマイヤ達が伐採に戻る。斧型に変形したエンチャッテッドウェポンをブンブン振り回しながらどんどん南下して行く。
しばーらくあーでもないこーでもなと3姫たちがやっていたけど、だんだんコツが分かってきたみたい。まだ小さいけど斧型のエンチャントを作りだした。
「よしよしよ-し。出来たのじゃ。ではわらわも行ってみようかの」
「ちょっと待って下さい。その前にゴーレムもちゃんと出して整地作業やら枝打ちもやらしてからですよ。魔法の多重展開と移動しながらの魔法を覚えて下さいね」
「「「・・・」」」
「そのような無茶をお前様はあっさり言うが、多重移動展開をしながらエンチャントを変形させるのかや?」
「ははは、こんなのは慣れですよ慣れ。直ぐ出来るようになりますって。さあ、まずはゴーレム出して下さい。自身は枝打ちでもしてみましょうか。エンチャントは余裕があったらで良いですから。ゴーレムは限界まで出すのが早く慣れるコツですから崩れたら直ぐに再構成して下さいね」
「とほほ。まだ先は長そうじゃの」
一時間もやったら、もうゴーレムが崩れることはなくなった。まだ動きがぎこちなく魔法を維持しようとしてるけどそのうち気にしなくてもできる様になる。
次はゴーレムを個別操作させて色々な作業をやらせるようにしてもらわないとな。これは並列思考を覚えないと出来ないんだよね~。
「はーい。休憩にしようか」
マジックバッグに入れて来たお昼ご飯をぱくつく。食後のお茶をしながら午後からは並列思考でゴーレムを操ってもらう事を告げる。
「スパルタじゃの~。その次がエンチャントか?」
「そうですね~。その前にエンチャントで大木を切って魔力強度を確かめましょうか」
「魔力強度とな?」
「ははは、実際にやってみれば分かりますよ。エンチャントに十分魔力を乗せてないとパリーンってな具合に壊れますから。エンチャントに力を込め過ぎると途端にゴーレムが壊れたりしますよ」
「「「・・・」」」
「冒険者としては私の方が先輩であるはずですが、これでは逆ですね。教わる事ばかりです。ちょっと自信がなくなりそうです。Aクラス冒険者なのにクスン」
アイダ姫が何やらがっくりと落ち込んでいる。
「俺が教えられるのはここまでだよ。もう引き出しがないからね。流石に間引いてから伐採に入ったから魔獣にはほとんど襲われなかったね。午後からはまた寄ってくるかな~」
「午前中は時間もあまりなかったから軽くだったが、午後からはがっつり行くぞ。枝打ちの終わった丸太は拠点まで運ばせる。私達は遠隔操作だ」
姫さん達だけじゃなくマイヤ達もスパルタで行くつもりのようだ。魔法の指導なんかをしながらだった午前中と違って、がつがつと伐採を進めて行く。
途端に汗が吹き出しいつものように上半身裸組が増えて行く。
「なんですかぁ~! み、みなさんはしたないですよ。お、お胸が見えちゃってますよ」
「ふふふ。グリンダ公女、お風呂ではいつも見えちゃってるんだから一緒ですよ。周りには魔獣しかいませんから。汗で洋服が貼り付くから気持ち悪いですよ。脱いじゃった方が気持ちいです」
何気にヤルルーシカが答えてる。暫く考えていた3姫たちだが、それもそうかと納得する。ただし俺の方をちらちら見ている。
「え~と。なるべく見ない様にしますから、ご自由にして下さい。出来れば慎みは失わない様に」
「ははは、うそだぞ。がっつり見てくるからな。少し揺すってやると凄く喰いつくぞ。ははは」
「・・・」
マイヤったらなんてこと言うんだ。ジトーっとした目でそんなに見つめられても本能だから。俺の自由意志ではどうにもならないんだよ。だってだって生存本能の次くらいに強い本能なんだよ。
「しかたないですわぁ~。どうせもう見せちゃってる事ですし気にしないですのぉ~」
「っていうか僕達は見ても良いよって言ってるんだけど慎みがどうとかごちゃごちゃうるさいんだよね。きっと3姫さん達のは新鮮だからがっつり見て来ると思うよ。特にアイダ姫のなんて結構ボリュームがあるから好きだと思うな」
ミヤ! 余計なこと言わないで。伐採しながらそんな事を言って来るミヤ。
「そ、そんなことないよ! そもそも脱いじゃいけないんだよ。脱がなければそんな問題はないんだから。慎みを持って対応しようよ」
「ふふふ。私達のは見ていいから姫様達のは遠慮してあげなさい。ね、サラ。ほらこっちにおいで。近くに居た方が見易いですよ」
ヤルルに言われてプルプル揺れる双丘に引き寄せられる俺をガツッと後ろからアイダ姫が捕まえる。
「・・・どうぞ。見て下さい。揺らした方が好みでしょうか?」
上半身をはだけたアイダ姫がゆさゆさと揺する。おおーっ。胸元の汗が煌めいてうつくしい。っていやいや、みちゃだめでしょう。
俺ったら、俺ったら、どうしょうもないんだから。がっつりと見てからサッと視線をそらす。
「ほほぅーう。何やら朝から怪しげな雰囲気を醸し出しておると思うたが随分積極的じゃな~。真に第一妃を狙っておる様じゃな。ならば負けておる場合じゃないであろ」
「ですねぇ~。サイズで負けている以上ここで引き下がる訳にはいきませんわぁ~」
バッっとティア殿下とグリンダ公女も上着を剥ぎ取り、まだ成熟し切っていない双丘を顕わにしだした。まあ、揺すってもまだ揺れないんだけどね。
「いやいや、そこは張り合わないで慎みを持とうよ。マイヤー! だからもう止めようって言ってるじゃないか。みんな真似するんだから」
「ははは。見ても良いんだから問題ない。私達もお前の裸見てるんだからお相子さ。ちょっとなら触っても良いぞ」
「えっ。いやいや、触らないよ。もう。作業して下さい」
見ない様に見ない様にとしながらもガッツリ見てしまうサラにミヤが後ろから背中に飛び乗って来る悪戯を敢行する。
全神経が双丘にいってしまうサラにこれを避けるすべもなく、うひゃーッと言う変な声を出しながら当たってる当たってると繰り返すしかないサラ。
ヤルルとかアンジュが助けてくれるんだけどサワッと軽く触れるのはがっつり当たるのとはまた違ってまた堪らない。
ミヤ曰く早く警戒を生やさせるためにやっているとのこと。またこれを回避することで俊敏も生えると言っている。正論なだけに反論し難い。
こういうこと言うとジュディーが真似するんだよな~。案の定、目がキラキラしだした。ジュディーは上位スキルを持ってるからさらに厄介なんだよ。
普通でも分からないのに穏身なんかされたら全然分からない。天国のような地獄の時間を過ごしながら、ダンジョンがある辺りまで南街道が伸びたので脇道を作った。
ダンジョンの周りも切り開いておく。いずれダンジョンアタックもしてみなくてはならない。迷宮都市の様にこのダンジョンも領地経営に役立つかもしれない。
また魔獣がダンジョンからも溢れてくる可能性もある。本道に戻って、そのまま南下を続ける。ダンジョンのある辺りを過ぎてから徐々に魔獣の襲撃が増えて来た。
奥に行けばいくほど強敵が増えてきているようだ。警戒や索敵スキル持ちが複数いるので、近づかれる前に鎧を装備して対応できているが潜伏して来る敵も増えて来たので、そろそろ裸のままじゃ危ない。
「伐採速度は落ちるけど、そろそろ鎧を装備したままにした方が良くないかな」
「流石に鎧を着たままだときついな。防衛組と開墾組に分けて対応しよう。姫さん達、鎧を付けて警戒と迎撃を頼んでも良いか?」
マイヤが額の汗を腕でぬぐいながら言って来る。
「は~い。一時間交代くらいで良いかしらぁ~」
「そうね。警戒と迎撃は3人一組で三交代制でいきましょう」
ヤルルーシカの提案で交代制が決まった。こうして南街道の開墾を進めて行ったのであった。




