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第二章第一八話 姫様参戦①

書き溜めていた部分を放出することにしました。楽しんで頂けたらと思います。ブクマ、評価、レビュー、感想お待ち致しております。ぺこり。

第二章第一八話 姫様参戦①



 翌朝はカオスだった。お風呂も入っているし、ここのところ暖かくなってきているから抱き枕としての要望が減っているので俺への被害も減る傾向にあったのだが、ここで新たに3人が加わることによってカオス度が跳ねあがった。


 ティア殿下は中央部マイヤとアンジュをベッドにして横向きになって寝ている。グリンダ姫様はヤルルーシカと抱き合って寝ていた。


 被害が大きそうなのがミヤだ。普段人をいじくる癖に自分がいじられるのには弱いミヤがアイダ姫様に掴まっていた。


 なんか色々突っ込んじゃいけない所に手を突っ込まれて、あふぅあふぅ言いながら寝ている。さすがの剛力持ちミヤでもAランク冒険者の魔の手からは逃れられなかった様だ。


 俺とリュディーはいつの間にか両端に避難出来たらしく、安全を保っていた。俺はもぞもぞと起き出し、危険地帯を回避しながら、風呂場に向かう。


 身支度を整えてから湯を沸かし、パン生地を練り寝かせておく。絶品スープのために具材と水を追加し更に煮込んでいく。そろそろ一度スープを濾しても良いかもしれないな。


 あらかた準備が出来た所で、皆に声をかけることにする。


「おーい。お茶の準備が整ったぞ~。そろそろ起きろ~」


 ぞろぞろと皆が起き出して来る。今までの通り俺の前に来るとハグしてチュッ、ペタペタ、スリスリしていく。俺にとっては慣れたとは言い難いが、いつもの光景だ。


 どちらかと言うと自分の未熟を再認識する儀式に近い。これをやられると今日も気を付けて心配かけないようにしないとと思う。


 もうみんなの泣きそうな不安そうな独特の顔を見ることはしないと改めて心の中で誓う。キッスは最近別に加わった儀式だから良いのだがちょっと恥ずかしい。


 母様や姉様達にされるのとはちょっと違うんだ。リュディーも慣れて来たので普通にハグして来るようになった。しかしこの光景に慣れていない者達がいる。


「今度は何じゃ?」


 と言いつつも自分も並ぶ。グリンダ姫とアイダ姫も訳は分からずとも並ぶ。


「ははぁーん。分かりましたわぁ~。愛を確かめる儀式ですわねぇ~」


「うっ。い、一応キッスはそうなるのかな? でも安否確認に近いと思うよ。ほらこの中で俺が一番弱いし、守られる立場だったんだよ」


「ひひひ、サラは護衛対象から今の関係が始まったんだ。貴族の坊っちゃんの護衛だね。その後正式にパーティメンバーになってから急転直下側室候補になったんだよ。その頃に負傷から復帰したアンジュが戻ってきたりして真っ先に身も心も捧げたんだよね。僕たちを差し置いてだよ。思い切りが良いのがアンジュだけど早かったな~」


「致し方ないでしょう。あそこまで恩を受けてしまったら、この身だけでは足らないくらいです」


「ほう。恩とな? どういった経緯じゃ?」


 お茶を片手にマイヤが説明を始める。


「ああ、サラと知り合う前の冒険でポカをやらかしてな。ほとんど進退が極まってしまっている状態だったんだ。主戦力のアンジュは重症で、ほとんどの装備、道具を失っててな。アンジュの治療費に装備の買い替えと入り用でな。そこで一攫千金を狙って大森林に来たは良いけど、門前払いを食ったところで旅費ももう銅貨数枚しか持ってない状態でサラに拾われたんだ」


「そんなことないよ。俺だってその時は困っていたんだよ。一人立ちしなきゃならなかったんだけど魔獣が思いのほか強くて一人じゃ生き抜けそうもないし仲間募集では誰も集まらないし単身で大森林に挑んで朽ち果てるだけかもしれなかったんだから」


「私はその頃、帝都の施療院で生死の境をさまよっていました。左足と右腕を失う代わりになんとか命だけは助かったのですが、冒険者としても人としてももう終わっていました。あとはどこかの金持ちの妾にでもされて慰み者として生きるか安娼館で汚い男どもに春を売るくらいしか生きるすべがありませんでした。そんな時突然やってきたサラが、いきなりエリクサーを使ったのですよ。初対面の私に。あの時の私の気持ちは誰にも分からないでしょう。感謝してもしきれませんでした。もちろん仲間たちにもです」


「そんなことないよ~。あたし達が無事だったのは、アンジュが無茶してくれたお陰なんだから~。それこそあたしたちの気持ちも分からないでしょ~。本当に申し訳なくて、何とかしなきゃいけないのに悉く何も出来なくて治療費すら払える目処も立っていなかったんだもん」


 しょんぼり言うリュディー。続けてミヤが説明を引き継ぐ。


「僕らがサラに会ったとき、本当は選択の余地なんてなかったんだ。牽制のため相談してる風をよそおってたけどさ。正直貴族のお坊ちゃんの慰め者になってもお金が必要だったんだよ。でもサラはそんなことしなくてちゃんと真面目に大森林で成果を出したんだよ。おかしいと思ったでしょ? 会ったばかりの女たちがスリスリ擦り寄って来たりしてさ」


「そうか。そなた達はそれなりに濃密な関係を築いたのじゃな。そこに私達が謀略だの政治だので割り込む形になってしまったのは申し訳ない限りじゃな。されど私達にも譲れんものはある。サラが見つけた世界樹と命の木はそれこそ大戦の引き金になるくらいの利権を生むのじゃ。帝国としてはどうしてもそれを取り込む必要があったのじゃ」


「既に北の方はキナ臭くなっておりましたところにこの情報でしたので、周り中の国が虎視眈々と我が帝国を狙っています。そこに利権までもが絡んだとあっては直ぐにでも牙を剥きましょう。さすがに大戦は回避出来ないでしょうが、有利にことを進めなければなりません。離反する貴族を抑え全軍で持って対処できるように国内をまとめておかなければなりません」


アイダ姫が帝国を取り巻く現状を説明してくれた。大戦の火種を回避しようとしていた所に新たな火種を俺が投げ込んじゃったらしい。もう回避不能は覚悟しているのが現皇家の見方なんだな。


「別にシュナイダー家を疑ってはおらん。愚直なまでに忠義者じゃからな。しかし確実に取り込む必要があったのもまた事実じゃ。国を滅ぼすくらいならこの身を捧げる事などどうということもない。本当は第一皇女の婿として迎えることも検討されておった。光の皇女じゃが年齢が釣り合わん。それに婿では大森林を抑えられんかった。唯一人大森林を開拓してのけたのはサラ殿だけじゃ。色々と幸運が重なっておるのじゃろうがどんな強者であろうと不思議なことに誰も維持してこれた者はいない」


「サラ殿をぉ~失ってしまうと誰も近づけなくなってしまうのですよぉ~。でもサラ殿でなければぁ~成果を出すことすらできないのですぅ~。剣の姫や聖女はまた現れてもサラ殿の代わりがまた現れてくれる保証はどこにもないのですよぉ~」


「え~と。俺は別に特殊なことは何もしてないのですけど、なんか選ばれた人間みたいになっちゃってません?」


「そこが不思議なんですよぉ~。わたくしとて聖女とまで呼ばれていますけどぉ~。ご神託が有った訳でもないしぃ~。特殊なオーラをまとっている訳でもないのですねぇ~。普通の男の子に見えるんですよぉ~。恐らくぅ~サラ殿がいないままあなた達が大森林に分け入っていたらぁ~、帰ってこれなかったはずなんですよぉ~」


「でも皆がいない状態で、俺だけで分け入っても帰ってこれなかったと思うよ。最初のブラックスネークだっけ? にあっさり食べられちゃってると思うんだ。その後も何回も死にかけてるしぎりぎり皆に助けられてる感じだぞ」


 なんか朝のティーブレイクが情報交換の場になっちゃったけど、それぞれいろいろ事情を抱えてるんだな~なんて思ってしまった。


 それこそ俺の理由が一番お気楽なのではないかと思う。ダメなら違うとこ行けばいいや程度だったからな。


 空気が重くなってきたのでことさら明るく、食事にしようってことになった。昨日に引き続き大森林産の食材でお魚も使ってみた。ハーブで作ったサラダにマヨがけ、真ん中にはポテトサラダをちょこんと乗せる。ふふ、極上スープに極めつけはクロワッサンを作ってみた。前世の記憶では俺が最も好きだったパンの一つだ。


「さあ、食べよう。今日は初めて作ったパンだ。ご賞味あれ」


「なにこれ! なにこれ!? こんなパンは初めて! サクサクで中はもっちり。こんなの見たことないよ」


 いきなりリュディーが反応した。


「・・・! これは帝都にもない、新しいパンじゃな。大したものじゃ。お前様はこんな物も考案できるのじゃな」


「ここに来て、食事には驚かされてばかりであります。いえ、食事だけではありませんね。家は粗末なのに風呂があったり、大した能力もない様でいてまったく新しい物を考えつく上に大魔導士でも習得していない転移魔法を解明していたりとどうなっているのでしょうか」


 前世の記憶を頼りに作る物は、驚かれて俺自身が何かした場合は大したことないと。まるでちぐはぐなんだな。確かにその通りだ。


前世の知識も含めて俺なんだからしょうがない。そんなことよりもこれからの事だ。今日は収穫をメインにして俺が転移でピストン輸送しながら出荷だな。


「ははは、また何か考え付いたらお披露目するよ。それより今日の事だけど作物の出荷をしてしまおう。今回は他にも種を持って来てるから、作付のことも考えないといけない。そうすると一応この領地の経営をどうするかの話にもなるんだけどね」


「出荷ですかぁ~。この横の小山の様な作物を売るんですのぉ~?」


 グリンダ公女の疑問にアンジュが答えた。


「それだけじゃありません。南側に農園を作ったのですがそこでまだ収穫しきれていない作物を魔獣と闘いながら収穫してこなければなりません」


「そこでなのですが姫様方。我が領地には今現在ここに居る9人しか人材がおりません。そこそこ腕には自信がおありだと思いますので是非ご協力下さい」


 俺の協力要請に直ぐに反応したのがティア殿下。うん。魔獣と闘いたいんだな。剣姫だもんな。


「任せるのじゃ! 我が剣の錆にしてくれようぞ」


「アイダ姫はともかく、お二人の実力が分からないから、マイヤ危険かどうかよく見極めながら作業をお願いするよ。俺は転移で出荷の方にかかりっきりになるだろうから頼むね」


「ああ、そうだな。こっちには、ヤルルーシカを付けよう。絶対にここまで魔獣が来ないという保証はないからな保険だ。私達の方には聖女様がいらっしゃれば大抵の傷は癒してくれるだろうから」


「ならば私達のマジックバッグも供出しよう。より早く出荷が終わるようにじゃ」



     ◇     ◇     ◇



 朝食もがっついて食べた後、それぞれ持ち場に分かれて作業することになったのじゃ。私達新参組も農園に連れて行かれたのじゃ。


 見渡す限りの小麦畑とかを想像しておったのじゃが、こじんまりとした農地に大きな作物がぼこぼこ生えておった。


 小麦でさえ2m位はあるのじゃから押して知るべしじゃ。しかし農園自体は小さいの。目の前にはその農園が4面作られておる。


 ここは既に収穫済みでスイカとトウモロコシがいくつか収穫出来てお終いじゃな。私達新参が残り物を収穫してる間に他の連中が地面を耕してしまいおった。


 次じゃ次。てくてくと小道を少し歩いてまた開けた場所に出る。ここももう収穫済みじゃった。ここでも同じように残り物を収穫して耕してしまう。


 その次じゃが、ここからは未収穫ゾーンじゃ。おお、鈴生りじゃ。このトウモロコシ何m位の高さなんじゃ~。


「よーし、ここから本格的な収穫だ。ここはもう魔獣が出るから収穫しながらも警戒は解くなよ。いざ襲撃があったら直ぐに集合して全員で対応すること。まずみんなマッドゴーレムを製作してくれ。マッドゴーレムに収穫させるぞ。姫さん方はここで待機してゴーレム達が収穫してきた作物をマジックバッグに収納してくれ」


「う~む。私達も手ずから収穫と言う物をしてみたいのじゃが」


 このままでは収穫と言う物を体験できん。お願いのポーズを取っておねだりしてみるのじゃ。


「そうか。分かった。交代でやろう。最初は見ててくれ。どうやって収穫するかとかどれが収穫できるのかを見ててくれよ。ではゴーレムにはスイカの収穫を念じてくれ」


 4面ある農地からゴーレムが1.5m~2m位の巨大スイカを数体掛りで運んでくる。おいおい、いったい何個収穫して来るのじゃ。


 おお、マイヤ達がバビョーンってな感じでジャンプして上の方になっているトウモロコシを掴んだと思ったらその根元を鎌でスパッっと切り離しよったぞ。


 ふむふむ。ゴーレムが届かない様な上の方はジャンプして収穫するのじゃな。まるでバッタじゃな。ぴょんぴょんとよく跳ねおる。


 おおっと感心しておる場合じゃない。以外とゴーレムの収穫が早いぞ。早く収納せねば。こちらに持って来たマジックバックは私達が持って来た3個のみじゃ。


 ふむ、同じものを集めておいた方が良いじゃろう。アイダお主はマジックバッグの口を開けて持っておれ。どんどん入れるぞ。


 私達のマジックバッグの方が性能が良い様じゃな。一つで100個は収納できる。およそ倍の性能じゃ。


「既に一つ目がいっぱいになった様じゃ。まだスイカも残っておるが、二つ目にはトウモロコシを入れるとしよう」


 二つ目のトウモロコシも一杯になった様じゃ。最後の一つには、枝豆じゃない様じゃな。これは恐らく大豆にするのじゃろう。乾燥待ちか。


 明日の収穫と。そうか前の二つの農地で枝豆は収穫済みなのじゃな。ならば大蒜か。これは引っこ抜くだけと。相変わらず大きいの。


 あっという間に満タンじゃ。マジックバッグを持って一度戻るのじゃな。なに! ゴーレムは働かせ続けるのか!? 遠隔操作なぞ、普通の魔導士でも高等技術じゃぞ。


 それも複数を操ってだと! こ奴ら出来る!! ぺしっ。コラ、遊んでないで集中しなさい。ゴーレムが土くれに戻ってますよ。くっ。アンジュめ容赦がないの。怒られてしまったのじゃ。


 ふははは。アンジュ良かったな。とうとうお前も怒る側になれたな。なんぞとマイヤが笑っておるが、そうかアンジュだけがけがで合流が遅れていたのじゃな。


 つまりこのゴーレムの多数操作や遠隔操作はここで身につけた技術と言う訳か。ならばわらわとて身につけて見せようではないか。


 この後、三姫たちはアンジュの厳しい指導に泣きが入るのである。

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