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第二章第十五話 帝都再び

作者モチベーションこう維持向上のため評価・感想、レビューなどお待ち申し上げております。何卒よろしくお願い致します。

第二章第十五話 帝都再び



 準備を整えて、直ぐにでも出発する段取りだ。初めての長距離転移だ。若干緊張するが大丈夫だろう。既に転移自体は何回も行っているし、今回は一人で行く。


 パンパンに詰め込まれたマジックバッグを5個持っていく。どうせ行くなら狩猟品も全て持って、帰りに色々仕入れて来いとのことだ。


 拠点では一個のマジックバックでやり繰りするから持てるだけ持って行って来いって。


「じゃあ、行って来る。出来るだけ早く戻ってくるから。後の事はよろしく」


「ああ、任せろ。収穫も貯蔵庫や氷室の拡張も領地の拡大もやっとく。安心して行って来い」


 後の事をマイヤに託して俺は跳ぶ準備を始めた。遠見の魔法で実家の庭を見る。何もない事を確認して魔力線を通していく。


 よし、通った。自分を魔力の膜で覆って、後はニュルっと行くだけだ。――ニュル。軽い目眩を覚えて辺りを見回すとそこは既に実家の庭だった。成功だ。これで行き来が楽になる。


「父様~! 戻りました~。あ、母様。ただ今戻りました。父様はいらっしゃいますか?」


 母様に一通りハグされてから執務室の方へ向かうと父様とカラナムのおっちゃんが書類作業に悪戦苦闘していた。


「うん? サラか。どうした、もう狩猟品を売りに来たのか? そうか、もうそんなに経つか」


「はい。狩猟品と産品を売りに来ました。陛下からも度々献上せよと内々におっしゃっていたので」


「そうだな。どれ見せてみろ。前回とそうは変わらんのだろう?」


「多少違います。まず例の葉が100枚づつ。グレーハウンドウルフの良いのが手に入りましたよ。黒毛です。確か神王国で白いのがお妃さまに献上されてましたよね。それに劣らない逸品ですよ」


「ほう。そいつは凄いな。カラナム、他の狩猟品をまた捌いてやってくれ」


「へい。坊っちゃん、結構な稼ぎになりやすよ。任せといて下さい」


「うん。頼むよ。それと試験的に農業も始めまして収穫が上がったのでこれも陛下に献上しようと思うのですがどうでしょうか父様?」


「もう収穫が上がったのか。早いな。前に聞いていた通り、生長が早いのだな。どれどれ。・・・なんだ! これは?」


「てへ。普通の種で育てたんですが、こんなに大きくなりました。味見もしたんですけど絶品ですよ。それでですね。ちょっと困った事がありまして、出来過ぎちゃったんですよ。ですので陛下に献上して、味見してもらえば評判を呼ぶんじゃないかな~なんて」


「・・・また厄介事ですかい。坊っちゃん、もう少し手加減して下せえ。過労で死んじまいやすよ。今でさえ仕事が山済みなんでやすから」


「うん。父様のところの麦と大豆は全部売り払っちゃってよ、うちの麦と大豆を納めるから。うちの麦の方が絶対美味しいからここの麦売れなくなっちゃうかもしれないからさ」


「・・・どのくらいの量なんだ? 我が領でも捌き切れない程か? ん?」


「てへ。分かんないんだけど追加も出来るから飢えることはないと思う。あ、これうちの小麦で焼いたパン食べてみて」


「!!! こりゃあ~」


「カラナム。在庫は全て売り払え。急げ。売れなくなる前にどんどん売っちまえ。領民から根こそぎ買い取って売り払え。急げよ」


「へい。ちょいと失礼しやす。行ってきまさぁ」


「あ、カラナムのおっちゃん。牛とか馬とか羊とかも購入したいから集めて。ニコラスなら何とかなるでしょ」


「承知しやした。数の方は、適当に注文しときやす。大分支払いが滞ってやすからそっから差っぴかせまさ」


「・・・サラ。では、帝都に行くか。先頃設置した転移陣を使う」


 そこからの動きは慌ただしかった。帝都に転移して直ぐにシュナイバッハ候に面会して謁見の段取りと試食会の手配を頼む。


 帝城の料理長に食材を渡して試食を依頼してから、またシュナイバッハ候との面会だ。例の葉っぱを卸して、グレイハウンドウルフの狩猟品も見せる。


「これらは・・・直接献上なさるのが良いでしょうな。これで神王国の大臣達に大きな顔をされないで済みますな。ふむ。料理の方はどうでしょう。午後には出来ますかな。ふむふむ。では、午後にでも直ぐ謁見と行きましょう。急いだ方が良いでしょうからな」


「はい。シュナイバッハ候。度々ご面倒をおかけ致します」


「いやなんの。せっかく設置した転移陣を有効に活用して頂いて頼もしい限りですな。帝国の食料事情も多いに潤います。今までは南部は消費するばかりで、ほとんど利益が上がっていなかったですから大歓迎です。税収も潤って万々歳です。大豆と小麦、トウモロコシなどは輸出量を増やせますからな。」


「ありがとうございます。では、私どもは一旦城下町に戻りましてご使者を待ちます。後ほど」


 転移が出来る辺りまで移動して帝城を後にする。いつもの宿屋に宿を取り、父様は待機。俺は仕入れに走る。帝都ならば見たこともない種が入手できるので数粒づつでも入手しておく。


 今回も儲けが大きそうなので、各種の酒類や鏡など贅沢品を入手しておく。お土産と万が一の贈答用だ。


 おっと。ヤバイ。直ぐに戻らないとご使者が来て謁見が始まっちゃう。転移で宿に戻ると直ぐにご使者がきた。ぎりぎりだ~。


 そのまま帝城に連れていかれて謁見の運びになるらしい。おお。いつも手続きで時間を取られる城門も素通りだよ。流石は皇家の家紋が付いた馬車だ。


 今回はそのまま謁見の間に通された。午後の予定は俺達だけだったらしい。また赤絨毯の上を歩いて謁見の場の中央付近で片膝をついて首を垂れる。声がかかるまでは床を見て待つのが仕来たりだ。


「おお、ミゲルに、サラ、よう来た。この間の謁見から随分早い謁見じゃな。またぞろ何やら献上品があるらしいな。楽しみにしておったぞ」


「はっ、陛下にはお変りもなく、健やかなご様子。誠にお喜び申し上げます。また度々の謁見申請にもかかわらず拝謁の栄を賜りまして誠に感謝の念に堪えません。息子ともども恐悦至極にございます」


「若輩もにもかかわらず拝謁の栄に浴します事、感謝致します」


「よいよい。普通に話せ。して今回は何を持って来た?」


「はっ! サラお披露目致せ」


「はい。こ度は大森林にてグレーハウンドウルフの良物が手に入りましたのでお妃様のコートや懐剣に良いのではと思いまして持参いたしました」


 そこに、侍従やらが台座に広げられたグレーハウンドウルフの毛皮やら牙、角を掲げて静々と入ってきた。


「うむ。グレーハウンドウルフの狩猟品はなかなか手に入らぬと聞く。有り難く頂戴しよう」


「はっ! こ度の群れのボスは毛色が違いまして彼の神王国にある白毛に勝るとも劣らないと自負致します。我らの拙い加工技術を用いるよりは帝都の由緒ある加工職人に嘗めして頂くが良いと思いまして下処理だけで持参致してございます」


 またそこに黒いグレーハウンドウルフの狩猟品一式が乗せられた、ひと際大きな台座が運び込まれた。


 さすがに神王国で毛色の違うグレーハウンドウルフがお目見えして以来、二頭目の毛色違いが入場し、場にどよめきが起こった。


「なんと! 毛色違いを仕留めてまいったか。これは大層な献上品じゃな。ミゲル、サラ両卿には格別の褒美を取らせよう。シュナイバッハ、何が良いかの?」


「はっ! 前回に続きましての活躍でございます。両名には帝城への入城にいささか難がございましょう故、男爵位をお与えになればよろしいかと愚考致します」


「前回に続きまた陞爵か。ちと早くはないかの?」


 難色を示す陛下。どうやらこれは演技らしい。他の貴族が良く思わないだろうから、難色を示してみてそれでも陞爵に値することを認めさせる手順だ。


「しばらくしばらく。まだ献上品は終わっておりませぬ。サラ早く続きの品をご覧致しなさい」


「はい。大森林を拝領致しまして早速彼の地で産出致しました作物を持参致してございます。出来ますれば陛下にもご試食いただければ幸いにございます」


 大きな台座を数人がかりで運び込みその布が取り払われるやまたも謁見の場にどよめきが起こった。


「なんと! これはなんじゃ。随分大きいな。この様な物が存在致したか? シュナイバッハ、そちは見知っておったか?」


「いえ、某でもこのような作物は見たことも聞いたこともございません。小シュナイダー卿、これはどうしたことだろうか?」


「はい。これらはどれも普通の作物でしたが、滋味豊かな大森林で育てた所この様な大きさに育ってしまいました。特に麦などは脱穀する手間も製粉する手間もかからず、殻籾も混じりません」


「これらの作物、味も逸品でございまして別に料理長にお願いした試食品をご用意致してございます。陛下にはそのお味も確かめて頂きたく存じます。また列席している各々方(おのおのがた)にもお裾分け致して頂ければ幸いにございます」


「うむ、料理長まで巻き込んでおったか。抜かりないの。毛色違いにも驚かされたが、巨大作物は更に驚いたぞ。見た目は十分じゃが、しかし味じゃな問題は! どれどれ運びこめ。早速皆でその味を確かめてくれようぞ」


 謁見の間に運び込まれたのはシンプルな料理だった。料理長曰く、まずは作物本来の味を確かめるため敢えてシンプルにしたとのこと。


 後ほど手の込んだ料理も運ばせるとのことでまずはそのまま試食会と相なった。


 料理長も唸った食材の数々である。居合わせた重臣の方々も二の句が継げない様子で貪り喰う様に食した。さらにその後に運び込まれた手の込んだ料理に至っては至福のひと時であった。


 かく言う俺もこれは流石に度肝を抜かれる料理であった。こんな料理初めて食べた。美味過ぎる。後でレシピを貰おう。


「まっこと美味い。なんじゃこのパンは! 今まで食していた物が食べ物とは思えなくなってしまうぞ。かっかっかっ。ここまでされては陞爵せずばみなも納得できぬであろう。大躍進じゃなミゲル、サラ」


 ここで宰相が口をはさむ。


「陛下。これは帝国の食糧事情が一変してしまいかねません。国務大臣とも協議致したく存じます」


「であろうな。してこれらはどのくらい出来るのじゃ?」


「はっ! 未だ試験的な所をでませんので十分には供給出来かねます。なんとも場所が大森林でございますれば、人を入れることもかなわず、シュナイダー騎士爵とその従士たちのみで作っておりますゆえ」


「うむ。致し方ないの。作っただけでも大したものじゃしな。多少は流通させられるか?」


「はっ! 我が領と帝都位ならば多少は・・・。我が領におります商人に上納する手配を致しております」


「うむうむ。ならば帝城にも納品するよう申しつけるぞ。この位の特権は許されよう」


「はっ! 心得ましてございます」


「さてさて、褒美は如何致せばよいか悩ましいの。シュナイバッハめは先の毛色違いで男爵と申しておったな。ではこちらの作物も加えると如何致す?」


「ははっ! ならば一気に陞爵するは両卿もいささか準備が足りないかと。故にこ度は男爵までと致し、領民、騎士団などが揃い次第子爵への陞爵の二段階では如何でしょうか。人を集めるだけでも一年二年は時間がかかりましょう」


「よかろう。シュナイダー騎士爵は子爵へ、シュナイダー準男爵は伯爵へ陞爵すること約束して今は男爵じゃ。シュナイバッハとよう相談して領地の発展に励め。これにて謁見を終了する。皆大義であった」


「ははーっ。有りがたき幸せ」


 また陞爵してしまった。あんまり偉くなるといろいろ面倒事が増えて嫌なんだけどしょうがないな。


 それにして領民もいないのに男爵になってしまった父様に並んじゃったよ。この後どうすればいいんだろう?


 謁見が終わった後は直ぐシュナイバッハ候に呼び出された。今後の事を打ち合わせるためだ。男爵になったらそれなりの騎士団を作る必要があるらしい。


 父様のところはどんどん領民が増えてる所だから良いとしても俺のところは人増やせないからな。


「サラ殿のところは、ミゲル殿のところの騎士団預かりとするしかないであろう。何分まだ人が増やせぬからな。例の件で信用に足る人物だけ徐々に増やすことは認めよう。来年には例の件も公表致す所存だ。さて、陞爵に伴う支援金とこ度の報奨金じゃが結構な額になる。証書を出しておく故、ギルドか教会から受け取ってくれ」


「「ありがとうございます」」


 こうして立て続けに陞爵をはたした父様と俺は逃げる様に帝都を後にした。他の貴族からの招待やらとそれは凄い事になったからだ。


 今回生じた利権だけでも凄い事になる。産品の輸送路となるかならないかだけでもえらい違いなのだ。人の流れももう南部に流れ込むように増え続けているらしい。


 開拓者、商人、冒険者は元より傭兵や陪臣、文官、貴族の次男坊以下、騎士崩れや娼婦など色んな人種が定住希望を出してくる。俺んとこ? もちろん来てるよ。


 でも条件が父様の領地で一定以上の年数を過ごしたものまたは俺本人がスカウトしたもの以外は入領すら出来ない事になっている。


 さっさと転移で実家に戻ると、何やら家の中が騒がしくなっている。父様と顔を見合わせてから思い切って広間に行く。


「今帰った。何事だ。騒がしいぞ」


「あ、あなた! やっと帰ってきたのですね。まあ、まあ、どうしましょう」


「落ち着け! 何が有った? 話してみなさい」


「ええ、ええ。サラも一緒なのね。ちょうどよかったわ。姫様がいらっしゃってるのよ。聖女様と近衛の騎士様も」


 どうやら波乱はまだ続く様だ。なんで姫様がうちみたいなおんぼろの家になんかいるんだ。

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