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第二章第二話 遅れてきた仲間

止まっていた神代の迷宮も再開したため、交互での更新になるかと思います。更新速度が遅くなりますがよろしくお願いします。H話が多い神代の迷宮ですがご興味のある方は一読のほどよろしくお願い致します。作者モチベーション維持向上のため評価感想、ブクマなどして頂けたら幸いです。宜しくお願い致します。

第二章第二話 遅れてきた仲間



 マイヤ達が部屋に入って静かに声をかける。やっと気付いたのか弱弱しく微笑みこちらを向く。


「みな、来てくれたのですか。忙しいでしょうに。ありがとう」


 ミヤがふるふると首を振っている。ベッドに腰掛けている彼女の右の袖が風になびいている。袖の中身がない! 左足も同様だそうだ。


 仲間を身を挺して庇った結果、魔物に溶かされてしまったらしい。これでは生きていくのも一苦労、ましてや冒険者などもう出来るはずもない。


 しかし彼女は凛としてまっすぐ前を見ている。気高き魂がそうさせていると分かる。マイヤが新しい仲間だと俺の事を紹介してくれた。


「サラ・シュナイダーだ。よろしく」


「・・・アンジュだ。」


「では、アンジュ申し訳ないが時間がない。あーん」


 不審げに眉根を寄せて俺の行動を見ているだけのアンジュ。俺はすたすたと近づいていき、なんだっと言って開いたアンジュの口に小瓶を突っ込む。


 突然の事に目を白黒させるアンジュ。口に突っ込まれた小瓶はスーと大気の中に溶けて消えて行った。その瞬間彼女の体が光の粒子に包まれそして何事もなかったようにアンジュがいる。


右手(・・)で俺の胸倉を掴んで、貴様! とか怒っている。


「こ、これは!? 私の右手! 足も! ・・・どういうことだ?」


「サラ!! 使ったの!?」


「使ったよ。なんで? 皆の仲間なんでしょ? 今使わないでいつ使うのさ」


 アンジュを巻き込んで皆が俺に抱きついて来る。訳が分からなアンジュは戸惑っているが、されるがままだ。


「さあ、時間があまりないんだ。アンジュ行くよ。着替えて出発だよ。マイア、ここの支払いを済ませて来て、アンジュは今日で退院です。これで。お釣りはいりませんから余計な手続きもカットしてもらって下さい」


 と言って金貨を渡す。着替え終わったアンジュを人目に触れさせない様にしてさっさと施療院から連れ出す。次に向かったのは武器と防具の店。


「すいませーん。武器防具を皆に一揃いお願いします。魔法付与されている品をお願いします。俺の武器は刀で良いのを見つくろって下さい。皆も自分の主要武器を申告して。あとこれ、陛下がお見せしろとおっしゃってました」


「!!! ・・・承りました。こちらへお越し下さい」


 陛下に渡された紋章の刻まれたコインの効果は絶大だった。俺達は個室に案内され、上等のお茶とお茶受けで歓待された後、次々と装備が運び込まれる。


 どれも一級品だ。おれはヒヒイロカネ製の太刀それも長い。銘は長刀村雨その刃からは氷の結晶が生まれては消えている。氷属性のエンチャントがかかっている逸品。


 マイヤはもちろんグレートソード。オリハルコン製で風のエンチャント付き。ミヤはハルバード。刃はオリハルコン、柄はミスリル、石附はダマスカス鉱。


 石突きに爆炎の魔法が封じ込められて、刃には炎のエンチャント。ヤルルーシカは両手用のメイス。先端はオリハルコンの塊。柄はミスリル、水のエンチャント付き。


 リュディーはレイピア、風のエンチャント付き。もちろんオリハルコン製。アンジュは双剣、炎と水のエンチャント、オリハルコンとヒヒイロカネ製だ。


 それぞれ防具に関してはあとのお楽しみ。購入したのは鎧上下、ブーツ、ガントレット、額にはサークレットそれぞれ魔法付与がされている。


「あとマジックバッグはありますか?」


「はい、ございます。人数分用意致します。それぞれ収納可能数は50個のものとなっています」


「ではお代はおいくらでしょう?」


「お代は既に頂いております。先にお渡し頂いたコイン、あれは全ての費用を皇家が負担する証にございます。滅多にお目にかかれません」


「えっ! 参考までにどのくらいかかっているのでしょう?」


「さて、金貨二万枚程でしょうか。随分と御遠慮なさいましたな。マントの方は当店からのサービスにございます。当然魔法付与品をご用意させて頂きます。またのご利用をお待ち致しております」


 思わず頬が引きつってしまった。やってしまった物は仕方ない。続けて魔法屋に行く。


「すいませーん。転移の魔法って買えますか」


「ほっほっほ。入って来ていきなり転移の魔法を所望とはなかなかに剛毅な方ですな。ありますとも。金貨一万枚でお譲り致しましょう。取得出来る事をお祈り致しております」


 魔法屋では即金で金貨を払って、魔導書と言う奴を購入した。本当は値切りたかったが、今回は時間がなかったので言い値で買ったのだ。


 魔導書は高名な魔法使いが自身が取得した魔法の取得方法やコツが記されているものである。この書籍があれば何回でも取得は試みる事が出来る。


 朝から駆けずり回って、ご飯抜きで夜までかかってしまった。急いで宿に戻る。父様は既に戻っており出発の準備まで整っていた。


「父様。お待たせしてしまいましたか? 申し訳ありません。してその格好は?」


「うむ、直ぐに立つ。どうやらもう他の貴族に目をつけられた。思ったより早い。準備は良いか? 宿は引き払う。行くぞ」


「皆手荷物を持って、どうやらこのまま逃げださないといけないみたい。てへ。想定通りだったね」


 四頭引きの馬車に乗り込み一路南部辺境に逃げ帰る。帝都を抜け南部街道に入った辺りで我慢しきれなくなった皆が説明を求めてきた。


 特にアンジュは施療院から有無を言わせず従わせて来たから、なおさらだろう。ガタガタ揺れる馬車の中、口火を切ったのはヤルルーシカ。


「サラ、どうなってるの?」


「うん。大森林以南を所領にして騎士爵に叙爵された。父様は準男爵に陞爵された。皆も帝国騎士に叙任されたから。はい、これ勲章。準騎士爵扱いになるからそのつもりで」


「なんでそんなことになってるの!?」


「うん。俺達が思ってるよりエリクサーと万能薬の発見は大事だったよ。今までは聖王国の独占品だったんだって。あ、このことはしゃべっちゃ駄目だよ。拉致されるか殺されちゃうからね」


「「「・・・」」」


 あまりの事に開いた口がふさがらない様だ。俺だって驚いたよ。父様はある程度分かっていたようだけどね。


「・・・これからどうするの? いえ、どうなるの?」


「うん。やることは変わらないよ。南部大森林の開拓。難しい事は父様と陛下でするみたい」


「「「・・・」」」


「え~と。僕たちもう冒険者じゃなくなっちゃったのかな?」


「いや、冒険者のままだよ。準騎士であり、開拓者でもある。そうそうシュナイダー騎士爵の従士でもあるね。一応貴族の端っこだよ。この辺は強制だからね。拒否権はありません」


「なるほど。私に使った薬はやはりエリクサーだったんですね。なぜ私に? 大変高価な物と聞いています。初めて会った私にそんなに簡単に使える様な品物ではないはずです」


「ん? 彼女たちの仲間だからだよ。彼女達のことは信じてる。彼女達が信じて心配してる仲間なら間違いないから」


 アンジュはため息を一つ洩らすと。


「ふぅ~~。私に何か言う資格はないですね。恩恵の方がはるかに大きい。何せもう一度生きていけると思ってしまったから。身も心も全て捧げましょう。改めてよろしくお願いします。サラ」


「ど、ど、どするの。アンジュが了承しちゃったよ。僕も良いけど、ほら、こんなすごい装備貰っちゃったし。み、み、身も心もさ、さ、捧げちゃう?」


 なんか真赤になってそんなことを言いだすのはミヤ。微妙にズレてる気がしないでもないが。


「落ち着きなさいミヤ。私達に選択の余地はないと言っていたでしょう。問題は私達が納得するかしないかですよ。身と心は大事に取っておきなさい」


「え~。でもアンジュが・・・」


「ちょっと待って、身と心は置いておこうよ。大事なのはそっちじゃないよ」


「そなの? そこ大事じゃない? 触らしてあげるのと捧げちゃうのは大分違うっしょ?」


「ふん。私の体が欲しいなら渡すのはやぶさかではないな。ふん」


 なんてことを言ってるけど真赤になってそっぽ向いてるマイヤ。


「ほら~。マイヤまで」


「あ、あたしもいいよ? ダークエルフで良いとサラが言うなら」


「リュディー! 私がいやだって言ってる訳じゃなくて、ごにょごにょ」


 ヤルルーシカが何やらごにょごにょ言ってる。


「ふはははは。モテモテじゃなサラ。ふむ。お前と一緒に行くことは問題ではないらしい。だから問題になってるのが身と心なのだろう?」


「「「「・・・」」」


 皆が恥ずかしそうに下を向く。


「だがな、サラに正妃が別に嫁いで来ることは確定だ。どこの高位貴族の令嬢が来るかは知らんが首輪がつくことは間違いない」


「父様・・・」


「え~と。サラは政略結婚するから側室確定ってことなのかな? 別に一人占めしたい訳じゃないから良いけど仲よく出来るかな~」


 ・・・ミヤそこが心配なんだ。この世界では一夫多妻は珍しくない。特に王侯貴族では必須だ。うちみたいな貧乏貴族でない限りという但し書きは付くが。


「うん。それとこれ、金貨千枚。皆の取り分。俺も合わせて六千。残り一万弱これはシュナイダー準男爵領の発展に使いたいんだ。理由は俺達の防波堤。父様の所を防波堤にして大森林に貴族やら他国やらの間諜を防いでもらうのが狙いだよ。それには貧乏準男爵家のままでは困るんだ。俺達は軍備の増強が出来ない。魔獣の大侵攻を引き起こしちゃうからね」


「・・・心配ない。金の方は既に工面されている。お前達が持って来た戦利品もかなりの額になろう。その金は拠点に必要な物をシュナイダー領で使ってくれればその方が良い。経済が回るからな」


「もう何の話してるか僕分かんないよ」


 ミヤがとうとう投げだした。今だ識字率の低いこの世界では、軍事だの経済だのの話は貴族だけだ。一般の民はそんなこと考えて生きてやしないのだ。


「了解しました。じゃあみんな分かりやすい話ね。拠点に必要な物リストを作るから何が必要かそれぞれ考えて。ただし動物はもう少し待ってね。たぶん守りきれないから。俺としては農作物、調味料、寝具が欲しいかな」


 きゃーってな感じで買い物の話に花が咲く。どこの世界でも女の子は買い物大好きだな。あれこれ何が必要か言い合ってる。しばらくは放っておいても大丈夫そうだ。


「父様。既に結婚の話は出ているのですか?」


「・・・うむ。出ていると思っている。陛下が男爵以上出来れば伯爵と言っていたのを覚えておるか?」


「はい。それは帝城への出入りに関しての話なのでは?」


「それもあろうが、皇家からの降嫁の条件でもあるな」


「ええ~。それはいくらなんでも突拍子もなさ過ぎでしょう。父様。こんな辺境にいきなり皇族を嫁がせるとは思えません」


「わしは、有ると思っている。なぜならエリクサーおよび万能薬を皇家に取り込む必要があるからな。お前自分の剣を他人に預けたままで大森林に入って行くか?」


「??? ・・・いいえ。でもそれとこれでは話が違うのではないでしょうか?」


「皇家にとっては同じだ。家臣とはいえ貴族は独立色が強い。いくら皇家と言えども気に入らなければ他国に流れる者もおる。そのことは十分に皇家も分かっている。ならばどうする?」


 父様の言うことも分かるが、エリクサーと万能薬は皇家の娘を俺に嫁がせるほどのものなのか? 俺には分からない。まあいいその時に考えよう。まだ先の話だ。これからのことを相談しよう。


「その件は後ほど考えます。これからなのですが私は何かする必要はありませんか?」


「どうやらどこぞの子爵家辺りが動き出したらしいという情報は頂いた。まだその程度なら気にする必要もあるまい。新たな領地の心配をしなさい。当面人を増やせぬであろうし、2~3年は現状を維持出来れば及第点だ。拠点を失った場合速やかに再建せねばなるまいからな。今の人員6名だけでやりくりだ」


「はい。そちらはあまり心配しておりませんが、人を増やせないのは思ったより痛いです。それとまだ会っていないB級の冒険者を全滅させるほどの魔獣の事の方が心配です」


「それについては何の情報もないな。あの娘達はどのくらい使える?」


「対魔獣に限れば、B級相当と思います実際のランクがなぜ低いのか疑問ではあります」


「ふむ。その辺もまあ良い。実力があるならば未開地に引きこもることになるのだからな」


 高速で疾走する馬車に揺られながら父様と詳細を詰めていく。夜間の移動は正直自殺行為に近い。開かれている街道だから出来る芸当だ。


 朝には馬を替え、さらに疾走を続ける。何と駅馬車用の馬を使っているのだ。これは、帝国が緊急時に速やかに伝令を走らせるための設備だ。


管轄は軍務。驚くのも無理はない。帝都から丸一日を駆け抜けて、やっと休憩になる。


「いてて、馬車はきついですね~。父様、これなら馬の方がましなんじゃないですか?」


「せっかくの好意を断れんからな。我慢しろ。ここまでくれば多少余裕もあるだろう。昨日から何も食べてないだろう? 食事にしよう」


 ぞろぞろと父様に率いられた一行が入ったのはそこそこ上等な宿屋兼食堂だ。当然の様に個室を指定する。食事はお任せで上等な物を持ってきてもらう。


「さて、皆さんには大変申し訳ない。不肖の息子が起こした問題に巻き込まれる形になってしまった。それでも息子を選択して頂いた事に親として大変感謝致す。また暫くは街の食事など出来ない大森林暮らしになると思う。今日はたらふく飲み食いしてくれ」

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