第二章第一話 帝都
ここから二章になります。予定では一章で周辺事情が片付くはずでしたが、ああ、また離れて行ってしまった。農業やらんな~この主人公。申し訳ない。作者のモチベーション維持向上のため評価感想をお待ち致しております。宜しくお願い致します。
第二章第一話 帝都
「陛下、シュナイダー騎士卿が面会を求めております。如何なさいましょうや」
「南部の辺境を任せた、者であったか?」
「はっ! 先々帝が大戦の功労者として叙爵致し、先帝の御父君が南部大森林を抑えるために転封までしてあそこに配しました者の末裔でございます」
「そうか。・・・よかろう、冥土の土産だ会ってやろう。いつが空いておる?」
「はっ! 明日の午後のお茶会を外して頂ければと愚考致します」
「ふむ。楽しみにしておったが仕方がなかろう。明日の昼で触れを出しておけ。この近々の謁見は異例じゃな。運があるのう」
「はっ! さようでございます」
ミゲルとサラは帝都の宿屋でその触れを聞いた。
「シュナイダー騎士爵、陛下に置かれましては明日午後に謁見を賜るとのよし、ここに御下知致す。謹んで拝命致せ。こ度は陛下のご都合で早い謁見となっておる感謝を致すのだぞ」
「はっ! 謹んでお受け致します」
俺達が帝都に到着したのは、昨日の事。直ぐに陛下への謁見の申し込みをした。ここに来るまでに馬車を乗りついで二週間もかかった。
もちろんパーティーメンバーも同行した。俺達はどうやら歩く爆薬庫になったようだ。
「うむ。第一関門は通過じゃな。あの娘達はどうしておる? まさか街に行ったりしておらんだろうな」
「はい。部屋で大人しくしています。その・・・そこまで警戒する必要があるでしょうか?」
「一応な。どこで情報が漏れておるか分からん。用心に越したことはない」
「今日は早めに休め。娘達にはくれぐれも外出はするなと伝えておきなさい」
「はい。では皆の所に戻ります」
どうにもおかしな展開になったもんだ。確かに大事になるかな~くらいは思っていたけど。陛下に謁見まで申し込むことになるとは思ってもいなかった。
「ごめん、待った。なんか明日、陛下に会える事になったよ」
「まあ! 随分早いですね。そんなに速く会えるはずはないんですが・・・」
ヤルルーシカが小首をかしげて疑問を口にする。
「うん。陛下のご都合だってさ。だから少なく見積もっても明日一杯は大人しくしててほしいんだ」
「え~。せっかく帝都まで来たのに~」
「拷問とか嫌でしょ? 我慢してよ」
流石にミヤがぶーたれる。そりゃ帝都、花の都。帝都に来て宿屋に缶詰じゃぶーたれたくもなるよな。
「ぶぅ~」
「それにしてもうまくいくのか?」
「さあ~? 父様に任せるしかないと思うよ」
マイヤが確認してくるけど俺だって分からないよ。
「なんとも心もとない返事だな~」
「仕方がないじゃん。陛下に会うことどころか帝都に来るのも初めての田舎者なんだからさ。たぶん父様も同じだと思うよ。さあ、今日はさっさとご飯にして明日に備えようよ。なんか凄いまずい事になったら帝都から逃げ出さないといけないかもしれないじゃん」
翌日俺は父様に連れられて、お城の前に立った。ここで白亜の美しいお城とか言いたかったが現実を直視しよう。灰色にくすんだ大きくて無骨な城だった。
うん。夢は見ちゃいけないな。そんな城の正門、入城許可を申請している所だ。男爵未満の者は、入城に許可がいる。
謁見の予定があるからすんなりと通してくれるが普通はそんなに簡単には通してくれない。
控えの間で謁見の順番が来るのを待つことになる。陛下も大変だな。毎日毎日こんなに人に会わないといけないなんて。俺達がいる控えの間だけでも十数人は居る。
この控えの間は下級貴族か爵位のない者の控えの間だ。男爵以上になると別の場所があって、伯爵以上だと専用の場所がある。さらに外国からの使節団はまた別の場所になる。
午後の最後にやっと俺達の番が回って来た。侍従に案内され謁見の間に入る。謁見の間には毛足の長いカーペットが敷かれ、その上を歩く様になっており、正面に陛下が鎮座ましましている。
左右の壁際には鎧を着込んだ騎士たちや重臣の方達が並んでいる。陛下の左前には中年の男性が立っている。
あまりじろじろ見ている時間はなく、直ぐに謁見の間の中央まで進んで片膝をついて胸に手を当てる父様。その左後ろで同じような格好をして跪く。あとは見えるのは床のカーペットだけ。
「ミゲル、爵位を継いで以来か。久しいな。壮健にしておったか」
陛下からお声が掛る。下位のものから声をかけるのは不敬とされているので待つ以外になかったのだが。
「はっ! 陛下に置かれましては突然の謁見申し込みにもかかわらず拝謁の栄を賜りましたこと誠にかたじけなく存じます。陛下に置かれましてもご壮健のご様子、誠にお喜び申し上げます」
「よいよい。突撃シュナイダーに世辞は似合わん。そなたの真骨頂は戦場であると父より聞いておる。率直に用件を申してみよ」
「はっ! 有り難き幸せ。ではこ度参りましたのは先帝陛下との約定、息子めが果しました事、御報告に上がりましてございます」
「ほう。父がなにか約束しておったか」
「はっ! 先帝陛下は、私めにおっしゃいました。南部大森林を攻略せよ。橋頭保を作れと」
「なに!? ならばそれをなしたと」
「はっ! 我が息子が大森林中央に拠点を作りましてございます。さすれば、大森林以南の領有をお認め頂きたく参上つかまつりました」
「シュナイバッハ!」
「はっ! このシュナイバッハ確かにその約定耳にしてございます。それゆえ大森林以南は未開地と定めており誰も領有しておりません」
「ふむ。よかろう。ミゲルそなたの領有を認めよう」
「しばし。こ度大森林に拠点を設けたは私に有らず。息子めにございます。息子の領有をお認め頂きたく存じます」
「なるほど道理じゃな。されど息子を送り込んだはそなたであろう。よいのか?」
「はっ! 命をかけたは息子にございますれば」
「わかった。ならばそちの息子に領有を認めよう。合わせて騎士爵として叙爵致す。されどそなたの功も大きかろう。準男爵に陞爵致そう。これからも励め」
「しばらく! しばらく! ここからが本題にございます」
「なに! まだなにかあるのか?」
面倒臭そうに再度問い返して来る。
「はっ! 某では判断がつきませぬゆえ陛下のみにお話しとうございます。お人払いをお願い致します」
「・・・ここに居るのは皆、信に足る我が忠臣じゃ。それを払う程の事と受け取ってよいのじゃな」
「さすれば、こちらを陛下に! ご献上するために持参しました品にございます。こちらを見てご判断くださいますよう伏してお願い申し上げます」
小箱に入れた品を侍従に渡す。不審げにしていた今上陛下は、蓋を開けた瞬間腰を上げかけた。
「・・・シュナイバッハ、この後の予定はキャンセルじゃ。用が済んだら龍鱗の間まで来い」
「なる程の。これはちと個人的に話さねばならんようじゃ。シュナイダー準男爵、シュナイダー騎士爵両名とも着いてまいれ」
「はっ!」
謁見の間の横から陛下の後に付いて歩いて行く。かなり奥の方まで歩いたと思う。そろそろ後宮なんじゃないかと思える程の辺りでやっと一つの扉の前で止まった。
「ここは私的な謁見に使う場所じゃ。他に耳も目もない。安心せよ」
陛下に続いて部屋に入るとこじんまりとした部屋だったが機能性に富み仰々しさはなりを潜め安らげる空間となっていた。
「掛けよ。改めて聞くがこれは聖王国が独占しておるエリクサーと万能薬じゃな」
「はっ! 御炯眼にございます」
「世辞は良い。普通に話せ。時が移る。してどこで入手した」
「それは息子から話させた方が良いと思います」
南部大森林に入り安全地帯を探して中央部を目指した事。中央部では大きな木と小さな木が生えておりそれが世界樹の若木と命の木の若木であった事、出来たのはそれだけである事を語った。
「ふむ。それが真実ならば、わが帝国にもあったと言うことか」
「失礼致します。シュナイバッハにございます」
「入れ。待っておった」
「陛下、何事が生じましたでしょうか」
「これじゃ」
「!!! それは!」
「さすがはシュナイバッハよな。一目でわかったか。余が慌てたのも分かるであろう?」
「はい。エリクサーと万能薬でございますな。我が帝国にもエリクサーは一本きり。万能薬に至ってはございません」
「南部大森林に原木があると言うておる。どうするべきと思うか?」
「! ・・・我が国に原木があると周辺国にばれたなら、禿鷹の様にたかってまいりましょうな。かと言って黙っていたのでは宝の持ち腐れでしょう」
「そうじゃな。軍を派遣しようにも魔獣の大侵攻が怖くて出来んじゃろう。今のところ大森林に拠点を構えられたのはシュナイダー騎士爵のみじゃ」
「敢えて場所ははぐらかし、公表する。帝都に耳目を集めておくと言うのも手ではございます」
「・・・それしかないか」
しばし黙考して、考えをまとめたのか陛下から下知が下る。それを受けた宰相シュナイバッハ侯が俺と父様に指示を出す。
「両シュナイダー卿には変なことはしないで頂き、南部大森林攻略の目処がたったで押し通して頂きます。多少はぶりが良くなっても大森林のせいに出来ましょう。産品に関しては、シュナイダー準男爵の独占にして頂きます。特別な産品の上納先として王家に限って頂き、シュナイダー騎士爵はそのまま大森林攻略をする若手騎士爵を演じて貰いましょう」
「はい。私どもは構いません。して上納ルートはどのように?」
「そこから足が着きましょうな。さてうまい方法はないものか。・・・仕方ありません。高くつきますが転移魔法陣を敷設致しましょう。準男爵家と皇家のどこか私室がよろしいかと思います。これで皇家がどこからか入手していると言う形に出来ます」
「了解いたしました」
最小限の指示が終了してから、陛下からお言葉があった。
「ミゲルよ。こ度の件、お主の所で良く止めたの。誉めてつかわす。その方たちこ度の件は二階級は特進ものじゃ。今すぐは出来んが徐々に上げる故しばし待て。少なくとも男爵以上になってもらわんとこちらが困る。せめて伯爵じゃ。気易く会うことが出来ん。そうじゃの度々大森林の品でも献上してくれ。年で一つか二つくらいまでしか陞爵してやれんからな」
「はっ! 有り難気幸せ。してここにそれぞれの葉が十枚づつほどございますが、上納致してもよろしいでしょうか?」
「・・・隠し持っておったか。シュナイバッハ! 言い値で引き取ってやれ」
「陛下・・・こ度はサービス価格と言うことで。一枚金貨300で如何でしょうか?」
「なかなかがめついの。よい。そちも金が必要であろう。そうじゃ、シュナイダー騎士爵・・・そちの事じゃ」
「はっ! 申し訳ありません。なんでございましょう?」
「こ度の褒美は大森林攻略に役立つものが良かろう。そちには仲間がおるか? 装備一式に帝国騎士の称号を贈る。準騎士の身分じゃ。これで皇宮にも連れてくる事が出来よう。何人おる?」
「5人にございます」
「うむ。皇宮御用たしの店に行け。この紋章を見せればよい様にはからってくれよう」
そう言って横の小箱に入っていた紋章が下賜される。俺は平伏して受け取る。
「ミゲルよ。すまんが他の貴族どもに粉をかけられる前に早々に帝都を離れよ。転移魔法陣を設置後またすぐに参れ。よいな」
「はっ!」
「では下がってよい」
侍従に案内されて、ようやく解放された。
「父様、明日は仲間を迎えに行かねばなりません。また装備を充実させねば拠点の維持すら出来そうにありません。明日一日お時間を頂いても大丈夫でしょうか?」
「そうだな。大丈夫だろう。わしも明日はシュナイバッハ候と打ち合わせねばならん。気をつけて行け。これを渡しておく。お前の取り分だ」
父様は皇家から下賜された金貨二万六千枚をそのまま俺に渡して来た。エリクサーと万能薬の代金も含んだ金額だ。
「父様!!」
「その代わり家にある戦利品は頂く。はっはっは」
翌日父様は、早くにお城に出頭した。俺は、彼女達に連れられて施療院を目指す。施療院は目抜き通りから少し外れた所にあり、静かなただ住まいを見せていた。
彼女達と共に施療院の中に入ると木造の廊下が続き、多少薬品臭が残る中を静かに歩いていく。
一つの部屋の前で彼女達は止まった。ここに最後の仲間がいるらしい。ミヤでさえ騒がない。そっと扉を押し開け、中に入るとベッドの上に身を起こして座っている人物がいた。
その眼は窓の外を見ているばかりでこちらを向くことはない。
凛とした姿、頭部には三角形の耳、髪は金色がかった栗色、人狼とも呼ばれる獣人族の娘がそこに居た。




