第一章第十一話 拠点作り終了~帰還
ああ、せっかく土弄り出したのにまた・・・。作者のモチベーション維持・向上のために評価感想お待ちしてます。ブクマなどして頂けたらさらにうれしいです。宜しくお願い致します。
第一章第十一話 拠点作り終了~帰還
あれから既に三日。まだ草原部分の土造りは終わってない。翌日には思わず膝から砕けてしまった。せっかく掘り返したところも既に草が復活していたのだ。
雑草恐るべし。鎌で草刈りをする。刈り取った草がこんもりとなる位がんばった。一面草だらけだった所にぽっかりと空いた空間が出来た。
翌日にはまた膝から砕けた。刈った部分にもう新芽が生えて生長しだしてる。またまた恐るべし雑草。根っこ。根っこからどかさないとだめだったんだ。
今日は引っこ抜くことにした。次々に引っこ抜く。昨日もきつかったが今日も一段ときつい。なんか植物の再生が早い気がする。世界樹のせいかもしれない。
翌日には、もう一日で戻って来れない位にシュナイダー領への道が進んでしまったので一旦休止。重機、もといミアを手に入れた俺は草原地の土の掘り返し、30m四方の大きさで完了した。
そしてさらに一日、全員で屋根葺きに入る。骨組みは既に作ってあったので薄板を作り貼り付けて行って、防水のために乾かした木の皮を更に貼り付けることにした。
まずは、細長い薄板作りから。並行して木の皮もカットしていく。薄板は、木の年輪にそって剥がしていくことで作る。
この作業をしているのが俺とミヤ、ヤルルーシカは木の皮のカット。リュディーとマイヤは扉と窓を作ってる。
午後には目標の数を揃えられたので、屋根に張り付ける作業に入る。薄板の片方を持って持ち上げるとリュディーが屋根で掴んで引っ張り上げる。
それを両端と中央にマイヤ、ミヤ、ヤルルーシカが受け取って斜面にそって貼って行く。
端っこは、はみ出すが、まとめて鋸で切り落とすからよしとする。薄板を半分重ねる様に屋根の下から順々に貼って行く。問題は屋根の頂点部分。
ここには年輪の内側の方、丸まってる辺りを器用に剥がして被せる様にした。釘はないので木を細く削った物を撃ち込んで止める。
前世の記憶では竹串を叩き込んでいたように記憶していたので真似してみた。
これがなかなかうまくいかない。木に木を打ち込める訳もなくもっと固くないといけない様だ。そこで木の芯の部分を使って竹串の代わりにしたら何とか打ち込めた。
さらに防水のためにここから木の皮を貼って行く。木の皮を束にして蔓で縛って屋根に放り上げる。リュディーが受け取って皆に渡す。皆は屋根に打ちつけていく。
その間に木の皮をまとめて再度縛り放り上げるを繰り返す。まとめて放り上げる方が早いかと思ったが、逆に一番遅かった。上から見降ろされて手伝おっか?
とか言われてるし。慌てると積んで有った木の皮が崩れてしまったり、結んでる途中で蔓が切れてしまったりと最悪なのが放り投げた瞬間にバラバラになってしまったことか。
なんだかんだあったが、特に俺。屋根葺きが完成し、拠点が完成した。今夜は完成祝だ。そして初お泊り。拠点の家は二間だ。
入口から入って直ぐ12畳ほどのダイニング。キッチンはない。隣の部屋はこちらも12畳ほどの寝室兼倉庫の予定。木の香りが咽返る様に凄く香っている。ちょっときつ過ぎるくらいだ。
寝室にも扉がついている。ここを出ると外だ。もちろん勝手口とかじゃなくてお風呂場。お風呂場はまだ屋根も壁もない。さすがに作る余裕がなかったんだ。
食事もお風呂も済んで、ダイニングと言えば聞こえはいいが何もない部屋に集まり、車座でお茶を飲んでる。
「いやー、完成したね~。あとはお風呂場と、小物かな? テーブルに椅子、キッチンも作るんでしょ?」
感慨深そうにミヤが言って来る。
「うん。作りたいね。それと階段。玄関入るのが一苦労ってちょっとね」
頭を掻き掻きマイヤが言う。
「完全に忘れてたわ。高床じゃなければ問題なかったんだけどな」
「で、ここで問題が発生しました。もうパンがありません。お茶もありません。塩もあとちょっと。農業やるにも苗も種もないからお家も完成したので、ここらで一旦シュナイダー領に戻ろうと思います」
「しょうがないですね。元々拠点が完成したら戻る予定ではあったのですから」
「では明日出発だな。せっかくの家も一泊限りか。仕方ない。売れるものは全部持って行こう。片道分の食料以外は途中で捨てるしかないな。肉のあまりなんかはここに置いておく訳にも行くまいからな」
ヤルルーシカの提案が上がる。ミヤは自慢げに道を説明したいらしい。
「そうですね。あと収穫できる物は収穫してしまいましょう」
「ひひひ。人間社会に帰還だね。帰り道は早いと思うよ。道も大分出来てるからね。今度はシュナイダー領側から切り倒していけばいいよ」
「結局、エリクサーと万能薬は2セットしか成功しなかったね。なんかコツがあるのかな。戻ったら聞き込みもしてみようよ」
「そうね。ちょっとあたしも癪に障る~。そこそこ自信があっただけに悔しい~」
結構な回数をこなしたんだけどエリクサーも万能薬もなかなか成功しない。優に1000枚以上の木の葉を無駄にしてしまった。
それも一人でだ。つまりリュディーと合わせれば2000枚以上だよ。
「じゃあ明日出発と言うことで寝るか」
翌朝は皆早起きだった。早々に朝食を済ませ、採取やら荷造りが始まった。来るときに持って来た物の大半は置いて行く。
持って帰るのは狩猟品と採取品に帰り道分の食料のみだ。荷造りも終わって皆が荷物を担ぐ、そこそこの量だがまだ余裕がある。背負子やら籠やらを作ったお陰だ。
帰り道でも魔獣やら獣に襲われるだろうから狩猟品がもう少し増えるだろう。帰りは目的地も分かっているのでひたすら速度重視で帰ることにしている。
マイヤの号令のもと出発だ。
「よし。じゃあ、出発しよう。皆遅れるなよ」
「「「は~い」」」
もう途中までは道が出来ているので何の問題もなかった。魔獣に襲われる事もなく誰かが遅れることもなかった。
道の突端まで来て森に分け入ってから速度は若干落ちたがそれでも速い。道を進んでいる時も早いと思っていたが歩き易かったので小走り程度でも問題なく着いて行けた。
まさか森に入ってもほとんど同じ速度で進むとは思わなかった。このままなら3日ほどで大森林を踏破してしまうんじゃないかと思う位だ。
途中やはりというか当然の様に魔獣に襲われたが、先頭を走るミヤに一刀両断されていた。
核を取ったり毛皮を剥いだりする方が圧倒的に時間が食うほどだ。初日は道を抜けて少し森に入った所で野営する。
「明日もこのままのスピードで進むの? はあ、はあ」
「いや、明日からもう少しゆっくり行く。さすがにこのペースはきついからな」
ヤルルーシカが説明してくれる。
「うふふ。サラ、魔獣の領域を一気に抜けるためにこのスピードで走って来たんですよ」
「なんだサラ、気付いてなかったのか。ひひひ」
「そ、そうだったんだ。えらく速いなとは思ってたんだけど。そう言うことか。じゃあ、来る時もこの辺で一気に早くなったのも同じ理由なんだね」
「まあ、そんな所だ」
思わず安堵の吐息が漏れそうになった。皆にはそうでもない早さかもしれないけど俺には相当きつい早さだった。何度挫けると思ったことか。
それから二日、ちょこちょこと襲撃はあったが大過なく外縁部が望める位置まで戻ってきた。
行きと違って俺が魔獣やら獣との戦闘に慣れたことと、魔法に慣れたことが大きい。帰りに俺が魔法を使ったときは来る時同様唖然として振り返ってきたものだ。
白虎の魔獣の眉間を一撃で打ち抜き頭部を粉砕してのけたのだ。照準さえしっかりしていればその位の威力は元々あったとはいえ、いざ目撃するとびっくりするらしい。
そして外縁部も抜け南部大森林からの帰還を果たした。
「ふぅ~。皆お疲れさん。これで目的は果たしたね。この戦利品は皆で分けてくれ。俺はエリクサーと万能薬を貰っちゃったから。出来たらこの戦利品は、シュナイダー騎士爵を通して販売してもらうと助かる。無用の注目を浴びずに余計な厄介事は父様に任せる事が出来るからね」
「な、なにを言ってるの?」
フードをはねのけて不安そうな顔をさらしてしまっているリュディーがか細い声を出した。
「うん。これで最初の契約は終了だろ。だからこれでお別れだろ? 皆も元々の拠点に帰るんでしょ?」
「え? そうなのマイヤ?」
「い、いやそんな契約だったか?」
俺だって別れるのは寂しくない訳じゃなかった。でも彼女たちにも彼女達の生活があろうし、いつまでも俺の道楽に付き合わせる訳にもいかない。
そんな事をこの帰還の間中考えていたのだ。出来るだけさっぱりと別れようと何事もないかのように振舞おうと。
「皆には世話になった。お荷物の俺を連れて大変だったと思う。本当に感謝している。ありがとう。」
そう言って頭を下げた。皆の顔を見てるのが辛かったから。せっかく仲良くなったけど彼女達からすれば貴族のお坊っちゃんのお守りをする仕事を完遂したに過ぎない。
こんなところで駄々をこねる貴族のボンボンにはなりたくないし、彼女達を困らせたくなかった。
「やだよぅ~。何で急にそんなこと言いだすのよ~」
ミヤが泣きそうな声で言い出した。
「マイヤ~、ヤルルーシカ~。何で黙ってるの~。ぐすぐす。終わりなの? もう終わりなの?」
「確かに最初に大森林に連れてってくれるって言うのはサラが出した条件だったな」
「そうね。パーティーを組んだのは方便でサラを守るのが私たちの仕事だったわね」
「・・・ならここで冒険者としての仕事は終わりだな」
やっぱり。ちょっと淡い期待は抱いてたけど、終わりだった。ひょっとしたら一緒に来てくれるかもしれないなんて甘い事を考えていたけど。そんなことないよな。
ちゃんとお別れしないといけないな。さて明日からまた一人だ。次に行くときはもう少しうまくやろう。こう言うのは何回も経験したいもんじゃない。色々きつかったけど楽しかった。
「で、サラ。これからどうするんだ?」
「・・・うん。俺は父様の所に帰還報告をしてからまた食料をもって大森林に行くよ」
「一人でか? それは危ないぞ」
「また一緒に行ってくれる人を探すけど、居なかったら一人かな」
マイヤは何かを考えるように黙ってしまった。
「領主館までは行くだろ? 皆も帰還報告はするだろうし。じゃあ、行こうか」
皆とは最後の道行きになる領主館に向かって歩き出す。後ろでは皆がぼそぼそ会話をしている。今後の事を決めているのだろう。
うん。うん。きれいに、何事もなく、うまく出来たと思う。ため息が出てしまいそうになるのをグッとこらえながら短い道のりを行く。
頭を下げない前を向け! サラ。自分を叱咤しながら歩く。
「あのな、サラ。もしだけどまた私達が大森林に行くって言ったら一緒に行くか?」
バッ! と振り返って皆を見る。皆がなんか困った様に笑って。俺を見てる。どういうことだ。まだ稼ぎ足りないからもう一度行きたいってことか。
でももう実績を積んだんだから今度は俺の伝手を使わなくても単独でも探索の許可は出るはずだ。
「そ、それでね。どうせなら契約とかじゃなくてちゃんとパーティーを組んで行った方が良いと思うの。どう思う?」
パーティーを組む? また稼ぎは山分けってことか。それとも・・・。
「あたし達のパーティーに参加しないかなって・・・」
「俺をパーティーに入れてくれるのか? 俺の目的は大森林を開拓することだよ。あそこが終の住処になるんだよ」
「あ、うん。そのなんだ。言ってない事があるんだが、私達にはもう一人仲間がいるんだ。そいつは前の戦いのとき体を張ってあたしたち全員を庇って大けがをしちまってて、帝都の施療院に居るんだ。そいつを迎えに行ってからになるんだが・・・」
「いいのか。俺の・・・このとんでもない事に皆を巻き込んで。本当に来てくれるのか?」
「うん。僕達の意見は一致してるよ。サラ。もう君は仲間なんだから」
思わず皆に抱きついちゃった。よかった本当の仲間になれた。これで心おきなく帰還の報告が出来る。ミヤとリュディーが俺の腕に手をまわして組み着いて来た。
領主館の前にようやく到着した時。
「サラ坊!!」
大きな声が響いた。その声を聞きつけた母様と姉様が飛びだしてきた。
「サラ!! ああ、無事だったのですね」
母様と姉様にもみくちゃにされてるとき重々しい声が響いた。
「サラ。無事に帰還したか」ホゥと小さく吐息が漏れる。
「父様。ただ今戻りました。帰還の報告を致します。ちょっとご相談もあります。場所を変えましょう。カラナムのおっちゃんも一緒に」
ちょっと真剣な口調で父様に提案する。
「どうした。大層な戦利品を抱えているな。うむ。では、中で話そうか」
そして、執務室に俺達も入る。母様が入れてくれたお茶を飲みながらこれまでの経緯を話した。大量に持ち込んだ牙や毛皮、ポーション類。
そしてさかなの燻製。そして中央に置かれているエリクサーと万能薬。
「坊も厄介な物を持ちこんでくれたもんですぜ。こりゃー帝国中が大騒ぎになりやすよ。で、どうしやすミゲル」
「・・・そうだな。このエリクサーと万能薬、その原料以外はうちから卸せばなんとでもなるな? カラナム」
「そうですな、どうにかしますぜ」
「問題はこの二品に係わる品だな」
「下手すりゃ、拐かされやすぜ。このパーティーの姉ちゃんたちとサラ坊は。それも拷問のおまけつきで」
「いや、かなり高い確率でそうなるな。もしくは、口封じか」
父様が考え込むように黙りこむ。しばし考えを巡らせてから徐に宣言する。
「しかたあるまい。明日帝都に行く。残りの品はカラナムお前が捌け。下手に足がつく様なとこには卸すなよ」
「心得てまさあー」
「サラ、お前も行くぞ。準備をしておけ」
何が何やら分からないまま、こうして俺の帝都行きが決定した。




