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第一章第十話 拠点作り③

く~やっと、やっと土弄りだすよ。作者のモチベーション維持のために評価感想のほどよろしくお願い致します。

第一章第十話 拠点作り③



 いくら南の国の春とはいえ夜から朝方はまだ冷える。いつも皆が猫の子の様にごちゃっと固まって寝ているのだが、昨日はお風呂に入って温まったからか少しバラけていた。


 朝靄が煙る大森林に起き出した俺は森の新鮮な空気を胸一杯に吸い込んでふんと気合を入れる。


 久々の抱き枕からの解放を味わっていた。やっぱお風呂は良い。なにせ抱き枕にならなくて良いんだから! なんて事を思いながら、消えそうな焚火に薪を投入して火を起こし直す。


 鍋にお水を生み出してお湯を沸かし残り少なくなってきた茶葉を入れ、お茶の用意をする。朝一番渇いた体に水分補給。お茶は止められないなと思う。


 お茶の準備が済んだので、皆を起こそうと思って近づいたのが敗因だ。ガバッとマイヤに掴まる。皆がコロコロと転がりながら俺を取り囲んであっという間にいつもの体勢に落ち着く。


 早速油断した。でも大丈夫だ。もう起こす気だったから声を上げる。


「お茶の準備できてるよ。もう朝だよ。起きよう」


「おはようございます」「おはよう」「おは~ん」「おはようさん」


「おはよう」


 我が策はなせり。・・・その場で起き上がるだけで解放されなかった。我が策が破れた! ワイルドボアの肉があるから朝から豪勢だ。黒パンだけどね。


 パン窯が必要だ。白いパン食べたい。豆スープにワイルドボアの肉をぶち込んでかなりましになった。胡椒、あの至高の香辛料がいる! 何とか入手したい。高いんだろうな~。


「今日はどうするの?」


 ヤルルーシカが現状を報告して来る。皆でお茶を楽しんでいる所だ。


「お家の方は木材加工が少しとあとは・・・、組み立てと屋根葺きだからマイヤに手伝ってもらうとして、ワイルドボアの肉もまだあるから食材調達はなしよ」


「そろそろシュナイダー領への道の片付けも終わっちゃうから、ミヤとヤルルーシカにはそっちをお願いして、サラはどうする?」


「うん。土造りをしてみようと思う」


「土造り~~~~?!」


「あれ。変なこと言ったかな~。開墾して穀物やら野菜やらマメやらを植えるのに必要でしょ?」


「??? 私が知ってるのは、土地を耕して種を蒔くだけです」


「僕もそうかな。あと水を撒いて、肥料を撒くぐらい?」


「あたしもそうかな」


「・・・あれ~~~?」


 どうやら前世の記憶とごっちゃになっているようだ。この辺りの農業はまだそれほど進歩していない。種を蒔いて勝手に育ったものを収穫する。


 その程度みたいだ。うん。前世の記憶でもサバンナの方ではそんな農業をしている人たちが俺の住んでる地方に勉強に来てたりしたな。


「え~と。作物というか植物が育ちやすい土って言うのがあるんだ。腐葉土みたいなのがいっぱいあって水捌けが良くって保水性もそこそこあって空気も入ってるふかふかの土の方が植物って育ちやすいだろ?」


「うん。なんとなくわかる~。やせた土地は固いもんね」


「そうそう。ここの土地は大分いいけど混ぜてちょっと柔らかくしてやろうと思うんだ。もう少し空気を入れてやる感じかな。それに土の下になにがあるか分からないから穿りかえして異物は除去してやらないと根っこが伸びられないかもしれないからね」


「わかった。それで行こう。どのへんでやるんだ?」


「まずは薬草園の傍と、あの草原みたいなところの二か所でやってみる。どっちも世界樹の圏内だから養分を吸われちゃわないか心配してるんだ」


 世界樹に養分を吸われちゃって作物が育たないかもしれないと心配してるのだ。


「あの辺なら一人でも心配ないか。直ぐに何か植えてみるのか?」


「植えないよ。穿り返したら暫く自然の力に頼って、良い土になるのを待つんだ」


「了解した。じゃあ、それで行こう」


 そしてバラバラに別れてそれぞれの作業を進めることになった。この場所に来て初めて鍬を使う。もちろんエンチャントしている。


 ん? ちょっと気になったがこのエンチャント火とか水とか風はするけど土はあまりしないよな? なぜかな? 試しに土属性のエンチャント、石をイメージして付与してみる。



 ・・・結果は惨敗でした。鍬の周りにごちゃごちゃっと大小織り交ぜた石が付着するだけでした。さらに重い。なるほどしない訳だ。


 改めて風属性を付与し直す。穿り返すだけなので鍬の形を大きくしたようなイメージにした。


 ザクッ。ザクッ。ザクッ。すんなり入るな。土の断面を見てみると上から10cm位は土と言うより葉っぱが腐りかかってるような感じのままだな。その下が黒土。


 ちょっと密度が高い。1m位掘っても大体変わらない。まさかと思うけど全部世界樹の落葉で出来てる腐葉土か。どの位掘り返すのか分からないので1m位やっておこう。


 ここで問題発生。クワが深く入ると持ち上がらない。怪力カモーン。なので30cm位づつに分けて何回か掘ることになる。


 一辺が3m位の正方形部分を穿ってみた。キツイ! ただ土を穿ってるだけなのに。農業めっちゃキツイです。まだ始めても居ないけど。重機、重機の導入がいる。


 と言うことで重機、もといマイヤを投入してみました。わー重機ってすごい。くわが1m位楽々食い込んでそのまま1m四方くらいの土が穿り返されてる。


 あっという間に30m四方くらいの土を穿り返しました。


「こんなものでいいか? 私は戻るぞ」


 ・・・はい。重機、もといマイヤがお家製作に戻って行きました。もうお昼なので俺も戻ることにした。ちょっと悲しい。


 昼食を終えて・・・そうそうホントは昼食ってなくて一日二回が普通なんだけど俺が食べるからいつの間にかみんなもそうなっていた。うん。体が資本だからなしっかり食べてしっかり休むと。


 次の穿り返し地点に向かった。世界樹からは大分離れたな。ザクッ。メリメリみたいになる草の根っこが結構張ってる。午後はがんばった。


 5m四方くらいを穿り返して生えていた雑草ごと混ぜ込んだ。残念だが今日はここまでの様だ。30分程度作業したマイヤの1/6程しかできなかった。


 それも午後いっぱい使って。さすがにちょっとへこむ。


 とぼとぼと拠点のお家に戻っていると高速で走ってきたミヤとヤルルーシカに追い抜かれる。キキーーと音がしそうな勢いで止まって戻ってくる。


 戻ってきたミヤ達は、魔獣だか獣だかの毛皮を抱えている。そう言えば剥ぎ取った毛皮は泉に浸けてるんだった。


 毛皮にまだ残ってる肉やら脂やらが腐るのでその前にドクターフィッシュ達に根こそぎ食べてもらうことにしたのだった。


 これでなめし作業の前段階が勝手に進む。ついでに毛の部分も綺麗になるから一石二鳥かな~とか思っている。水も冷たいから腐りにくいし良いアイディアだと思う。


 ある程度泉に浸けこんだら引き上げて残りは木べらみたいなのでこそぎ落としてる。水でふやけてるから軽くこするだけで綺麗になる。


 その後柑橘系の実の皮で毛皮部分を良く洗って乾燥、もちろん魔法でやるけどね。


 この後なんか薬品に漬けこむらしいのだが、その知識がないのでここまでにしておく。シュナイダー領に戻ったら聞いておこう。


「オッス。サラも今、終わりか? 一緒に帰ろう。見ろ今日も魔獣獲って来たぞ。肉は放置するしかないのが残念だな。今度干し肉か燻製肉の作り方も教わってこようね」


「やっぱり世界樹の圏外に出ると魔獣は多いか?」


「そうだね。木を伐採してるから余計かもしれないけど、集まってくるよ。ヤバそうなのの気配がしたら即行で逃げてるけどね。私達が放置してる肉なんかなくなってる事が多いよ」


「ミヤ達でもヤバそうなのが、徘徊してるんだ。おっかないね」


「なに。心配すんな。大抵のやつはお腹いっぱいになると襲ってこないもんだ。肉を放置してるからそれを食ったり放置した肉に集まってるやつを食ったりしてるみたいだからね」


「どの位進んだんだ?」


「う~ん。まだ半分は行ってないと思う。マッドゴーレム達がせっせと整地作業してくれてるから走りやすいし。半日ほど全力で走れば着く辺りだよ」


 さっきのスピードで半日って、結構な距離走れてるよね? 全身玉の様に汗吹き出ててるよ? お風呂、お風呂なんて歌ってるけど。


 帰ったら直ぐにお風呂作ってあげよう。拠点に戻ると既に外壁は組み上がり、マイヤとリュディーが休憩してる。


「お待たせ~。あ、お湯は沸かしてくれてるんだ。スープ用? お茶用?」


「ああ、お帰り。どっちでもいいぞ」


「じゃあ、俺はお風呂作ってるよ。食事の準備はよろしく~」


「やっほーい。お風呂楽しみだね~。僕、あれ気にいっちゃったよ。なんて言うのかな~、お湯に浸かって疲れを解してから、火照った体を冷ます。全裸での解放感。その内ウッドチェアーとか作って休める様にしてさ。いいな~」


 殊の外ミヤが露天風呂を気に入ってるみたいだ。もちろん他の皆も大なり小なり気にいってくれてるようだけど。


 今日からはお風呂も大きくなってるからね。伸び伸び入るお風呂の醍醐味も味わえるだろうな。作りたてだから木の香りも凄いしね。


 水球四発で満タンにした水に焼いた石を投入する。排水用の穴の栓を抜くとお湯が下の湯船に溜る。石を再度焼き直してまた水球四発今日はちょっと熱めにしよう。


 再度水球四発、多めに焼いた石を入れて蓋をしておく追加用のお湯も用意したし食事の後に楽しめるだろう。


 上段の小さい湯船にはかなり熱めのお湯を入れておいた。これでお湯が冷めても追加すればまた温かくなる。


 焚火に戻ると食事の準備が完成する所だった。マイヤが自分の膝をポンポン叩いてここにおいでってしてるけどちゃんと一人で座る。


 ちょっと不満そうに唇を尖らせてるあたり可愛いけどしょうがないじゃん。最近は食事が炙った肉か魚、豆と肉のスープ、黒パンに固定されてきた。


 食材があまりないからしょうがないけど食事のバリエーションも増やしたいな。食事が終わるとひょいってな感じで僕を抱き上げて膝に乗せるマイヤ。


 猫の仔を膝に乗せてる感覚なのだろうか。さらにミヤも乗っかってくる。とかくこの二人はスキンシップ大好きだな。確かに人肌があると安心するけどね。


 剥き出しの胸が俺の肩に乗っかってるのはどうにもこうにも気恥ずかしい。食後のお茶を楽しんだ後お待ちかねのお風呂タイム。


 遠慮しようとする俺をマイヤが引っ掴んで皆で向かう。お風呂の辺りは月明かりだけになるので結構真っ暗だ。ジタバタしている俺の服を剥ぎ取って、湯船に入ろうとするので待ったをかける。


 先に体を洗ってから入る様に言うと俺の体を洗い始める。俺が逃げようとするから余計に抱え込まれて密着する。


 俺を洗い終えてザバッーと湯船のお湯をかける。終わっちゃったので俺は一人先に湯船に浸かる。


「ふぅ~。今日は少し熱めにしたから効くね~。固まった筋肉が解れるようだよ。あ、そうだ。そうだ。ちょっと待ってて」


 そう言って湯殿から外に出て、目的の草を摘む。戻ってお風呂に投入してみる。レモンの様な香りが漂いリフレッシュできそう。


「サラ! レモングラスですね。良い香り。ナイスアイディアです」


 皆が湯船に浸かって香りを楽しむ。湯船が広くなったので、伸び伸び入ってもらう。今日も星空が満点だ。


「くゎ~。熱い! けど気持ちい。けど熱い」


「あぁ~~、体が溶けだしそう。思ってるより体が疲れてたのを感じるわね」


「くぅ~。ほぐれる~。凄いなお風呂。水浴びだとこの感覚がないな」


 ひとしきり伸び伸び入ってからヤルルーシカが俺を抱え込んで体の上に俺を乗っける。乗っけるだけでなにかする訳じゃない。


 ただただ乗せるだけ。ヤルルーシカがそれで良いならと暫く乗っかている。そろそろいいかなと言う辺りでリュディーに掴まる。


 リュディーは構いたくてしょうがない様で直ぐにグリグリと体やらほっぺたやらをこすりつけてくる。スキンシップも人それぞれだ。


 ミヤが湯船の縁に立ちあがって、仁王立ち。はあ~とか言いながら大きく伸びをして全開放だ。ま、暗いから見えないけどね。


「これこれ。この解放感すごいよ! 皆もやってみて。風がひゅ~って吹き抜けるとなお気持ちいい」


 皆で湯船の縁に立って仁王立ち。さーっと風が吹き抜ける。濃い緑の匂いを運んでくる。自然と一体になったような感覚だ。


 体が冷えてきたらまた湯船にドボン。ぬるくなってきた湯船にお湯を追加するとまた熱くなる。給湯口から皆が逃げるように反対側に集まる。あははは、そりゃ熱いよね。


 ひとしきりお風呂でじゃれ合ってから皆で上がる。体から湯気を立ち上らせながら、ちょっと夕涼み。水場から汲んで来た冷たい水にハーブのエキスを垂らして一気飲み。


 プファ~、生き返る~。お腹が冷えるから冷たい水は一杯だけ。あとはゆっくりお茶を飲む。寝る前の静かなひと時だ。

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