むかっ
目の前には、豪勢な食事がそれをむさぼる、ヤンとは対照的に、目の前の食事を大事そうに食べるエックスの姿がそこにあった。
「なに遠慮しているのよ、あなたのおごりでしょ?」
ヤンの一言に顔が青ざめるエックス、それもそのはず、せっかく、集めたお金は既にヤンに搾り取られていた。しかも、目の前のごちそうはどう見ても、1万ギルダーは過ぎている。もともと大食漢のヤンを知っているエックスにとって、目の前のごちそうが消えるのは周知の事実、これで済むとは思っていない。目の前の事実に涙目を浮かべ、何か事件が起きるのを期待せざる得ないのだった。
しかし、彼の期待ははずれ、彼女の食事は2万ギルダーに達していた。どうしよう。そんなことを思いながら、彼女がスピリットに手を出さないことに、
「ラムでも行く?」
と聞いた途端、彼女の顔を見て失敗したと思った。
「同じ手はくわないわよ」
そんな一喝の元、シュンとしているエックスなんだが、どうにか逃れる手がないのかと思い悩んでいた実は、手持ちが2万5千ギルダーしかなかったのだった。そんな彼を救うかのように彼女が
「あ~お腹いっぱい」
そんな言葉を聞いたのだった。しかし、それは、彼の地獄の始まりでしかなかった。
***
彼のなけなしの2万ギルダーを払わされたエックス、そのやり取りを聞くと有名な拷問をはるかに超えるものを耳にすることになるといっても過言ではない。それもそのはず、彼女は、魔法については、知識はないが、その魔力はとんでもないもの、だから、少しの知識であっても、とんでもないことになるのであった。
その一つが、ホーリーライトニングと呼ばれる、白魔術の最高峰にあたる魔法なんだが、それを最大で使うと山に大きな穴をあけるほどの破壊力、その光の力で一瞬で、そのものを消し去るようなとんでもない破壊力を持ているのだが、彼女は、そんなのは朝飯前、達が悪いのは、その光を細い光線として一点攻撃が出来るのだ、しかも、機関銃のように・・・つまり、山をくりぬくような光線を機関銃として使えるのだ。それを受けた相手は、瞬時に、機関銃で無数の点攻撃を受け、極限の痛みを無限に受ける。
更に達が悪いのは、ハイパーヒールという瞬時に修復できる魔法を彼女が出来ることだった。地獄なような激痛を受けながら、その場所は瞬時に治っている。つまり、地獄のような痛みが延々と続くという、究極の地獄が待っている。
百戦逃避において、無敵をほこるさすがのエックスもこの攻撃には耐えることはできなかったが、彼の記憶喪失によって、契約までは至っていない。そんなことを知っている彼は、なけなしのお金を払わざる得なかった。
そんな事情をまったく知る由もない人物がそんな彼を見て、カモがねぎをしょっていると思っても仕方がない。それを見つけのは、見習いを卒業したばかりの魔導士、ラム・ホーリだった。
彼女は、かわいらしい笑顔とナイスバディを武器とする魔導士、しかし、その能力は、昨年度の魔導士試験をそのナイスバディ―で教授陣をたらしこんで首席で突破したという実力の持ち主、実はたいした能力はないのだった。彼女の必殺の武器はファイヤーボールだった。
そんな鼻高々な彼女が当然の如くエックスに近づいた。
「あなた、私の家来になるならたすけであげるけど」
「それはありがたいのですが。あなたの能力では無理です」
そんな彼の一言にむかついた彼女は、無謀にもヤンに刃を向いた。
「決闘よ」
そこまではよかったのだが・・・彼女の必殺技ファイヤーボールを受けたヤン、顔にかすり傷をおったんだが、瞬時のヒールでそのあとかたもなかった。
そして、彼女に向かって。
「こうだったかな」
そうつぶやきながら、同じ呪文を唱えた。それが、地獄の始まりだった。
彼女が放ったのは、ファイヤー猛烈なタイフーン(トルネードでは7超えの測定不能)を放ったのだった。目の前は、原子爆弾を受けたような惨劇が広がっていた。そこへ突っ込む、エックス
「ちょっとは手加減しろよ」
「え・・でも」
ぶりっこをするヤン・・・そんな状況で、がれきから顔をだしたラムは、驚いた。それもそのはず、それまだあったはずの町はその原型をとどめていなかったからだ。しかし、そんな彼女に選択の余地はなかった、目の前にヤンが立ちはだかった。
「どうする?」