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封印される記憶

 屋根の上で、仰向けになって見る月はまた違って見える。

 このまま手を伸ばせば届くかな……。

 私は手を伸ばし、月へと手の平を掲げる。


「なにやってんだ?」

「あ、零司」


 ひょっこり現われた零司の顔。


 ──嫌なところを見られた……馬鹿にされるかな。


「月に手が届く気がしたか? でも、危ないから降りたほうがいい」

「……? 馬鹿にしないんだ?」


 零司は屋根へと上がってくると、私の隣へと寝転んだ。


「そこ、本当は俺の場所」

「え?」


 零司は空を見上げながら言葉を続けた。


「で、いま俺が寝転んでるのが親父の場所」

「メソテスがお月見? 想像できない」

「今となっては、俺もだ」


 そう言って、軽く笑い飛ばしてみせる零司。


「変なの」

「なにが?」


 不思議そうにこちらを見る零司……その仕草は、彼に似ている。


「らしく無いとか、頭の病気か、とか……馬鹿にしないの?」

「そういう、気分じゃないだろ? ……お前が」

「……ッ!」


 零司の台詞にアーシェの目が丸くなる。


「読んだ! アンタ今、術式で私の心読んだでしょ!」


 あわてて上半身を起こし、すごい剣幕で睨んできたアーシェを、呆れたように零司は見据える。


「俺は普段、術式なんて使わねぇ……お前が可笑しすぎるから何となくそんな気がしただけだ」

「……あ、そう」


 ホッと一息ついて、再びアーシェは仰向けになった。


「……エリスの事か?」

「八割くらい」


 零司のたまにもらす核心を突く発言にはドキリとさせられる。

 人の心を見透かしたかのような発言、振る舞い……なぜ零司はこうも彼と似通っているのだろう?

 零司は、彼ではないというのに……。

 でも、彼に限りなく近い零司……だからあの日、私は彼を巻き込んでしまうと知りつつも接触してしまったのか……私は未だ、幸せだった、あの花畑に囲まれ笑っていた日を取り戻したいと、願っているのだろうか?


「零司……私、明日出ていく」


 ……ごめん、エリス。アナタには悪いけど私はやっぱり零司のことが……。


「出ていくって、コレからどうするんだよ? まさか一人で闘おうとか思ってるんじゃ……」


 ……予定とは違っちゃうけど、零司を巻き込むことにはならないから……いいよね、エリス。


「アナタには、重すぎるのよ」


 私たちの事……忘れてもらっても。

 起き上がるアーシェにつられ、零司も上半身を起こす。


「アーシェ?」


 私は、彼の苦しむ顔なんて……見たくないから。


「極印術式発動……記憶、開かざる牢獄へと隔離せよ……“忘却牢”」


 思い出すときには……全部終ってるから。

 零司の額へとあてがわれたアーシェの指は暖かい温もりと共に、まばゆい光を放った――零司の記憶を、封じるために。



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