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俺様ヒーロー  作者: 真山羊野
本編
8/45

MISSION8 病人ヒーロー病弱玄武

衣替えも終わってもうすぐ夏休み


「えー。本日は、急ですが転校生がやって来ます。えーでは入って来ていただけますか」


そんな日に副担のゆったりした声に続いて扉を開けたのは見間違うこともない

『彼女』だった


「お邪魔するわ。聖美深女学園から転校してきました鳥華院 桃子よ。今日からよろしく頼むわ」


「「「鳳お…桃子!?」」」


俺達は堂々としたその姿に三人でハモる


「あら、青ヶ島龍太郎と白幡虎壱。それに赤城烈火じゃない。奇遇ね」


や、奇遇と言うより何故お前がいるんだ…?


「べ、別にいいでしょ?!貴方達には関係ないわ」


何処となく雰囲気というか属性が闇兎に近いな

桃子は表情を戻して圧倒された生徒達の間を颯爽と通り抜け席に着いた


「そういえば先程風花を見掛けたけれど黒はいないのね?」


俺達の近くの席に着いた桃子が聞いて来たから俺は軽く手を振って答える


「嗚呼。病欠病欠。確かこの前の文化祭のラスト十五分の時見掛けたのが最後だな」


「学校来ても保健室だしね―。あ、だからか!この前白衣さん校内で見た」


虎壱が合わせて言う

烈火も隣りで頷いた

不意に虎壱が桃子を見て無邪気に言った


「それより鳥華院さんは俺達フルネーム呼びなんだね」


「ええ。そうだけど?」


事も無げに桃子が返すと虎壱は少し考え込んだ


「そーかぁ…。うーん…じゃあ俺は虎壱とか虎って呼んでよ!駄目なら白幡でも良いけど…。龍太郎は龍とか青ヶ島で、烈火は(れつ)とか烈火とか赤城でさ。その方が仲間って感じだろ?」


「…いいわよ。虎…と龍と烈ね?」


押された様に頷く桃子に虎壱は更に無邪気に笑いかける


「うん。じゃあ俺は君の事桃子ちゃんって呼んでいい?」


「!…。い、嫌じゃないわ。勝手に呼んで頂戴」


お?


「じゃ、よろしくね桃子ちゃん!」


おろ?おろろろ?

なんか桃子、顔赤くないか?


んー…女ってわからないな



「みんなズルイよぉ…なんで同じクラスなの―…」


風花が頬を膨らませる

見事ハブられた彼女はご機嫌ななめモードらしい


「さあ…?」


虎壱が苦笑いで首をかしげた


「あとは黒と黄色が揃えばヒーロー集合なのになぁ」


「…うん、そう…だね」


今回も特大肉マンをがっつきながら言う虎壱の言葉に烈火が弁当を食べる手を止めて頷いた


「けど、黒はいるんだろ?」


「うん」


俺が聞くと風花がサンドイッチを食べながら言う


「この学校の裏門方向のコンビニの裏の住宅街通りあるでしょ?あそこの右から二つ目の家だよ」


「嘘!そこ、俺ん家の向かい」


「龍太郎の?奇遇だね」


嗚呼、本当に縁とは末恐ろしいな


「行ってみる?」


風花が首を傾けながら言う


「行くの?良いけど。そしたら何時行くのかしら?」


「放課後は?皆部活入ってる?」


「俺は入ってない」


風花の問いに俺は首を振る


「あ、俺男バスの助っ人呼ばれてる」


虎壱はぴしぃーっと挙手しながら言った


「…俺は…ないよ」


烈火は首を振る


「私も入ってないわ」


桃子も首を振る

…となると…虎壱以外暇か。虎壱以外


「にゃ!?龍太郎…」


あー。じゃあ放課後は虎壱以外空いてんだな?了解、虎壱以外空いてんだから今日は虎壱以外放課後校門前集合な。虎壱以外

虎壱以外全員で行くぞ虎壱以外でな


「以外以外連呼しないでよ!終わったら俺も行く!」


はいはいわかったわかった

虎壱以外は早めに行って虎壱は後からな

じゃあ虎壱以外放課後な―。虎壱以外


「いにゃあぁぁあぁぁぁあ!!!!」


いにゃあ?新しい悲鳴かそれ?


「じゃね、後で―」


風花がニコニコ笑いながら立ち上がる

そのまま屋上から


「了解」


「わかったわ」


「…うん」


「ハブらないでぇぇえぇええええええ!!!!!!!!」


屋上に一人…虎壱の絶叫が響き渡った


…ザマァ!





(ぴんほーん)


『はいはい、お?龍太郎君達!待ってて今開けるね』


インターフォンから白衣の声が聞こえて間髪を入れず扉が開いた


「いらっしゃい!玄輝の見舞い?あがってあがって」


白衣が笑って招入れる


「「「「御邪魔しまーす」」」」


ゾロゾロと部屋に入ると居間で毛布を身体にまいた玄輝がソファに座っていた


「や、ややや、ははは初めましてだね?ぼ僕はげん、玄輝です」


「元気じゃねえだろ!?」


あ、ガタガタ震える玄輝についつい突っ込んでしまった…


玄輝は胸ぐらいまである長髪を後ろで纏めてある

顔もかなりの色白でなんつうか『病弱』を体現した感じだ


「あ、あははは、は。でも玄輝だから…ケホッ…まあ今日は元気な方かな?」


「まじか…」


「そう、ところで…貴方よくヒーローになれたわね…」


呆れ気味に桃子が呟くと玄輝は頭を掻きながら言った


「いやあー…たまたまさあ…元気な日に携帯買い換えたら…ヒーローに…。俺しょっちゅう風邪ひくし身体壊すし病気で入院するから…せめて携帯とかお金浮かそうかなと思ったら…」


こいつはそんなパターンだったんだな

たまたまなのか…なんなのか皆携帯をこわしたり買い換えたりすんだな―


「そうだね。確かに初めて会った時は驚いたけど馴れるのは結構早いものだよ?」


白衣が紅茶の入ったティーカップを置きながら言った

馴れたのかこいつは…


すると一斉に皆のケータイのバイブが鳴った


『敵だ(や)(よ)!!!』


見事にハモるナビゲーションに苦笑しつつ俺は頷く


「何処?」


『商店街!』


結構近い


「あああああの、僕もいい?」


ガタガタ震えながら言われても俺は頷けないぞ…


「大丈夫大丈夫!変身すればた、多少はマシになるかか、から」


白衣をみたら頷いた


「よし、何かあったら私に言うんだぞっ?私こう見えて力あるんだよ―」


頼もしいっ!じゃあ改めて行く……



「置いて行かないでええええええぇぇえぇ!!!!!」



ドアを開け放って叫んだのはユニフォーム姿の虎壱だった

今更かお前


「ま、間に合った……。同点になったら、延長戦で、寒気がした、から、まさかのブザー、ビート、だよ…はぁ、しかもスリーポイントの、き、距離で…そっから、全速力で、走って…きた……」


肩で息をしながら床に虎壱は倒れこんだ

桃子がつかつかと近付いて行く

そして手を差し出して言った


「大丈夫なの?」


「「「デレた」」」


見事、俺達がハモると何故だか桃子は顔を真っ赤にする


「デレてないわよっ!自分で立ちなさい虎!」


虎壱はせっかく掴んだ手をペシッと振り払われて頭に茸を生やしながら隅でいじけてしまった


「い、いくわよ!無駄な時間を使ったじゃない!」


「そうだね。玄君立てる?」


玄君?


「玄輝君だよ。因みに龍君、虎君、鳥君、桃ちゃん」


「烈火だけなんで鳥なんだ?」


「朱雀って鳥でしょ?玄君は蛇と亀の融合体だからどーにもこうにも」


確かに。亀君とか蛇君は字面も微妙だしな

亀蛇君も…なんか変だ


まあそんな事をグダクダしながら俺達は商店街についた

店と店の隙間を奥に進む

そこには何故だかポッカリ開いた空間と土管が三本…古き良きドラ●もんの空き地みたいな


そこでそれぞれ携帯を取り出す


「うっし。じゃあ行こうか!」


虎壱の合図でそれぞれ撮影するものを取り出した


(待ってました!いくで青龍!)


「了解」


俺は初代相棒の携帯でDJ風の服に変身する


(さあ、行きますよ白虎)


「おっしゃ!任せて鴇為!」


白虎は白いゲーム機で中華服に近い格闘服


(朱雀、今日も張り切ってけよ!)


「はいはい、おとーさんにお任せを」


朱雀は電子メモでコートにゴーグルの空賊風


(さ、行こうかふーちゃん)


「あいあいさーっ!」


風神は時計でスポーティーな動き安さ重視の服


(お待ちしておりました鳳凰様)


「わかってるわ」


鳳凰は手鏡でドレスモチーフのコートみたいな服


(おまたせ。大丈夫?)


「うん。今は元気…かな?」


最後に玄武が体温計で医者みたいな服装に変身した


改めて見ると個性的だよな、俺達

アイコンタクトをしてから一斉に地面を蹴っていつもと同じ悪者の前に躍り出た


「にゃーっ。にゃーっ」


………。同じ…?


「にゃーっ!」


…白虎?


「にゃああんっ」


全身タイツが何かおかしい

いつもはあーだのいーだのうーだの言ってるのに今日は白虎二号機になってる


つーか、全身タイツに猫耳生えてる…


『「残念ながら萌えないよ!」』


全身タイツに全力で叫んだのは朱雀と補佐に回ってる稲穂だ


すると全身猫耳タイツの中から一人の女性が現れた


「今回は私がお相手致します青龍様…とそのお仲間の方々」


『「メイドさん…だとっ?!」』


仲良いなぁお前ら!?


「私の名前は黒猫(ケットシー)…。龍夜様の側近をさせていただいています。今回は無礼ながら私が青龍様の敵でございます」


あん…っの馬鹿兄貴!メイドまで誑かしたかブラコン!ロリコンが!


「望む所。勿論女だって容赦しねーよ?」


「承知しております」


黒猫が頭を四十五度ぐらい下げる


「じゃあ、青龍は黒猫。残りは雑魚を倒して行くか」


朱雀が言って俺達は頷く


「それでは…転送!」


俺は棒をだす

そのまま黒猫に飛び掛かった


「失礼致します」


黒猫も服の裾からナイフやフォークを取り出して構えた


そうこなくっちゃ。楽しくない!





「よし。転送『バズーカ』」


一方


朱雀はバズーカを取り出すと清々しい笑顔で雑魚を見る


「準備おk?」


聞いてるくせに「準備」のとこでガチャコッと音がして「おk?」で発射するあたり歪みない悪者ヒーロー感がする


案外広範囲に攻撃できるのは風神もそうだった


「転送―…『団扇』っ♪」


自分の背丈の二倍ぐらいはある団扇を軽々と持ち上げて猫タイツを吹き飛ばす

あああ、白虎が飛ぶ飛ぶ!


「面倒ね…転送『カード』」


そんでもって桃子はトランプを使うらしい

一見薄いプラスチックで透かしが裏表入っているのに何故か反対の透かしが見えなくなっている

しかも切れ味抜群。だけどさ、流石に白虎を巻き込んじゃ駄目だろ…


「うわあ、皆凄いね―…。よし。僕も!転送『大剣』!」


んでもって玄武はまさかの身長と同じサイズの大剣だった


「よっ…。久々だけどいくよ」


軽々と振り回すから案外力はあるらしい…と思った時だった


「ゲホッ……あ」


「「吐血したぁぁあぁあ!?」」


慌てて風神が駆け寄る


「大丈夫?!あー…無理しちゃダメだよ…」


「大丈夫大丈夫。よくあるから…!」


ないないないない


口に付いた血をぬぐいながら玄武はニコッと笑った


「すぐ吐血するけど気にしないで!…ゲホッ」


言った側から血を吐くな!


でも案外吐血を抜けば強い方で次々に猫タイツを倒している

流石黒!後から仲間に入る強い役なだけあるな

…吐血するけど…


人数が多い方が手っ取り早い

猫耳全身タイツを倒して俺が黒猫を倒すのにさほど時間は掛からなかった


「…。…流石青龍様です。それでは失礼させて頂きます」


黒猫はまた頭を四十五度ピッタリに下げて立ち去った


残された俺達は暫く惚けていたが一番先に我に帰った夢吉の


『撤収!』


で慌てて帰った





ホントにしょーもない後日談


玄輝は相変わらず学校に来たりこなかったりで時たま校舎内で白衣が歩いているのを見るようになった


桃子は虎壱と何だかギクシャクしっ放しでなんだかなぁ…という所だ


マジで女ってわからない


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