MISSION6 潜入英雄部隊本部
カチカチカチカチと誰かがシャーペンをノックする音が響く
まあ、響かせてるのは俺なんだが…
その隣りでは夢吉が気まずい顔で俯きながら座っていた
(ちょお、龍太郎…そのシャーペン止めや…メッチャ怖いねん)
「…………………」
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ
(スピードあげなくてええねんで!?)
とりあえず無視して不機嫌丸出しでシャーペンをノックし続ける
無論、十分も二十分もノックし続けたら三本程度入れていたシャー芯は全部出ている訳で
だからシャー芯が二三本、机の上に散らばっている
まあ、こうなった理由はとりあえず約二日ぐらい逆上ったところから説明した方がいいと思う
◇
二日前―…
無事馬鹿兄貴を退治して早数日
俺の家に虎壱と烈火が遊びにきていた
それなのにリビングのソファに腰掛けて目の前の『モノ』を睨んだまま俺たちは動かない
傍から見りゃあケータイにガン飛ばす不審者なんだが…
「で、誰が脅す(はなす)?」
「龍太郎…普通、脅すって書いて話すとは読まないって…」
「でも…今回は事実上脅すだよね…」
飽きれた風に虎壱が言う。隣の烈火もビクつきながら言った
まぁ、それもそうなんだけどな
だから訂正はしない
「虎壱、お前のナビゲーション…」
「無理無理無理無理!鴇為には聞けない!俺、鴇為より立場低いから!!!!」
全て言う前に全否定するか?普通
んだよ、使えねーヘタレだな
「にゃあぁぁあぁぁぁあ!!!!何とでも言えばッ!!どーせヘタレだよ!!ヘタレですっ!」
開き直る程怖いのか…………
「じゃあ、烈火は?」
「う…引き籠もりが脅せると思うなら…やるよぉ……?」
「スマン、お前は問題外だった」
駄目だなこいつら
あー…仕方無いな全く
俺はケータイをとっていつもどおり例の番号を打ち込む
『なんやー?龍太郎。珍しいやん休日に』
聞き慣れた声と顔が出て俺は少し咳払いをしてから言う
「はーい!正義のヒーローせーりゅーからっ夢ちゃんに質問があります♪」
『やめぇぇえぇぇえっ!!!!!なんや、メッチャ機嫌悪いやん!最悪やん!しかも口調がさらにキモいで!』
「ひっどーい。だから仕返しにぃ夢ちゃん脅しまーす♪…あ、ネタじゃねぇよ?」
『切らせてぇっ、接続めっちゃ切りたい!でも切れない!あああああナビゲートルールなんか嫌いや!!』
一人で暴走している夢吉にニコッと清々しく笑ってから用件を切り出す
「夢吉さぁ、この前の戦闘での俺たちの会話全部聞こえてただろ?」
『ん?そりゃそーや。高性能スピーカー舐めたらあかんで!造ったのはウチやで!』
「まじか。…それは置いといて。東が言いかけたスーパーなんちゃらって何だ?大体ヒーローの選考基準がさっぱりなんだけど」
『!……そうやな。スーパーなんちゃらってのはウチらでは呼び方がちゃうねんけど、極秘事項なんや。だからここじゃ話せないねん。選考基準はいつもやってるヒーロー会議で言ってんやけど………』
「けど?」
『青龍も白虎も朱雀も一度も出てないやん!!!!!!!!』
………………あ。
『メール送ってんにシカトばっかりやん…。いつもは戦闘後一週間以内には開いてんねんで?』
「だって…面倒臭いし」
「あったんだそれ……」
「引き籠もってたから………」
『最悪やん…それ…』
「で、それはどーでもよくて」
『ええんかい…』
「機密事項とやらを教えて欲しいんだけど?」
『?フツーにええで。今ここじゃ言ったらあかんねんけど本部きてくれたら教えるで?』
「ふーん。じゃ次の会議で教えろよ」
『ええで。場所と日時はまた連絡するさかいちゃんと出てな。他にはなんかあるん?』
「や、別に特には無いんじゃね?」
『じゃええね。ほなまたー』
「おー。じゃあな」
電源を切ってケータイを閉じて一息つく
そして―…
「今の別に脅さなくてよくね?」
「「………あ―…」」
来たら教えるって、始めっからサボらなければ良かった話で…
徒労に終わった
◇
当日
俺達は電車に乗り一番始めにケータイを買った店に出向いた
「いらっしゃいませぇー」
普通に薄っぺらい笑顔をくれるオネーサンに俺は言った
「あの、『ヒーローみたいに格好いいケータイ』を予約してたんですけど」
「はい。何時御予約になりましたか?」
「『ヒーローになった時に』です」
虎壱が俺の後を引き継いで答える
「色は何色でしょうか?」
「ふぇっ…ああ…『赤』と『青』とぉっ…『白』ですぅ」
何故だか俺と虎壱の後ろに隠れて烈火が答える
流石ひっきー。人見知りを発動したか
「かしこまりました―。こちらへどうぞ」
オネーサンはニコリと笑ってカウンターの奥の部屋に俺達を案内した
カルガモ宜しくついていくと広めの部屋の中央に円が書いてあり中に複雑な幾何学模様が描かれていた
「はぁい、じゃあその円の中心に立ってくれるぅ?」
奥に入るとオネーサンは爽やかスマイルから敏腕ホステス様様な顔に変わった
あ、そうだ。今度はホステスキャラも挑戦してみよう
「り、龍太郎変なこと考えてないよね…?」
「いや全く?」
鋭い奴だ
「じゃあ―頑張ってねぇ。青龍、白虎、朱雀さん達」
ウインクをしてオネーサンが顔の横で指をくるりと回すと円が光った
「いってらっしゃぁーい。帰りは連絡しなさいよぉ?」
「「「はーい」」」
声を揃えて挨拶って…幼稚園児か俺達は!
直ぐに視界が真っ暗になる
浮いている様な落ちている様な…フリーフォールに乗ったみたいな感覚が襲ってきて平衡感覚が一瞬なくなる
けれど直ぐに地面の感触が足に戻った
「にゃいっ!?」
俺は上手く着地したが虎壱と朱雀がバランスを崩した
烈火の方は上手く洋服の襟を掴めたが虎壱は手が掠って顔面から床にぶつかった
わざとじゃないぞ?
…あ、いやだから、信頼無いのは判るがこれはマジでわざとじゃねーぞ…?
「いったそぉー……」
烈火が床に伸びたままの虎壱をチョンチョンとつつく
すると聞き慣れた声がかかった
「またせたー!堪忍な龍太郎!」
り、リアル…
「リアル夢吉、俺よりちっさ!」
「いやぁあぁああぁあ!!!!」
俺が言ったら夢吉が絶叫した
「言わんといてぇ!それはやめぇぇぇえぇ!!」
小さい…と言っても俺は男子平均より高い方だから夢吉は小さいの部類に入りにくいけどその俺の目線より下…まあ男子に混じったら小さいけど女子に混じったらデカい方…って感じだ
「まったく…どこで寝ているのですか!虎壱!!はしたないですよ!」
「にゃあぁぁあぁぁぁあ!!!!!ゴメンナサイゴメンナサイ!!!起きます起きます今起きます!!!!!!」
鋭い声に虎壱が飛び起きる
すると頭が烈火の顎に当たって今度は烈火がダウンした
「にゃあぁぁあぁぁぁあ!!!!烈火ぁぁぁぁッッッッッ!!!!!???」
自動自爆スイッチが入りました
スイッチを入れた青年は夢吉の隣りに立った
俺よりデカいからかなり身長差が目立つ
ざ☆デコボコンビ
「鴇為!ちょお、隣りに立たんといてぇな。ウチがちっさく見えるやん」
いや、元から小さかったし!
「ときため…っつぅと確か白虎のナビゲーションだよな?」
「そやで!紹介するな!こっちはウチらと同じヒーロー部隊のナビゲーションで鴇為や!んで鴇為、こっちはウチの担当の青龍…青ヶ島 龍太郎やで」
「鴇為です。ウチの白虎が迷惑ばかり…申し訳ございません」
「いや。俺もいじり倒してるからな…青龍とか龍太郎ってよんでくれ」
あれ?なんかコイツ…
「わかりました。で、虎壱!」
「ひにゃいっ!?」
あれ…このデジャウ…?
「貴方は全くヒーローとしての自覚をしっかりと持ちなさい!だからいつもいつも…」
「ゴメンナサイ!にゃあぁぁあぁぁぁあ龍太郎タスケテ…!」
もしかしたら次のセリフは…
「全く貴方は…」
『青龍が助けるとでも思っているの(です)か!?』
「あれ?……はっぴぃあいすくりぃーむ…?」
ようやく復活した烈火が小さい声で呟いた
HAPPYICECREAM!
見事にハモった
ところで烈火、アイスはおごらないからな
「……………」
「……………」
ガシッ!
俺と鴇為は無言で腕を組んだ
虎壱は泣きそうな顔で部屋の隅へと猛ダッシュで逃げる
「貴方とは気が合いそうですね」
「ああそうだな」
清々しい俺達に対して、虎壱はライオンの前の子猫の如く震えてしまっていた
どうしたんだ?全く
「ところで、鴇為。十嶋はどしたん?なんでおらんのや」
「直ぐに来るでしょう。一応…一応一緒に出ましたからね」
「へ―…そうなん…」
「んだよ、そんな顔すんなって!悪かったな遅れて!」
夢吉が溜め息を付くと同時に熱血様々な太陽の如く暑苦しくむさ苦しい…そんな声がかかった
「としまっ!」
「十嶋ァッ!」
喜んで烈火が言った言葉をコンマ一秒、ピコ単位で十嶋と呼ばれた奴は訂正した
「誰が年増だ!誰が!俺はこれでも夢吉より年下だ!!!」
マジで!?
俺は十嶋をよく見てみた
外見はムッキで如何にも怖そうな雰囲気を出している
喩えるならそうだな…職人の怖いオッチャンいるだろ?あんな感じだ
そして腕にはカッコいい刺青!もしくはタトゥー!
そう!『讃岐…
「うどん』………ってオイコラ!!!!!あからさまにおかしいわ!!!」
「どうした!?」
ついつい突っ込んでしまった
「まさかの!?うどん!?讃岐うどん!?うどんんッ!?」
「おお、これか?俺、讃岐うどんっつうバンドやっててな」
バンド!?と虎壱と烈火が変な声を出した
「讃岐…うどん…って…変わった名前のバンドだね…十嶋」
「讃岐うどんだと!?」
「にゃひぃっ!!!?龍太郎…!!?」
『讃岐うどん』と言えばあの有名ロックバンドでこのまえ『KATUDON』とコラボレーションした~一夜限り限定スペシャルコラボレーション丼シリーズバンド 大阪のオバチャンもびっくり お前らどんだけロックが好きですか?!~総勢二十組以上のコラボレーション企画 誰と組みたいデスカ?プログラム十二番『俺達こそが王道コラボ!丼の底力見てみなよ!いくぜ!DONBURI!~猫まんまもあるよ☆うどんとカツにトマトを乗せて召し上がれ♪~』…の『讃岐うどん』だとぉっ!?
「長いわァッ!!!!!!!!長い!無駄に長いッ!地の文が長い!!!なにその題名!?サブタイトルがもう本文!?なにそれ!!?ってか龍太郎このまえの休日、連絡つかないと思ったら何処行ってんの!?何やってんのさ!?」
「お、なんだ?知ってるのか?」
「勿論!!うはWWWW超ヤベェ!!本物!モノホンっ!このまえのコラボ超パネェっスよ!きゃっはぁー!テンション上がる!上がってる!!」
「龍太郎ォッ口調がキモいで!」
「にゃあぁぁあぁぁぁあ!龍太郎!ちょおっ、ねえええ!?」
「え?え?年増以外に…有名なの…!?」
「十嶋ですよ。烈火さん」
「有名…?だったかぁ?」
「なにいってんだよ!有名だっての!トマティールズとか猫まんまに並んで!最近なんてグッドメディスンテイスツビターとコラボしたんだぞ?!知らねぇの?!」
「「「知らねぇよ!!!!!!!!!!!!!!」」」
俺と十嶋を覗く全員が叫んだ
俺は不機嫌そうに頬を膨らませてみた
「なんで知らねぇんだよ―。有名じゃんかー。あのロックいいじゃんかー」
「もーやだよ、龍太郎キャラ変わりすぎ!怖いから!恐いから!そろそろ元に戻って!」
「これが素だぞ」
「…あーもーしゃぁない。ほっといて仕事の話すんねんで」
「チッ空気読めよ…………あ?嗚呼別になんでもないぞ?」
「現金!!!!!」
虎壱が叫んだ
現金とはなんだよ失礼だよなぁ?
とにもかくにも仕事の打ち合わせに来たんだから俺達は夢吉に引き連れられゾロゾロと会議室へと行った
◇
「待たせて堪忍な―来たで―!」
夢吉が扉を開けて入ると長めのローテーブル…っぽいのを囲んで何人かが座っていた
一番手前の椅子に座っていたツーテールの女の子が俺達を見て声を上げる
「あ!青ヶ島、白幡、赤城じゃん!」
「え?知り合いだっけ?」
虎壱が首を傾げると女の子は笑って言った
「アタシはC組!緑濱 風花。ヒーローネームってか仇名は風神!けどごついからふーちゃんでヨロシク!」
「え!?緑濱さんが!?気付かなかったー…」
嗚呼そうか。確か虎壱は前のクラスが同じだったな
「だよねぇ。あ、んでアタシのナビゲーション弥生です」
「初めまして。よろしくね」
風花の隣りに座っていた大和撫子のオネーサンが会釈した
「なんや、知り合いみたいで良かったわー。じゃあついでに全員紹介したるで。席着いてなー」
「了解」
俺達が座ると夢吉が言った
「じゃあ知ってるかもやけど確認な。まずリーダーは赤城 烈火…朱雀やで!」
「それと俺がナビゲーションの十嶋だ」
烈火が小さく会釈をした
「んで次に青ヶ島 龍太郎。青龍や。ナビゲーションはウチ、夢吉な」
俺も一応会釈はする
「でこっちが白幡 虎壱…白虎や!」
「ナビゲーションは私、鴇為です」
「よろしくなっ」
虎壱は無邪気に笑って言った
「で向かいのツインの娘が緑濱 風花。ふーちゃんこと風神やで」
「ナビゲーションは弥生です」
「ヨロシク!」
風花も笑って会釈した
「あっちのお嬢様は鳥華院 桃子…鳳凰やで―」
「ナビゲーションは僕、時雨です」
「宜しく頼むわ」
桃子はツンとすまして言った
「次に今日は来る途中、熱中症と体力不足と熱出して腹痛と頭痛で吐血して欠席なんやけど黒河 玄輝、玄武や」
「…ってオイコラ!!!体よわっ!?しかもなんだよ名前が『げんき』かよ!ありえねーなオイ!?」
「突っ込んだらあかんて!」
「ハハハッ、まあまあ」
爽やかな声の方を見ると白衣を来たイケメンが笑っていた
「玄武ナビゲーション、白衣です」
「ネーミングセンスねぇなぁぁぁぁぁっ!!!!??」
「龍太郎に言われたくないよねソレ!?」
白衣って…
白衣って…
「はいっ!質問!」
「?なんや?」
「ズバリ君達はどんな関係なんだい!!」
「「…はい?」」
俺達をびしいっと指差して好奇心に目を輝かせる女性を俺達は見た
「いきなりそれなん…稲穂…」
夢吉が苦笑いで言った
「申し遅れました、私は黄色ナビゲーション及び武器開発部所属、稲穂です!」
ショートカットに眼鏡をしていて可愛い部類にはいるオネーサン、稲穂は敬礼をして見せた
ついつい敬礼を返す俺達もいたけどな…
「稲穂はまだ黄色がおらんから二重任務しとるん。ウチも一応同じとこに所属してるで」
へぇー
なるほどね
「そんで、ヒーローの選抜基準とスーパーなんちゃらってのについてはウチと稲穂で話すな」
「夢吉が?」
「…ウチ、初代に付いてたから」
始めて夢吉の笑顔が曇った
けれど直ぐにぱっと笑う
「じゃあ長くなるで。少し我慢してな」
本当に長かったので俺が軽くまとめることにする
◇
ヒーローってのは前はいなかったそうだ
けれどある日、国家組織が犯罪抑制の為あるプロジェクトを開始した
それがヒーローの始まり
『実験』のために選ばれたのは赤、青、黄、白、緑、桃、黒を象徴とした七人の男子…いや、正確には六人の男子と一人の女子だった
『実験』は二人を抜いて全員成功した
失敗したのは黒の男子、そして……青の女子だった
黒は強過ぎる力で成長が逆戻りしその成長すらとまった
青は…………その力自体に耐えられず記憶を失い身体の幾つかの機能を失った
黒は復讐の為に国家組織を抜け、現在に至る悪者組織を作り上げた
………………………で!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
素晴らしきかな。こっからが笑い事
その黒…もとい悪者は自らの力の一部を一枚の板に封じ込めた
その力を十四分割し、自分の部下に分け与えようとした
黒の力は膨大な物だったからそれを取り込めば組織ぐらい潰せる
…が!鉄の板なんざ誰も喰いたかねぇだろう?
仕方無しに黒は何を考えたか板チョコに力を込め直した
そしたら力がたまたま暴走して板チョコがバラバラに別れてびゅーん(笑)と飛んだ訳ですよ奥さん
はい、では問題です
その板チョコは幼き日の俺と兄貴の『おやつ』に紛れ込みます
そんときの俺はまだちっちゃいお子様です
どうするでしょう?
はい。フッツーに食べました
食べましたとも。ぱっくんちょっと
…食べました
「バカァァァァァァァッ!!!?」
自分が虎壱化する程俺は全力で叫んだ
「んなこと言ったらあかんって。誰も突っ込むん我慢しとったんやで―?」
「まぁそうだよね。普通。それで、私達が担当するヒーローはその力を取り込んだ人達なのだよ」
「…そんな悍ましい物食べたんだね…俺達…」
烈火が言った
確かになんか胸の辺りがムカムカしてきた気がしないでもない
「スーパーなんちゃらは…多分その板チョコの事ですよ」
「ウチらではハイパーブラック板チョコレートDXバージョンZフロム∀(ターンエー)って呼んでんねんで―」
なげぇなオイ!
しかも無駄に英語使いまくってるじゃねぇか!
「開発部メンバーに付けたい名前アンケートしてついでだから全部付けたんですよ―」
無駄な親切だ!
「因みにあれでも略称だよ?私かーなーり頑張って覚えましたが多分俺様三話分使いますよ」
言わなくていい!
泣くから!主に作者!ケータイで文字打ってるんだからな!?
「それでですね…まっことに言いにくいんだけど…」
稲穂が言い淀んで目を泳がせた
夢吉や他のナビゲーターもスッと目をそらした
「なんだ?」
「…えーと…実はソレを取り出す方法も今無いし、更には身体に及ぼす影響もわからないのだよね…」
「………………………」
(バキッ)
いつぞやの如く
俺はシャー芯を折った
…いや、今回は他のメンバーも一斉に折った
そして長い長い回想を終えて冒頭に戻る訳だ
「烈火、頼むから機嫌直してくれよ。な?」
「………やだ…」
珍しい。烈火が即答した
「そおですよ―…桃子様ぁ…」
「五月蠅いわ。犬」
「すみませんっ桃子様っ!」
嬉しそうだな時雨?!
「ごめんなさいね、ふーちゃん。伝え忘れてて…」
「しーらないっ!」
普通だ。一番コメントに困る普通さだな
「…虎壱。早く機嫌をお直しなさい。確かにこちらも悪かったですが…」
「知らねぇよ」
あ、昔の虎壱だ
目がすわってるぞ
結局黙りきったままの俺達に折れたのはナビゲーターの方だった
「堪忍な。伝えんかったのが悪かったわ。…でも最重要事項で教えるんが遅くなったんねん」
かなり悄気た夢吉に、そろそろ機嫌を直していいかなと思った時横からティーカップが置かれた
「え?」
辺りを見回しても誰もいない
そう思ったら下から足がつつかれた
「…え?!」
二ヨッと笑ったのはオールバックで長い髪を一纏めにした男の子とも女の子とも見分けが付かない『アンドロイド』だった
何故判ったのかと言うと手が大きな手袋をつけたみたいにゴツかったし、何処からかウィーンとかいう機械音が微かにしたからだ
「…ありがとう」
「うぃ!」
彼(または彼女?)は頷くとまた別の人の席に行った
「皆、喧嘩ばかりしたら疲れるよ。ハーブティーだから落ち着くんじゃないかな?」
白衣が笑って言う
確かに爽やかな香りは落ち着く
それと同じ白衣の爽やかな声も気分を落ち着かせた
「確かに言わなかったのは悪かったけど…でも、言いたくても言えなかったのは本当。余り攻めちゃだめだよ。…力は使いよう。君の強い力も毛嫌いせずに付き合っていかないとね?君も、俺も。あ、これ先輩からのアドバイス」
白衣の声はストンと落ちる
俺は溜め息を吐いた
「…納得は無理だし、地道に付き合ってくのも難しい。けど良いぜ…やってやるよ。俺の馬鹿兄貴を止めるのも弟の役目。それに……面白そうだ!」
「龍太郎、『面白そうだ』のとこの笑顔が清々し過ぎるから!」
因みに虎壱を弄るのも楽しいです!
「いやぁあぁああぁあ!」
何時も通り虎壱が絶叫する
ソレを流して俺は会議室の中を見渡した
皆少し考える素振りをした後ニヤリとした様な俺みたいな笑顔になる
虎壱を見たら同じ笑顔で笑ってきた
やっぱ、そうでないとな
悪者ヒーローにはその笑顔がお似合いだ
「さて、仕事しますか?」
ケータイを出す
開いた
変身
―――…さあ、行こうか?