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俺様ヒーロー  作者: 真山羊野
本編
4/45

MISSION4 偽者ヒーロー

俺達の通う学校では何故だか文化祭体育祭合同で一週間もかけて行われる


まぁ生徒数が千をゆうに超えるマンモス校だからというだけの理由なのだから別にどうこうないが…ほら、クラスの出し物とか…


昨年の俺のクラスのコスプレ喫茶は俺に見事なトラウマを残していった

ったく、鴨甲斐…この恨み覚えとけよ?

ミスコンもだ…誰だよ無断で勝手にエントリーしやがったのは

しかも『さすが龍太郎君!』じゃねぇよ

本気で恨むからな鴨甲斐ィッ!!


けれど俺は今去年の喫茶店がものすごーく可愛いお遊びに思える

表情を引きつらせたまま黒板にでかでかと書かれた文字を見る

誰だ。誰なんだ?クラスの出し物を…


「ヒーロー喫茶ァッ!?」


にしやがったのはぁぁぁぁっ!!!

心の中で絶叫する。実際にしたいがそれは常識的に辞めといた

一方で俺と同じ顔をした虎壱が前の席から回ってきた一枚の紙を見る


「え?何これ、歴代ヒーローを書いてください?(引き気味)ぇ…殆どでてんだけど。………………アレ?アレアレアレ?!び、白虎、青龍…す、朱雀?!」



バキリ



俺と烈火が同時にシャー芯を折った


「(限り無く小声で)ちょっ、せ、青龍って!どーすんの龍太郎!着たらバレる!」


そりゃ、そうだ

たとえ正体が判らないような不思議な力でも目の前で変身をみせられたら意味が無いのと同じ

あの服を着たらドボンだ

後ろの席を振り返ると烈火は顔面蒼白になっている

俺と目が合うと


「お、おとーさんもこれはどうにも…」


と言った

って…オイコラ烈火、素が出てるぞ素が


全く、こういう事態になるといつもフォローに回るのは俺の役目だ

仕方無い。手をまわしてやるか

間違っても衣装を着なければならない…なんてとばっちりはくらいたくねぇ


「委員長、俺ら裏方やるし。調理係、名前空いてんだろ?俺と虎壱と烈火入れとけ」


俺は前で立ってクラスに役割分担を呼び掛けている委員長に声を掛けた


「え?珍しい。でも料理できんの?」


俺の悪友でもある学級委員長、我らが東野 康宏様は皮肉ってますと言う笑顔で聞いてくる


全く持ってタチの悪い猫被りだとは思わないか?


「俺今は実質一人暮らしだし、虎壱は自分の事は自分でやる家だから出来るし烈火はプロ並だぜ?つーか服ヤダし」


その答えには流石に康宏も苦笑いになった


「…だろーな。まぁいいよ。三人入れるけど、虎、赤城いいか?」


「赤城じゃなくて烈火って呼んでやれ。いいよな?」


「まあね」


即答したのは虎壱


「…人前に出ないだろ…?」


ややあって烈火が頷いた

てな訳で二人が承諾し俺達は人前に出ると言う役を逃れた





「じゃっじゃじゃぁーん」


文化祭まであと二週間。そんな日のホームルーム


それぞれ各個人で仕事内容の確認や小道具製作などなど、チマチマした作業やら何やらをしていた


んでもって、俺達は烈火の机の周りに椅子を並べてメニュー製作と材料計算をこれまたチマチマとやっていた

素晴らしく平和で全身タイツがやって来ていない事が和やかな雰囲気を作り上げる


なあ、とりあえず想像してみろよ?全身タイツが十、二十ぐらい…意味不明な鳴き声(?)をあげながらウゾウゾ…と…顔に仮面を付けてるから表情が判らないから更に気持ち悪い。想像出来たか?

ヒーローも辛いんだぜ?


それはまあともかく、俺達はあからさまに音ハズレな声の主を一斉に見た


「にゃははーっん、出来ました出来ました。ウェイトレスの衣装かんせーい☆ウェイトヒーロー軍団かもーんっ♪」


衣装担当の女子…で俺のトラウマ鴨甲斐 薫は満面の笑みで教室のドアを勢いよく開けた


「「「ぶっ!ゲホッゴホゴホ…」」」


同時に俺ら三人が一斉に噎せる

隣からガタンッと音がして見てみると虎壱が椅子から滑り落ちていた


歴代のどこだかで見た仮面ヒーローとか全身タイツっぽい服のヒーローと共に俺達の服を着た奴等もいた

どれも完成度が高くそっくりだ


「…うっわぁー…俺達あんな格好で闘ってたんだ」


「他人の目からだと痛々しいな…」


「…ひぃッ…や…やめよぉよあれはぁ…」


ついつい三人とも仕切りに動かしていたシャーペンを取り落としかける


横目で虎壱を見ると苦笑いとも取れそうな引きつった笑顔で『俺達』を見ていた

方や烈火は半ばメドゥーサに睨まれた如く石化していた


「フッフッフッ。見直したかしらぁ諸君!これぞ皆様の味方、薫様の底力にゃのだよ!」


ださんでいいわ!!!!


「…でもさぁ、龍太郎君…虎壱君…」


俺の制服の裾をひっぱって弱々しく烈火が声を上げる

いつもは頭の上でクルンと跳ねるアホ毛もヘニョヘニョとしている


…。ふにふにふにふに…


「…もしもあの格好で」


ふにふにふにふに


…何してるの?龍太郎?

あ、面白そう俺も俺も


「敵が勘違いして…」


ふにふにふにふにふにふにふにふにふに

ふにふにふにふふふにふにふふににふに

ふふにふにふにふにふふふふにふにふに


「何してるの!龍太郎君、虎壱君?!」


「「嗚呼。ゴメン。つい気になって」」


二人で萎れたアホ毛をつついていたら烈火が珍しく叫んだ

ふにふに…面白かったのに


「…とりあえず、あの格好。敵が勘違いしたらどうする?」

それには俺が頭を振る

「んにゃあー…そりゃないだろ。闇兎も言ってたぜ?民間人とヒーロー悪者の違いは俺達は無意識で見分けるんだとさ」


「闇兎ってあのツンデレ?!いつまた闘ってたんだよ?!」

虎壱が驚いて立ち上がりかける

今日はリアクションでかいなお前


「闘ってねーぞ?」


「…でも、前の時は言わなかったけど…」


「嗚呼、メル友。ツ●ッターでフォローしたり、ア●ーバ●グでたまに会ってるぜ」


「なるなよ!もう色々とアウトだよ!?」


「●イッターならおとーさんもやってるぜ!」


「そこかよ!突っ込めよ!てか、素が出てるよ!素面だよ!」


あれ?

したら、虎壱…仲間外れじゃないか?

パソコン環境無いのか…可哀相にw


「あるよ!入ってるよ!ツイッ●ー!だから地の文を声に出すなよ!」


え?

だして…ねぇよ…?


頭平気か?


「読者にはわからないからぁぁ!話してるから!捏造すな!可哀相な目で見るなぁぁぁぁぁぁァッ!!!!!」


騒ぐ俺らをクラスメイト達は見ていぬ振りをする

俺達には最低限の干渉しかせずあとは無関心無干渉

それが平和な暮らしをする為の暗黙のルールだからな


「まぁ、そんな馬鹿いやしねぇだろ」


馬鹿にした笑いをする

だか、まさかのまさかだとは思うがいないよな…?


ったく杞憂になればいいが…だから…

だから





「だから嫌だったんだよぉっ!!!!」


全力で闇兎が叫ぶ

俺達は校門前で頭を抱える敵及びメル友を見た


「あの馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ァ!」


闇兎の悪者時は白髪朱眼だったが今は髪は甘いチョコレートブラウンで瞳は黒くなっている

まぁカラコンして染めただけらしいが


「…悪者も大変だね」


「同情するなら勝ち星頂戴ッ!何で間違えるかなぁ、何で第六感に従わないかなぁ!!!?」


これまでの状況を掻い摘まんで説明すると、要するにいたんだなこれが

誤解する馬鹿が


あちら側も緊急事態という事だから仕方無く俺達と闇兎が協力し、探し出す事になった


ちなみに闇兎らの悪者はやたらめったら民間人に手を出すとペナルティーがつくらしいので必死に探し回っている


「えーっと、名前はなんだったか?」


「東。東だよ東…とりあえず、いざとなったら変身してフルボッ…闘って、ボコッ…倒して。まぁ手加減しなくていいよ。ジャンジャンフルボッコって」


容赦ないなー

でも自業自得そうおもうよなぁ?


「それじゃあ、俺と闇兎は校内探すから、虎壱と烈火は校庭な」


「判った。見つかったら連絡ヨロシク!じゃあ、正午に時計塔前で」


俺達は闇兎と俺、虎壱と烈火の二手に別れるとそれぞれ校内と校庭を探し回った



「いねぇなぁ…」


「簡単に見つかりそうなのに…」


ダラダ…いや慎重に辺りを見回しながら俺達は校内を巡っていた

嫌がらせな程に無駄に広い校舎内で頼れるのは己の直感と第六感のみという馬鹿みたいに気が遠くなる捜索方法でしか探せないというのは正直…面倒臭い


電話でチマチマと校庭組と連絡を取るがあっちも空振りらしい

ってか、人がごった返した校庭で千分の一ぐらいの確率を頼るのは無茶というものだ


まあ、無理だろ

うんそうだな



……………。





帰ろう。





「バカァァァァァァァッ!」


耳元で叫ぶなよ


「はくじょーものっ!そこは探そうよ!地の文ヤル気なさすぎるよ!正義は何処ッ!てか、なにかもう末期だよ!!!!?」


「うわっ、すげぇ!虎壱二号だ――wwwww」


「!←コレついてるのに超棒読みはやめてぇえええええ!」


俺の回りの奴等は素晴らしく弄り甲斐があるな

あーよしよし、仕方ねぇなぁ


「…一緒に探して…くれるんだ!」


闇兎が涙目で俺を見た


「やっぱりなんだかんだで正義のヒ………」


「先帰るから、乙!!」


「…―ローじゃなかったあああああああ!!!」




当たり前だ



「誰がやるか。んな面倒臭い」


「言っちゃったぁ!ヒーローなのに!…もういいよ。疲れた」


「チッ…つまんねー奴」


「悪者スマイル…完璧じゃないか。転職しない?俺達みたいな悪者に」


「だが断る」


「断られた?!」


二人で歩きながらコントみたいな会話をしていると俺の携帯のバイブがなった

名前は…お。虎壱か


「あー…コチラ青ヶ島。どうした虎い……」


『ヤバいよ龍太郎!窓の外!第一校庭見えるっ?!』


「?嗚呼」


俺が外を見ると毎年恒例ミスコンが行われていた

そのステージの上一番端で今にも泣きそうな顔をした奴の姿に俺は上履きを投げたくなった

…実際そうしかけて闇兎に全力で羽交い締めにされて止められた


「あの馬鹿…!!」


ステージにいたのは俺…もとい青龍のコスプレをしたクラスメイトだった

どうやら昨年の俺と同じ道を辿ったらしいなアイツ


「なにあれ!?あれじゃあ丸判りじゃん…!」

闇兎が窓から身を乗り出しながら言う

俺はしばらく考えてから携帯越しに叫んだ


「チッ。仕方ねぇなぁ……虎壱!」


『何?』


「放送室を乗っ取れ」


「「「はぁっ?!!!!」」」


俺を覗く三人が耳元で叫ぶ

キーンとする頭を振って俺は言った


「だぁーから…多分こんだけ目立つのに来ないのは気付いて無い…またはあれは俺じゃないと思って帰ったかだろ?だったら駄目押ししてみるぞ。まずはだな…」


俺は一応声を潜めて計画を三人に話した


要約するとまぁこういう事だ

毎年毎年、ミスコンが始まると放送室から様々なミスコンの実況中継が入る

例えば誰々に投票してください…とかいまは誰々が人気です…とかまぁ要するにそんな感じのモノだ

だがこれは放送部がやってる訳じゃなく、只のモノ好きが勝手にやってるだけだ


因みに、放送部もその方が面白いからとそこの辺は文化祭という名目にして寛容で見逃している

だったら、その実況で駄目押しにワザと東とやらをおびき寄せようと言う話だ


俺と烈火、闇兎はステージ近くに潜んで東が現れたら変身して撃退

虎壱は放送部で放送した後に屋上にダッシュして上から見張りつつ東が現れたら即変身、合流という流れだ


だが、引っ掛かるのを待つのはさほど長くなかった

なにせ虎壱&放送部員(俺達と部員は仲がいいのでノリノリで参加してきたらしい)の


(ミスコン実況―♪お相手は西江、出雲、亞桐、白幡(しろばた…虎壱の名字だ)で―す。さてさて今は…おぉっ!ステージに青龍が!?(亞桐)凄ッ!(出雲)…本物かなぁ?(西江)さ、さぁ…?(白幡))


の会話の「青龍」辺りで飛び出て来たからな


俺達は軽くアイコンタクトをすると素早く変身して東の前に躍り出た


「なっ…?!」


「まて、愚か者。我に無断でなにをしているか?」


驚く東にエセ威圧感バリバリで闇兎が言う


「駄目だろ?弱い子イジメは許せないなぁ」


朱雀は妙に笑顔が黒い気がするんだが…俺の気のせいか?


「………………(因みに俺は笑顔で首の前で手をスッと横に動かすだけにした)」


「にゃっ(着地に失敗した)あたたたた…ハハハッ。スルーして!スルー!」


最後に猛ダッシュで階段を駆け登った挙句最速で変身、飛び降りの強行ミッションをこなした白虎が合流した

一瞬でヒーローや幹部に取り囲まれた可哀相な彼は呆気にとられた後に俺とクラスメイトを交互に見比べて唖然とする


「せ、青龍が二人!?」


「なにやってるか馬鹿!それは民間人だろう!!!」


あのへタレは何処へやら威厳二割増しで闇兎は東を睨み付けた


「でもですね!彼からもハイパ…


「ギャァァァアァアアァァァッ」


…の反応がっ…………って、あ」


東の台詞を闇兎が悲鳴で遮った


「あ。…じゃない!最高機密だ馬鹿!!!!」


「…最高…機密…?」


そのときの俺の笑顔は素晴らしい程に悪者様様だったが朱雀も白虎も止めはしなかった

けれど一応闇兎を同情の目で見守る


「あ、えと……………………」


逃げようとした二人の腕を掴んで強く締め上げながらもう一度俺は笑顔で問う


「最高機密?」


彼の笑顔が固まった

泣きそうな顔になって素が出そうになった時、俺にとっては思いも寄らない相手が乱入して来た訳で…


「はいはいはいはいはい、もー喧嘩しなぁい喧嘩しなぁい。駄目だろ青ちゃん?」


いきなりかかったその声に俺は目を見開いた

そこには…あの時と同じの割れ物の笑顔で…彼奴が立っていたんだ…



MISSION5に続く

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