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Spica  作者: 国見炯
3/8

リハヤ視点



 副題・ヒロインの裏側。






 私の設定は、一般家庭に生まれてしまった魔力持ちだ。そこまで珍しいわけじゃないけど、私みたいに魔力が高い存在は珍しい。

 だから、特別に暁光学園に入れられ、魔力の制御と使い方を学ぶ為に高等部に途中入学した。

 身長は155cm。桃色の肩まである髪はポニーテールにしている。

 桃色の大きな瞳も可愛いヒロインだ。

 そのヒロインは、学園で出会う人と恋をする。ただ、逆ハーエンドはない。一途な恋がコンセプトで、選べるのは1人だけ。

 何人かいる攻略相手の中で、カナル・A・デジイが一番難しいと言われている。他のキャラにはいないライバルキャラとなる婚約者がいるからだ。

 乙女ゲームでは珍しく、善良な婚約者。嫌がらせもしてこない基本良い子な設定。つまり、そんな良い子設定な婚約者からカナルを奪う略奪愛だ。勿論、私はカナルを選んだ。略奪愛が気に入ったからだ。婚約者の設定が、私よりも美人っていうのも気に食わなかったし。

 あのお嬢様に告げる場面は人通りの多い場所。そこで私を選んだ事を告げる。案の定お嬢様の表情が悲しみに彩られた。本人は必死に隠しているけど、我慢している事ぐらい分かる。

 あぁ、気持ちが良い。

 美人で心も美しいお嬢様。カナルはそんなお嬢様を捨て、ヒロインである私を選んだ。面白い。

 こんなに気分がよいのは久しぶり。

 攻略方法を知っている私にしてみたら、カナルを略奪する何て簡単。それなのに、何あれ? 何なの??

 お嬢様に腕をのばす、この世のものとは思えない程の綺麗な男の人。その人が、あのお嬢様の手を取り消える。

 転移をしたって事はわかるんだけど、そんな難しい事をあっさりとした魔力の持ち主が、マスターと呼んだ。

 あのお嬢様の事を。

 あんなキャラがいるなら、私は迷わずあの人を攻略したわよ。

 DLキャラ? 私が死んだ後で追加されたの?

 分からない分からない分からない。

 あんなかっこいい人が登場するなんて知らない。知らないったら知らない。知ってたら、カナルなんて攻略しなかった。

 さっきまであんなにキラキラしていたのに、今では淀んで見える。カナルってこんなに中途半端な顔立ちだっけ? 彼を見た後だと、全てが色褪せて見えた。

 カナルなんかじゃなく、彼を攻略したい。彼が私の恋人になってくれたのなら、最高じゃない! そうなったら、さっさとカナルにはカレンとよりを戻してもらえばいいのよ!!

 流石私。頭がいい。

 そうしたら、彼は私が貰ってあげるから。それなら、カレンも幸せじゃない。愛する男がかえってくるんだもの。

 どうしようかな。とりあえずカナルには私じゃなくて、カレンをもう一度見てもらってくっついてもらわないと。

 でも、カナルの方を見れば、ちょっと複雑そうな表情を浮かべている。そうよね。私を愛してはいても、自分の所を大好きだった相手が、自分よりもずっとランクが上の男と消えたのならショックよね。

 ──そうすると、それを利用した方がいいわね。


「カナル……そんなにショックだったの……?」


 勿論、カレンとあのイケメンが一緒に消えた事が、ね。だって、私も気に食わないし。完全に落としたと思ったカナルが、カレンがイケメンと一緒に消えただけでショックを受けた表情をしているし。

 でも、好都合。


「いや……俺が好きなのは……」


 言い淀むカナル。


「カレンなんでしょ。そうだよね。ずっと好きだったんでしょ。

 私の反応が新鮮で寄り道しちゃったけど、カナルはやっぱカレンを好きなんだね」


「リハヤ……」


 私がふられるのは気に食わないけど、カナルよりあのイケメンの方がいいし。カナルは私を見た後、顔を伏せた。迷いと悲壮感に彩られた表情。

 ほら、簡単。私の手の平の上で簡単に踊ってくれるカナル。楽勝過ぎて逆に面白味に欠けるけど。でも、そうだよね。自分の所を一番好きだと思っていたのに、自分以上のイケメンと消えちゃったもんね。気になるよね。それってさ。


「すまない……」


 カナルが謝る。


「ううん。いいの。すぐにカレンの所に行ってあげて」


 あくまで私は優しい子。誰からも愛されるヒロイン。

 すぐにカレンとよりを戻して、早くあのイケメンをちょうだい。あぁ、考えただけでゾクゾクする。

 あのイケメンが、ヒロインである私に愛を囁いてくれる。今から楽しみ。待ちきれない!!

 早く早く早く。

 私にあのイケメンを攻略させて!








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