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エロゲ―の悪役に転生したらしい  作者: ゴロフォン
本編
3/21

講師助手になりました

「初めまして。この度ロクタール学園で付与術の教師を担当することになりました、ファラ・ラグラ・マチストです。教師として初めての年という事、生徒である皆さんの方が年上で抵抗もあるとは思いますが今年一年よろしくお願いしますね」

 歓声が沸き起こる。可愛いという女子の嬌声。可愛らしいな、あと数年経てばという値踏みの目。可愛いなげへへというロリコンの目。嫉妬の女子の目。こんな幼女が教師など務まるのかと訝しげに見つめるものも少数。

「では、早速ですが授業を始めますね。質問の類は後で時間を設けますので、まずは軽く授業をしましょう。では皆さん、配った紙に目を通して下さい」

「先生!」

「はい」

「隣にいる男の人は誰ですか?」

「ただの助手です」



 おかしいな。原作通りのストーリーが展開しないようにするためと赤髪の幼女、ファラに付与術の講師を代わりに引き受けてくれるように頼み込んで出来るかどうか分からないけど原作回避のため仕方ない、と承諾貰ったはずなんだ。

 取りあえず朧げに覚えている付与術の基本を教えて、買うだけ買って読んでいない本棚の肥やし状態の付与術関係の本を渡して知識も付いた。まだ三年しか経っていないのにその原作補正なのか驚くような優秀さで実践でも教師くらいは普通にやれそうななかなかの成績を見せた。これなら代わりも大丈夫だろう、と社交性皆無の私より教師に相応しい人材がいますよファラを推薦して貴方が推薦するのなら、と諦め混じりの承諾が来たはずだった。


「後は任せたぞ! 俺は時計魔剣12本と最強の魔剣の13本目を作りながらのんびり余生を過ごすわ!」

 原作通りにいかなくてこれで大丈夫だな! と笑顔で言ったのだが。

 何故か俺が助手として指名されていた。聞くとファラが申請を出して、それが通ったらしい。

 どうしてそんなことを、と聞くと

「お前のあの時の笑顔が死ぬほどイラッとした。反省はしていない」

 という言葉が返ってきた……確かに血のような目、紫のオールバック、やたらとガタイの良い俺が笑顔浮かべていたら不快だろう。ゲームでは間違いなく善側の主人公の対立する悪役Aだろう。が、原作回避はどうしたと言いたい。



「先生の年齢はいくつかな?」

「今年で10になりました」

「10歳で先生とかすげぇー!」

「三年に及ぶ厳しい教育の賜物です」

「えっと恋人とかは」

「幼女に欲情すんな、黙ってろ」

「隣にいる助手の人とは教師になる前から何か関係とかありました?」

「引きこもりをしていたのを助手として引きづってきました。馬車馬のように働かせて社会復帰をさせる予定です」

「10歳に顎で使われる大人の男ってどうなんだよ」

「すげえかっこ悪い」



 酷い時間だった。学園この学園は冒険者を育成するための学園だそうで三年成績順に応じて各5クラス計15クラスあるわけだがそれぞれのクラスを1限ずつ担当するとのことだった。つまり週に15回授業を行うことになる。これに学園行事のあれこれを足して1年を過ごすわけだが、正直つらい。今日は2回の授業があったが皆幼女の助手やってるなんてだせえという目を向けて精神的につらかった。これが恐怖や嫌悪ならまだ慣れているが、うん若者にああいう目で見られるのは心底きつかった。


 学園が用意した教師寮を断り、学園所有の森の一角に連れてきたスラーさんにいつも通り家を形成。そこにジュタンさんが入って二体がそれぞれ家具を形成していつもの自宅完成と来た。ファラがお前よりよっぽど優秀だよな、と嫌みを言いながら本来の主人である俺より先に家の扉をくぐって行った。

「帰っていいよな?」

 俺がここにいる意味は全く見当たらないんだが。俺は幼女の下僕になっている格好悪い大人として悪い見本としてやってきたのか。

「原作回避を口実に教師押し付けておいて自分だけ逃げるとかふざけんな」

 それは悪いとは思っている。だが反省はしていない。

「そもそも俺がこの学園に来たら原作通りってことになっちまうだろう。こう運命強制力的な何かで俺が外道になってだな」

「その時は燃やす。それで解決だな」

「お前な……いやまあ女襲う度胸があるなら今童貞やって魔法使いやってないよな。あ、本当に魔法使いだったか。はっはっは」

 何か可愛そうな者を見るような頬を引き攣らせながら幼女は言った。

「お前何か言動がおっさんになってるぞ。今の親父ギャグは酷い」

 今日一番傷ついた。



「結婚してください」

「人型の炭になっても良いんなら一日だけなら良いですよ?」

「ごめんなさい」

 教師赴任から三か月。特に問題なく教師をやっていた、ファラが。俺は雑用で授業や生徒との対話、会議などは皆ファラがやってくれていた。一度だけ授業をやらされたことがあったが「何言ってるのか分からない」「鉄に火を詰め込むって何ですか?」「そんな曖昧な説明されても困ります。ちゃんとした説明出来ないんですか?」大不評だったためあっさりファラにお役目は戻った。あの時から更にファラと生徒の見る目が冷たい。冗談抜きで帰りたいです。


 そして、ファラは非常にモテた。単純に幼くとも容姿が良いというのはある。後は胸が10歳の割にあるということ、原作のファラは巨乳だったから今でも胸があんだろ、男の目がきめえ、と言っていた。

 だがそれより正直大きいのはミドルネームがあることから分かる通りファラが貴族様だという事だった。フルアラクト王国マチスト公、の二女らしい。ただ両親との仲は悪く、原作とそこが違うところだな、とどこか目を吊り上げて僅かに怒りを見せた後、寂しそうに唇を歪めていた。転生して記憶があるって良いことばかりでも無いってことさ。可愛げのないガキになるって意味でな、と言っていたからまあ子供らしい子供を演じられなかったんだろう。


 まあそういう高位貴族様の娘であられるため、それ目当ての下級貴族生徒が寄ってくる寄ってくる。ついでに貴族の教師も寄ってきた。口元を引き攣らせながらそれでも丁寧に応答していたが度が過ぎたのは炎で頭が焦げた。仕方ないな、と冒険者時代の伝手で圧力という名のフォローを俺もしておいた。


 案外欄外冒険者の権力は非常に大きい。暴れるなよ、権力使っていいからくれぐれも暴れるなよ、という意味で与えられた権力とも言う。国を更地に変えるくらいなら権力の一つや二つはくれてやれ、という意味だ。公爵相当の権力はある。いやそれ以上で公爵すら正当性が認められたら潰せるレベルだ。欄外は化け物扱いだ。

 政治闘争に参加さえしなければ基本何をしてもいいのが欄外冒険者。だがもっと怖いのはそんな欄外の集団をちらつかせて冒険者の権利を認めさせている冒険者ギルドだと個人的には思う。各国とどんな駆け引きをやっているのか正直知る気がないし、知りたくも無いが俺には理解できない世界が広がっているのだろう。


 結果良くナンパはされるがそこまで問題は無く教師業をファラは続けている。後ろ盾ですよ。実力十分ですがまだ幼い彼女に貴方という怖い後ろ盾があれば問題ないと判断して貴方の推薦受け入れた面もあるんですよ、と一人きりで会った時学園長が言っていた。まあ確かに俺はそういう意味ではここに来る必要はあったのかもしれない。

 だが帰りたいです。



「風呂が空いたぞー」

 湯気を髪から、身体から立ち上らせながらバスタオル一枚身に着けただけでファラがやってくる。確か2年前だったか親との折り合いが悪くなったとかで同居し始めたときはそんなことは無かった。

 だが、風呂で気が緩んでいたのだろう。何か月か経って一度裸で来た時があった。第二の魔剣二時の虹魔剣の試作品を作っていた俺はそんなだらしない恰好をしていたら湯冷めするぞ、と言った後魔剣の刻印を刻む作業に戻った。それ以来こいつが風呂上がりにきっちり服を着ることは無い。


「今お前にやらされてる基礎刻印の見本が出来てないから後で入るー」

「風呂入ってからで良いだろ、ってかまだこれだけ!?」

「お前が生徒に見本になるように完璧な刻印で行けって言ったんじゃねえか!?」

 刻印なんて正直感覚でやっているのが俺だ。何となくこれなら上手く力が通りそうだな、という刻印で同じ属性でもそれぞれ書くたびに刻印の形が違う。お前じゃないんだからそれじゃあ駄目だ、ちゃんと指導書通りのきちんとした刻印を彫れ、と言われて15クラス6種の属性の刻印を10枚ずつ彫らされていた。現在200枚。自分ではだいぶ頑張った方だと思うんだ。ただやる気がどうも出ないから進まないだけだ。


「お前……何年付与術師やってんだよ。俺が風呂入ってる間進めておくから良いから行って来い」

 家でも学校でも立場が弱くてつらい。

 そして20分後くらいに風呂から上がってきたら300枚も作っていて更にいたたまれなくてつらい。後形が違うという事で俺が作った中で10枚ほど没になったのがさらにつらい。大人げなく特に問題ない気がしたが対抗してお前も20枚程駄目なのがあるよな、とドヤ顔で言ったら火球が飛び交う喧嘩になった。




コメディというよりは駄目な大人の記録みたいになってきました。

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