姉妹のムナ・ナジカ
アレメシアのミリシアの街のミル・ネージュ。イグナトのラシャの村のマルカ。ウォルラトのレガの街のムナ・ナジカ。エルフォの首都アーマサラスのネリー。オーズの傭兵の蒼炎のリザ
姉妹はどちらも等しく扱われていた。
「どっちが好きなの?」
と聞いた姉に
「どっちも好きだよ」
と男は答えた。
「そう」
表情が失せた顔で妹が答えた。
「貴方がムナで」
「貴方がナジカでしたか」
「うっそ、私達の区別つくの?」
「凄い! 親でも時々間違えるのに」
「いえ、ただ貴方達の身体の属性が見えるので」
「それでも凄いよ」
「嬉しい」
ウォルラトのレガの街に住む彼女達は双子の姉妹だった。どちらも緑の髪に青い目の見目麗しい巨乳の姉妹だ。区別なんて正直炎属性の右の姉、風属性の左の妹でしか出来ない。なのに判別できたのが嬉しそうなのか妙に友好的だ。
「そもそもおかしいと思ったのよ。ムナ・ナジカって。私達姓も無いしそもそも私達の名前並べただけじゃない」
「まあ勘違いしてたんでしょうね。お前らの名前が出てるぞ。勇者様が財産渡したくて探してるんだってさ、冒険者の叔父さんが言ったから来たけどさ。正直興味ないの」
「うん。別に勇者様どうでも良いよね。お金? 貰えるなら欲しいけど。というよりおじさんが情報提供料くれよな! って言ってたからさ」
「なるほど……まあ候補が他にいませんし、本物だということになりますね」
本物じゃなくてもここにきていない以上もうヒッジとは関係ないというスタンスか死んでいるのだろう。
「そうなんだ。ねえねえこれ終わったさ。一緒に晩御飯食べようよ!」
「うん! どうせおじさんモテないんでしょ!? 食べようよ!」
「いえ、私には妻が」
「いるの? 意外!」
「妄想の妻じゃなくて?」
「いや、死んでますけどいましたよ。妄想じゃなくて」
「死んだの?」
「ええ、私は寿命が長いので人間だった妻は長くは」
「そうなんだ……じゃあ食べに行こう!」
「うん! 新しい恋人ってことで!」
……凄いアクティブな女達だ。自分が何だか年を取ったような気がした。
恐ろしいほどに積極的で断れなかった。話術で勝てなかったともいう。
「で、えっと、それはともかくヒッジの事でですね」
「別にどうもこうもないよ。旅費と叔父さんにあげる情報料くらいしかいらないよ。後はいる人に渡してあげて」
「私達おじさんの為に来たようなものだし。あ、あと今はオーレン叔父さん目的かな!」
たぶん叔父さんとやらもそういう仲なのだろうなと思った。
「ヒッジとはどういう経緯で関係を」
「巨乳目当てだよ。それだけ」
「強くてカッコよかったと思ってたけどそれだけだったかな」
「そ、そうですか」
「うん。話終わり? じゃあ行こうよ!」
「は、はぁ。食事だけですけどね!」
「えぇー」
「今時流行らないよ? そういう堅いの。古臭いって」
「古い人間だからいいんです」
彼女たちの相手が正直一番疲れた。。
「ねえねえ、私達のどっちが好き?」
「え? いきなり何ですか?」
「良いから良いから。軽い気持ちで、ね?」
と言われても……妻を思い出した。あの鮮烈な炎と、光を。なので優劣つけるなら
「どちらかと言うとムナさんですか。まあ妻の属性が炎だったので」
「やった!」
「炎だからって、ずるーい」
後離れる気配が無い。先ほどの自分でも酷い答えだと思うが何故か大して気にしている様子が無い。