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エロゲ―の悪役に転生したらしい  作者: ゴロフォン
番外編
15/21

魔剣保持者の遺産相続

番外編です。特に戦う事はありません。設定に粗は多いです。

 十三魔剣の相続時には毎回受け継ぐ子孫と顔合わせをすることになる。親子でやってきてこいつが受け継ぎます、という報告を聞いて、魔剣の威力を見せて極力使わないように、という戒めを与えるのだ。

あるいは継ぐ者がいなくなった魔剣に偶に新しい所持者を探しに行くこともある。現在は俺の直系の子孫は大体魔剣保持者のうち9人だ。が、自分の血が繋がっていなくても分かりやすく区別せず俺は彼らを子孫、と呼んでいる。彼らも俺を始祖様と呼んでいる。


 毎年穴埋めの後始末が大変なそれだが、皆が皆そ魔剣の能力を見て顔を引き攣らさせて使うまいと心に決めるのだ。逆にいうと嬉々として見るような奴は後継ぎに選ばないという事になる。

 そんなわけで基本的に彼らとは継承時に面識があるわけだが、昔の面々はもう記憶が朧げな面々も多い。が姿を見たら思い出す、くらいには覚えている。死んでいるので会う事は無いが。

 妻達が無くなって以来スラー一、二、三世とジュタンと共に一人暮らしを基本していたわけだが、この世界に転生して666年の記念すべき誕生日が半年後に迫ったある日三人の子孫がやって来た。三人の魔剣保持者だ。

「勇者やっていた7時の魔剣保持者のビッジ・アクスターが死にました」

 基本死んでも報告はない。ここに死んだという報告が来る場合はそれは一つだ。


 後継ぎがいない時、魔剣が俺に返還される時だ。




「腹上死!? そういえば七時はまだ新しい奴から10年も行ってなかったなという覚えはあるが腹上死か……」

「三年前魔王を倒したという事で盛大に祝福されていたんですけどね。代わりに女を毎晩とっかえひっかえしていたようで女を二人以上抱かなかった日は無かったとか」

「それは死ぬわ」

 戦いの中で死ぬよりはよっぽど良い死に方だったんだろうが勇者が腹上死か。そういや魔王倒しましたという報告聞いたんだよな。魔王って誰だよ、と思った覚えがある。確かインプの突然変異だったという話をその時聞いた覚えもある。女待たせてるのでもう行きますね、と足早に去って言った覚えもある。



 むしろ三年も良く持ったなと思う。そうか……まあ安らかに死ねただろう。

「で、魔剣は?」

「はい、七時の魔剣『抑止』の魔剣持ってきましたよ」

「ん、お疲れ。どうしたものか。ラビットキャットの奴にいつも通り持たせておくか」

「やめてあげてください! 『僕が一番やりやすいからって魔剣狙いで皆僕のところに来るんですよ! 魔剣保持予備者の仕事はもうこりごりです!』 って泣いてましたよ。逃げ足は世界随一ですけど戦闘力は一般人以下なんですからしばらくは休ませてあげてください」

 うん。あの捕食者の本能を呼び覚ますようなびくびくと怯える逃げ足に差し支えるからという名目でほとんど裸同然だった露出狂の吸血鬼の僕っ娘を思い出す。悪いことをしたな。

 ……まあそれを言うなら子孫にも悪いことをしているが、魔剣13本を同じ場所に保管していたら共鳴して酷い事になったからなぁ。

 せめて封印出来たら良かったんだがな……へへへ、魔剣は絶対に壊れない! もちろん封印も無効だ! なんて何でやってしまったのか。そりゃあいつらに殴られるわけだよ。その特性を解こうにもあの共鳴事件で魔剣本体には俺の力に耐性出来て干渉受け付けなくなったんだよな……まあ使い手倒すのは全く問題ないが。十三の魔剣で防御破壊とか魔剣が壊れてしまう。


 感傷にふけっていたがすぐに現実へと引き戻す声がした。

「国を挙げての盛大な葬式があるのですが、貴方に出てほしいんですよ」

「? どうしてだ?」

「魔剣保持者の多くが式に呼ばれているからですよ。どうも嫌な予感がするのでまあ、何かあっても始祖様がいれば力的な意味では問題ないでしょう」

 後始末は任せてください。と言う言葉が子孫から聞かされた。




 あいつら後で殴る。

 というのが葬式を終えた後での俺の感想だった。


 言い出しっぺのあいつらが逃げやがった。魔剣保持者三人しかきてねえじゃねえか。いや、たくさん集まられたらそれはそれで困るが。襲撃もう7回あったらしいしな。今日は多い方ですよ。いつもは2か月に一回くらいしか襲撃有りませんからねぇ、とは11時の魔剣保持者の魔法使いの少女の言葉だったか。


「いやいや、存命しているという噂があったがまさかこの目で見ることになるとは。魔剣製作者オル・ファーフよ。会えて嬉しいぞ」

式が終わった後しばらくして一人の豪勢な衣装をした男がやって来た。白髪が目立つ男は見覚えは無い。がこの国の王だよ言うのは傍に控える鎧を着た男たちを見れば一目瞭然と言えた。

「ああ、初めまして。オル・ファーフだ」

 手を差し出されたので一応握手をしておく……隷属の刻印がかかっていた。もちろんかかるわけも無く毛根死滅の刻印を返しておいた。

「陛下に対してその言葉づかい! 無礼だぞ!」

「無駄に長生きしているからな。年若いものに敬語を使うという事に抵抗があるのだ。許せ」

「なっ!」

 敬語を使うという手もあったがふと子孫である魔剣保持者の事を考えた。一族の力だけとはいえ頂点の俺が王とは言え誰かに敬語でへりくだった態度を取ると一族の彼らも同じ態度かそれ以下の態度を要求されるかもしれない、という気がしたのだ。王とは対等以上の態度で接しておくべきかな、と思ったのだ。まあ隷属の刻印かけてくるような阿呆に敬語を使う意味も無い、という気持ちも今はある。

「よいよい。噂が真実であればオル・ファーフはもう齢600を超えているのだ。私など赤子のようなものだろうよ」

「ですが!」

「力だけで精神は老成しているとはとても言えんがな。まあ、力だけはあるから誰かに隷属などはしないな」

 こめかみが一瞬引き攣るのが見えた。ばれた事が分かったらしい。

「そうか、出来れば私に力を貸してもらいたいと思っていたのだがな」

「政治云々に興味は無いし、一つの国に肩入れする気も無い。ただ我が身が滅びるまで隠居しているだけだ。今回はただ、勇者になったという我が子孫を弔いに来ただけでしかない」

「その言葉が真実であると、どことも中立であってほしいと、我は願っているがな」

 自分の物にならないなら、がつくのだろう。

「人と交流するのが苦手なのだ。言われんでも基本人と関わらん。政治や戦争などには関わる気は毛頭ない」

「そうか」

 国葬の場で会ったこの国の王とはそこで別れた。鬼のような形相でこちらを睨んでいた近衛騎士団長と思われる男に現出させた鈴を鳴らした。


『ファーフの幻想鈴』

 と誰かが呼んだそれの効果は極めて単純だ。オル・ファーフの顔が思い出せない。つまりもう俺が目の前にいてもオル・ファーフであるとは思い出せないだろう。


「あー来ました来ました。うちにも来て困ってたんですよ!」

 鈴貸してください! という彼女の切実な言葉に俺しか使えない代物だよ、という答えを返した俺はふと目の前の魔法使いの外見だけは少女の彼女を見る。

 もう齢320歳という『停止』の魔剣保持者の彼女は一族の中では俺と最も付き合いが長い。抜かずとも11時の魔剣と歴代で最も相性のいい、おそらく作った俺以上の相性の良さで彼女はその身体の老化を停止させていた。科学的な理由は作った俺もさっぱりだ。感性で道具を作る俺に具体的な理論なんてわかるわけが無かった。フリルの多いその衣装はちょっと若作りしすぎじゃないかと思ったが、以前口に出したら恐ろしいほど怒り狂ったので宥めるのに苦労した身としては面倒なので口にはしない。

「にしても寂しいものですねぇ。三人とか。ってまあ仕方ないんでしょうけど」

「仕方ない?」

「だってあの子大の女好きでしたもん」

「腹上死だったもんな。好きだったんだろうよ」

「女が大好きで男なんて屑だ、なんて言ってましたからねぇ。他のみんなと仲が悪かったんですよ」

「……ああ、うん。女好きには良くあることさ。女以外は興味ないんだよな」

「私も声かけられたんですよ! 見た目13、4の私にですよ!? ちょっと見境なさすぎじゃないですかね!」

「人妻が言うのか。お前確か今何人目の夫がいたんだったか」

「やだなあ! まだ6人ですよ!」

「うん。そうだなまだだな」

 こう見えてファーフ家で最も最大勢力を誇っているのは彼女の家系、レジナ・ファーフだ。姓が変わるものも多い中ファーフの名前を未だ残しているのは彼女と十三の魔剣保持者の家系のみだ。


「で、他の奴らは?」

「え? ああ。何だか皆仲間の女の子に引っ張られて街出て行ったの見ましたよ、二人ともモテモテですねぇ」

「……そうか」

 彼らは運よく妻の方の血を引いたようだ。人の世に生きるにはぼっちの血はつらいだろう。

「まあ、帰るか」

「そうですね。国葬で後片付けも他の方がしてくださるって話ですし」

 まあ帰ろうか、そんな流れになろうとしたとき、扉が勢いよく開き、転がり込むように一人の男が入って来た。

「アクスター家の方はこちらですか!?」



「遺書?」

「うん。読んでみた。押されていたファーフ家の魔力印、魔力の質からたぶん偽装じゃないよ。うんまあ遺言書かな……」

 葬式が終わって訪問客も落ち着いた。さあビッジ・アクスターの家を整理して記念館にしようか、という段になって見た目にはそれほど影響の無さそうないらなそうな家具を整理していたらしいのだが本人の部屋に飾ってあった柱時計を外すと隠し金庫があったらしい。無駄に強力な封印がかかっていたそれは解除するのに数時間がかかり、解けた頃には今頃になっていた。という話だった。勿論中身は改め済みだ。封印あるなら俺達に頼めばいいものを自力で解いたあたりまあ他に持ってかれてるものはあるんだろうな、というのは予想がつく。国葬費用出してもらったわけだし好きにして良いだろう。

「で、内容は?」

「女に財産相続してほしいって書いてある」


 遺言によればこのところ身体の調子が悪い。長くは無いだろうという前置きの後自分が死んだ後は税諸々差し引いた後に残った財産を5人の女に等分に残してほしい、という物だった。


『アレメシアのミリシアの街のミル・ネージュ。イグナトのラシャの村のマルカ。ウォルラトのレガの街のムナ・ナジカ。エルフォの首都アーマサラスのネリー。オーズの傭兵の蒼炎のリザの五人に財産を等分で相続してほしい』





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