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エロゲ―の悪役に転生したらしい  作者: ゴロフォン
本編
13/21

最初から言った。殴ると言った。

『やれ、殴れ。その忌々しい女神を殴れ!』

『ははは、酒を飲みたいもんだ。今日はあの女神の腫れ上がった顔が良い肴になりそうだというのに』

『私の、私達は貴方への憎悪を今日彼に託します』



『愚神』オル・ファーフは新しい肉体の感触を確かめるように、一歩一歩ゆっくりと足を踏みしめながら光り輝く全裸の女に近づいていた。

『神になったんだから条件同じだよね。いやぁ、僕の力大きいからさ。近づいたら君は怯えて自分の世界に閉じこもっちゃうことは目に見えてたんだよね。だからその僕でも突破できない壁に感情で亀裂を開けてもらう駒を探してきたんだけど、見事に開けてくれたよ。怒りでついつい、緩んじゃったね、女神様』

『お前は、誰だ?』

『神だよ。君が引きこもっている間に全面戦争で君の友達も含めて君以外全員滅ぼした、復讐の神だよ』

『な……』

『逃げられないよ、逃げるられるようにしていない。今この世界は君と僕で互角だ。条件を出そう。その条件さえ満たせばここで立ち去ってもう君の世界に干渉はしない。約束する』

『え?』

『条件はそこのオル・ファーフを。新しいこの世界の第三の神を滅ぼすことさ。それだけだよ』

 怒り狂っているから倒せなかったら生きてかえられないけど頑張ってね、と朗らかな声で復讐の神は言った。

 女神は見る。目の前の男を。

 邪神だと思った。自分ではない他の神の力を与えられた新しい神。力を奪えない、好きに出来ない。互角の相手。

『ひっ』

 顔を見た、紛れも無く殺意が浮いていた。はめられた二つの指輪はその石を同調しているように禍々しく青く黒く光っていた。

『違う駒に、私の駒から違う神の駒になっただけですよ。誰かに使われることに変わりは無いのですよ』

 謝るから、演劇の役者扱いした事は謝るから、だから

『言った。最初から言ったぞ。お前を殴ると最初から言っていた』

『そ』

 それはとはか細く続けて女神は悟ったようだった。説得も何ももう無理だ、と。

『ならば消えろ! 肉体を得たお前を、殺せぬならその身に魂を封じてやる!』

 殴られた。障壁が撓んだ。

『っ!』

 声にならない声を向けながら封印しようと、力を発現する。

『この弱い攻撃は何だ?』

 全く効いた様子は、無い。殴られた。障壁が撓む。

 思い出した。


 身を守ることは神の中で随一だったが誰かを害することは神の中で自分は最低だったことを。


 殴る、撓む。力を向ける。効いた様子は無い。



『や、やめて』

 目の前の殺意の塊に女神の心が折れた。

 障壁が緩んだ。

 殴られた、障壁を破ってその顔に拳は突き刺さった。






『まあまあそこで無しにしよう。終わりで』

「は?」

 女神の顔は三倍以上に膨れ上がっていた。かつての美貌は見る影も無い。

 邪魔をするならお前も潰すぞ、と言わんばかりに虚空にオル・ファーフが眼を向ける。

『弱い者いじめだよ。それ以上行ったら。見なよ。この哀れなさまを。これをぼこぼこにしたらあれだよ。君ファラちゃんにドン引きされて愛想つかされちゃうよ。』

「え?」

 思わずという呆けた顔でオル・ファーフは後ろを振り返った。

「やっちまえ!」

「よし」

『待て待て、煽らない』

「俺にとってこいつを殺さない道理が無い」

『そうだけど、でもね』

 オル・ファーフには見えた。

「っ!」

「やめておけ」

「でも! こいつは僕の心を! アクリタを! アー」

「やめておけ」

 剣を心臓に突き刺そうとしていた、リース・クリスナーラをオル・ファーフが刃を掴んで止めた。神に人間の攻撃が届きはしなくとも愚神は止めた。

「どうして」

「さっき言っただろ……お前の正義感を信用している。復讐でそれ汚すのはやめておけ」

 まあ復讐で俺刺したけどな、と朗らかに笑いながら付け加えるとリースは口を引き攣らせて、だが剣を収めて。

「後は、よろしく」

「任された」

 彼女は去って行った。

 オル・ファーフは言った。

「リースの剣を止めておいてとうの自分が惨たらしい残虐ファイトやるのもな、と言うわけで」


「後は、任せた」

『任せられた』

 ファラを起き上がらせて去って行った。

『リースちゃんがあのタイミングで君を刺そうとしなかったら彼の殺意に水を差せなかったよ。運が良かったじゃないか、女神様』

 女神は何も言わなかった。



『え? 下僕? いらないよ。僕もう下僕9人いるし。君はいらないよ。まあ好きにしたら良いんじゃない? 君は僕の目的に役立ってくれた。君の生きている間に君のいる世界をちょっかい出そうとかどうこうしようという気は無いよ』

 そもそも僕他の世界管理もあるから忙しいし。この世界に特別興味はないよ、と付け加えた。

『まあそういうわけで、もしかしたら用が出来るかもしれないし、用が無いまま君と会う事も無いかもしれない。まあ頑張って。この世界の管理は適当にしておくよ』

 不安の残る言葉はあったが復讐の神はそれだけを言い残して去って行った。



 演劇好きの女神は去り、代わりに愚神が一人この世界に残された。神は変わらず一人のまま。とは言え、人間が崇める神は女神でも新しき神でもない存在しない偶像の第三の神で、上で神がどたばたで交代しようが特にその信仰に変わりは無かった。


 神の戦いは世界に特に何か影響を及ぼしたという事は無かった。

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