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エロゲ―の悪役に転生したらしい  作者: ゴロフォン
本編
12/21

『愚神』降誕

妙に書きたくなったシーンがあって明るく行こうという当初の予定がねじ曲がりました。

『肉体が滅びたがいいのか?』

『え? 何言ってるの? 引きこもり女神が作った身体が機能停止したことが何か意味でも? あんなの敵の人形じゃないか』

『え?』

『君は本当に頭を使わないよね。僕が彼に力を付与したのはどの時だった?』

『あ』

『分かったならいいよ。……あと思うんだけど、あの女神、女神役に凄い酔ってるよね?』


『ファラ・ラグラ・マチスト。邪神オル・ファーフの下僕』

「下僕になった覚えはねえよ。誰だ、お前」

 俯せに倒れているオル・ファーフに全速力で駆け寄って、その身体の活動が完全に停止しているのを確かめ、一瞬顔を歪ませた後、ファラ・ラグラ・マチストは敵意のみが彩るその目を光り輝く裸の女神に向けた。

『私は神。この世界を管理する神です。邪神の下僕よ』

「そうか……お前が、お前がこいつに死に役押し付けた大馬鹿野郎か!」

『押し付けたのではありません。なるべくしてなったのです。貴方はまだ戻れます。邪神とのつながりを断ち切り、正しく生きていくのならば私も貴方に手は出しませんよ』

「お断りだ」

 詠唱を始めた。生かすつもりも無い、手加減無しの殺意を彼女は持った。

『邪神と同じことを、では、死になさい』

 魔力が消えた。身体が動かない、膝をつく。そうか、と彼女は思う。これこの世界の身体じゃねえか。女神の好き放題出来るこの世界でどうすんだよ、と思った。

『哀れな娘よ。邪神と同じく魂ごと死を迎え、え?』


 ぼやけた輪郭だった。半透明で、細かい姿形は分からない。だが、目の前にいる何か達が何なのかは知っている。嫌というほど知っている。三年一緒にいたのだから知っている。何だかんだで一番自分の心の身近にいた者達だ。三位一体だなんて冗談交じりである男が言っていた者達だ。そういえば、と思い出す、彼の指には彼らがいた事を。

「オル! スラー! ジュタン!」

 ぼやけた姿でだが見知った姿がそこにいた。


『魂だけになってもまだ立ち塞がりますか。本当にしつこさだけは人間離れしていますよ。今、貴方達に完全な死を与えます。もう役目の終わった役者は退場なさい』

『おーい。ファラ、リース。人を役者扱いだとさ。俺もお前達もこの女神様の糞芝居の役者なんだとさ』

『口を開くな。その汚らわしい口を閉じろ、と言っている!』

『お断りだ。俺はお前を殴る。お前のその不快な面に一発入れる』

 オル・ファーフは全く生前のままだった。生前と全くやることが変わらなかった。

 女神を殴った。効かない。

 不快気に女神は顔を歪めた。

 スラーが女神をその巨体で飲み込もうとする、弾かれた。ジュタンがその首に長い長いその身体を巻き付けようと近づいた。弾かれた。

『消えなさい!』

 一瞬彼らはその姿を消した。


 同じ場所に1秒で戻って来た。

『な!? これは! どういう! なぜ消えない! 私の力で消せるはず』

『知るか。お前を殴れと誰かが言ってんだろうよ』

 殴った。弾かれた。

 取り込もうとした。弾かれた。

 巻き付こうとした。弾かれた。

 消えろと女神は叫んだ。数秒で姿を取り戻した。

 殴った。弾かれた。

 取り込もうとした。弾かれた。

 巻き付こうとした。弾かれた。

 消えろと女神は叫んだ。数秒で姿を取り戻した

 殴った。弾かれた。

 取り込もうとした。弾かれた。

 巻き付こうとした。弾かれた。

 消えろ! と女神は叫んだ。数秒で姿を取り戻した

 殴った。弾かれた。

 取り込もうとした。弾かれた。

 巻き付こうとした。弾かれた。

 消えなさいと女神は叫んだ。数秒で姿を取り戻した

 殴った。弾かれた。

 取り込もうとした。弾かれた。

 巻き付こうとした。弾かれた。

 消えてと女神は叫んだ。数秒で姿を取り戻した

 殴った。弾かれた。

 取り込もうとした。弾かれた。

 巻き付こうとした。弾かれた。

 もう嫌と女神は叫んだ。数秒で姿を取り戻した

 殴った。弾かれた。

 取り込もうとした。弾かれた。

 巻き付こうとした。弾かれた。


『付き合ってられません、魂の姿のまま永遠にこの世界を彷徨いなさい』

『何だ』

 スラーが嘲るように触手をひらひら横に振ってとジュタンが馬鹿にするようにパタパタ身体を揺らして


 オル・ファーフがこれ以上に無いほど口を吊り上げ誰が見ても馬鹿にしていると明らかに分かるニヤニヤと笑いながら。

『御自慢の障壁で傷一つ付けていないのに逃げるなんて、大したことないじゃないか、エセ神様』

『は?』

『この世界の力はすべて私の物だって言いながら逃げ帰るとか、お前は大したことが無いエセ神様だよ』



 ただの人間に馬鹿にされるのに女神は耐えられなかった。

 臆病で、同じ神に向かうのは怖くて。

 だからこそ、自分のおもちゃに嘲られるのは、自分が絶対に負けない相手に嘲られるのは、自分の創造物に過ぎない人間に馬鹿にされるのは臆病さを上回る程の怒りを彼女にもたらした。

『お前に言われたくないわ!  たかが人間の分際でふざけた口を! お前は絶対に滅ぼしてやる!!』

『良くやったね。人を怒らせることにかけてはやっぱり君は本当に凄いよ』

『え?』

 復讐の神が。怒りで開いた穴を広げて、醜さで孤立した結果全ての神を滅ぼした復讐の神がやって来た。


『オル・ファーフ。君に新たな力をあげよう』

『お前は』

『そこの君の殴りたがっていた女神に一発入れられる力だ。女神様、君の操り魔神じゃなく、新しい僕の『愚神』降誕だ』


 お世辞にも頭が良いとは言えない『愚神』がこの日降誕した。

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