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エロゲ―の悪役に転生したらしい  作者: ゴロフォン
本編
10/21

臆病で演劇好きの女神様

 演劇好きの女神様

 喜劇も悲劇も大好きで

 でも最後はハッピーエンドが大好きです

 臆病で何かあったらすぐに引きこもってしまう女神様、自分への侵入を許さない事にかけては神様随一と言われる引きこもりの女神様

 演劇なんてくだらない、世界の管理に大げさな悲劇も喜劇もわざわざ作る必要なんてない、という友人と喧嘩して引きこもっていました

 自分の大好きなものを否定されて引きこもってさてそろそろ出ようか出てみたら、友達がいなくなっていた女神様

 仲間を探して探して、ふと立ち寄った誰かが管理している形跡のある世界

 そこで彼女は自分の世界が地球という異世界でエロゲ―という動く小説の舞台にされていることを知りました

 悪の魔神に大切な人を汚されながらも最後には打ち倒す

 これだと思いました

 悪の親玉を正義の主人公が倒す

 穢されたヒロインという悲劇

 最後は悪は倒されてハッピーエンド

 そのまま再現しても良いのですが、それだと何だかつまらない

 一手間欲しい

 そうだ、彼らに踊ってもらおう

 この自分好みの話を作ってくれた地球人なら面白く踊ってくれるに違いない。別の世界の魂が入れば新鮮な展開もあるかもしれない。

 最初に拾った地球産の魂は何だか汚れて知性も無さそうで、だけど妙に力強い魂。これはラスボス役かなと、身体を作った。ラスボスなんだから強くて当たり前、お話だとちょっと強い程度だったけど、良いや。世界最強にしてしまえ。どうせ力はあっても知性を感じられないこの魂には使いこなせないに決まっている。主人公が負けそうになったら女神の加護という名の元に弱体化させてしまえば良い。どうせここは自分の世界なのだからと。


 ただ、一つだけ不安だったのは魂が加工できなかったこと。好きにできなかったのです。自分の管轄外の世界の魂だから手は出せなかったのかな。まあ良いや、身体はいざという時は好きにできるのだからこのままで良い。地球の魂という持ち味が薄れちゃうからこれで良いのだ、と女神さまは思いました。本当は、魂の記憶を消しちゃわないといけないんだけど、手が出せないんだから仕方ない。


 生まれたそれは望んだとおりの姿に生まれました。物心がついて5歳を迎えた時にようやく自分に前世の記憶があるということを思い出す。さて、どう踊るかなとわくわくしてみていました。


 人と付き合えない、仲間と思しき物はスライムと絨毯だけ。大雑把な性格で何かあれば力で解決する。ラスボスという存在はもう少し策か何かを使ってほしいと思ったのですが、それでもこの人から孤立した状態。悪くはありません。これぞ悪役の人生、という物です。このままいけば問題なく人といずれ衝突するだろうと思いました。



 さて、そろそろ主人公を作ろうか。女神様は思いました。主人公も地球の魂を入れるというも良いですが最初に拾った魂は何だか汚れていて、もしかしたら地球の魂は皆汚れていてまっすぐな正義感というものに相応しくないのでは無いか、と思えたのです。


 どうしよう、女神様は考えました。そうだ、昔処刑された聖女様がいたっけ。強すぎる力を持ち、人々に恐怖されながらも最後まで人のために戦っていて凄い真っ直ぐな人間だったな、と感動して保管していた事を思い出したのです。これで行こう。せっかくのこの真っ直ぐな魂。あんまり手を入れない方が良いな、ラスボスのあの人間に嫌悪を覚えるようにするだけにしておこう。

 そうして女の子の主人公が生まれました。あの小説では男の子だったけど仕方ない。でも大丈夫。男の欲望にさらされ続けたこの魂は、女の子の方が大好きだから。ヒロインと結ばれてハッピーエンドも問題ない。ラスボスを倒したご褒美という事で生殖器も生やしてあげれば良いでしょう。


 問題が起きました。

 主要な登場人物に地球人の魂を入れようと思ったのに魂が拾えないのです。最初の魂は運よく彼女の世界のすぐ外側に流れ着きましたが、それ以降一度足りともそれが流れ着くことはありませんでした。


 仕方ない、私の世界の魂で良いかな。

 ラスボスだけ地球人。しかし、女神は彼を見て以前から思っていました。

 何だ、私の世界の生き物と大して違わないじゃないか。ただ自分の思い通りにならない。その一点のみしか違いがありません。なら別にわざわざ地球人の魂を使う意味も無いかな。ほんの少しだけ女神の退屈を紛らわせることを期待してはいますが、この様子だとそんな事は出来ないだろうと女神様は酷く落胆していました。

 少し引きこもっていたらいつの間にか友達が軒並み消えていて。話し相手がいないからと自分の世界での一人遊び。つまらない。自分の予想していない展開も多々ありましたが、どうしても自分の創造物である、という主観が入ると所詮は一人遊びに過ぎないという思いが浮かんで楽しめないので。だから他の神の創造物である地球人の魂を入れたら何か変わるかもと思いはしましたが、人間は人間でした。でもほんの少しだけ期待をしよう。



 ヒロインを三人作って、最後に主人公の年下の妹分のヒロインとなる赤髪の炎の少女を作ろうとしたとき、ふと外を見るとあるものを見つけました。


 地球産の魂です。これも前のよりはさすがに汚れていませんが、僅かに汚れています。何だか弱弱しい。ですがどことなく眩い光も同時に放っていました。

 丁度良い。地球人が二人。もしかしたらこれで少しは面白くなるかもしれない。まあ男の魂だけどヒロイン役でも良いよね、と強引に彼女は深く考えずにねじ込みました。



 案外楽しい。そう思いました。地球時代の記憶が残っていたヒロインである彼女は原作とは違いどうしても家族と絆が結べませんでした。子供らしく振る舞えなかったからです。記憶が悪い方向に働いたかな、と思いましたが地球産の魂には手は出せません。それに原作通りにいかないのも偶には面白い、と思いました。


 どうする? 地球の記憶を持つ女の子


 彼女は女神様が見たエロゲ―という作品を見たことがあるようでした。名前を聞いてここがゲームの世界だと気付いた彼女は顔を青ざめさせぶつぶつと独り言を言います。その姿は更に家族から気味悪く思われることになりました。


 驚きました。なんと彼女はラスボスである人間を襲いに行ったのです。小説通りに物語が始まる前に相手を殺してしまえ、とそう思ったのでしょう。

 面白い、こういうのも悪くないかな、と女神様は思いました。


 ちょっとまずいかな、と女神様は思いました。

 ラスボスが自分が物語の悪役だという事を自覚してしまったのです。

「まあこの顔なら納得か」

 そういう顔に作ったのですがそれがある意味仇となったようでした。


 もしかしたら思ったように行かないかも、僅かに女神様は焦りました。

 そういえば今日学園への教師の勧誘の手紙が来るはず。これで断られたらまずいことになりそう。と焦ります。もちろん断ろうとしました。ですが、彼は女神が思った通り愚かだったのです。

 そうだ、代わりにこの娘を教師にしよう。

 普通に断れば良いのに、幼女に教師の仕事を押し付けようとは錯乱しているとしか思えません。


 赤髪の彼女が男に技術の教授を願い出ました。おそらくは付与術と呼ぶそれへの好奇心でしょうが、家族と折り合いが悪いのも原因のはずです。同じ世界に自分と同じ地球の人間。それが気をある程度許す原因だったのでしょう。


 三年が経ち、男と同居するようになった赤髪の幼女はある程度男に気を許しているようでした。おそらくは男が性欲の無い魔剣作りに夢中な人間で、嫌悪感が薄いのが功を奏したのでしょう。


 さて、ギルドに圧力をかけさせた。二月に一度の学園からの勧誘の手紙。面倒だ、とそろそろ爆発するころあいです。

「頼む! 代わりにお前が行ってくれ! 俺が学園に行かなければ原作ブレイクできるんだろ? 俺じゃ人にものを教える教師なんて出来ないし、勧誘は煩いし、代わりに行ってくれ」

 溜息を吐いた彼女は仕方ないな、と首を振りました。三年の付き合いで彼がとても人に何かを教えられる性格では無い事は理解できたからです。それに彼が学園に行かなければ物語も始まりません。幼女に厄介ごとを押し付けるのはどうかと思いますがこれが彼なのだから仕方ない。

 分かったと頷く彼女に男は今まで見た事のないほど唇を吊り上がらせて歯を見せながら笑顔を見せました。そのお世辞にも整っていると言えないその顔で、満面の笑みを見せました。


 それを見て、その日から肩の荷が下りたとばかりにニコニコと笑い続ける男を見て発作的に彼女が怒りのあまり助手という形で学園に連れて行ったのは仕方ない事でしょう。彼はもう少し態度を隠すという事を覚えなければならなかったのかもしれません。そうあるように作られた邪悪な顔が満面の笑顔を浮かべても人は途方もない怒りを覚えるのだという事も覚えなければならなかったのかもしれません。



 面白い、と女神様は思いました。原作回避を目論むはずが一時の感情で舞台に上がる。運がいいのかしら、と何もかもが思い通りである神であるはずの彼女は思いました。やはり操れない地球人は面白い、と。

 ただ、あの男の笑顔は女神である彼女にも苛立ちをもたらしました。あの不快な笑みは悪役らしいと思いますが同時に主人公には絶対に彼を倒して貰わなければ、と心に固く決めました。


 ある意味予定通りともいえる、男への低評価。ただし、女神様はは不満でした。

 そういえば男は今までの人生で女を抱いたことがありません。これでは汚されるヒロイン、が出来ないのではないか。

 とは言えある意味同情すら覚えるほど男は女に人気が無かったので女を抱く機会など無いでしょう。あるとすれば同居人の赤髪の幼女ですがさすがに幼すぎるし、第一男は基本人間嫌いで性欲に興味がありません。


 どうするか、そうだ、と女神様は思いました。黒幕であれば良いが、必ずしもヒロインを穢す役目は彼である必要はない、と。つまりオル・ファーフの『部下』がヒロインを穢す。『部下』を統率する黒幕を主人公が倒すという筋書きでもいいのではないか、と。


 この世界の人間はある程度好きにできるのだから問題ない。女神様はそう思いました。


 武闘大会で名を売り、力を見せる。彼は赤髪の幼女にある程度心を許しているのは分かっていました。

 だから彼女の名誉が傷つき、人の悪意にさらせば、容易く逆上することも知っていました。

 人一人の力を上げることなど女神様には容易い事でした。


 想定通りの結果に終わり、下準備は出来た。舞台は整えられつつある。

 後は原作が始まるだけだ、と。


 男は馬鹿だな、と女神様は思いました。

 原作回避のためと称して何をしだしたかと思えば、主人公に纏わりつく事。不快なラスボスである男。評判は最悪です。これは酷い、と女神様は思いました。

 これではラスボスではなくただの小悪党なボスの取り巻きです。もっとそれらしき威厳か恐怖は見せてほしいと。ただおかげで学園の人間の不満は高まり続けています。衝突は近い。人と魔神の戦いで主人公の少女はその先端に立つでしょう。


 まずい、と女神様は思いました。これまで周辺の舞台設定のためどうでも良い魂は好きに操作していましたが、一応は劇が見たい、という目的がある女神様は役者で主役である主人公の少女とその仲間の魂には手を入れていなかったのです。


 主人公である彼女は前世が聖女で高潔でした。男の欲望に嫌悪を抱きながらもそれでも世界の誰よりも人を許せる人間でした。だから聖女だったのです。

 彼女が彼の男を許した。ラスボスを戦うことなく主人公を許した。

 これでは主人公が悪を倒してハッピーエンドが出来ません。

 仕方ない、と女神様は思いました。手を入れるのは気が進まないが、魂に手を入れようと。


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