転生しました
陰鬱なノリの小説ばかり書いているなと明るめの物語を目指してみようと書いてみました。
気づいたら赤ん坊だった
気づいたら貴族の息子をやっていた
気づいたら没落して逃亡者になっていた
何を言っているのか自分でも分からないぜ! ヒャッハー!
分かりやすくモヒカンにでもしようかと自棄にもなる。
5歳になった時に何かおかしいな、と思ったのはこの世界のものではない別の世界の記憶があったからだ。
赤ん坊のころはバブバブ言っていたような気がする。5歳になって王都で政治闘争をやったまま実の子供は自分の領でほったからしという酷い両親と初めて会った時、こんな映画に出てきそうな悪役顔で大丈夫か! と心の中で叫びを上げて、あれ? 映画ってこの世界にあったっけ? というより何かおかしいな、と気づいたのだ。
その後は前世でVRMMOのデスゲームに巻き込まれて31歳の無職人生を終えた事を思い出した。前衛の体力ステ極振りの戦士でこれで少なくとも死ぬことは無い、なんて思っていたら最終決戦の即死攻撃で足が遅くて逃げられずに死んだんだった。やっぱり極振りは無いわ、と今は思うが死んでしまったのだから後の祭りだ。主人公みたいに格好良かった彼はゲームクリアしただろうか。まあクリアしているだろう。
男なのに駄目な子ほど可愛いという駄目女の典型みたいな性格で、年下なのによく面倒を見てもらっていた覚えがある。年下なのに先輩と呼んでいたが、その先輩率いるあの兄貴オッスオッスと叫んでいた妙に雄臭い集団なら大丈夫なのだろう。実は先輩はリアル女だとどこかで漏らしていた気がするがクリア後のオフ会で貞操が大丈夫である事を祈りたい。
まあそれはともかく。前世はもう終わったことだ。この前世記憶付のファンタジーもどきの世界でどう生きるかだ。どうやら貴族の家に生まれたらしいし、生活には問題ないからじっくり考えよう。
7歳の時両親が処刑されました。あの悪役顔だからやっぱりか、と納得してしまったのが悲しい。悪役顔を受け継ぎ、社交性も皆無だった俺は擁護されることも無くあっさり家を追い出され、お約束通り使用人に金目の物は全部持っていかれ、ついでに自分も息子という事で処刑されそうだったので国外に逃げた。
嫌な予感はしたんだ。変装のために幻惑魔法を覚えていて正解だったな!
森の中央あたりに国境のある隣の国のフルアラクトに森に紛れて逃れ、何とか脱出できた。七歳でどうやって長距離を抜け出したか、というとこれは簡単だ。二体のペットのお陰である。
一体目はスライムのスラー。戦闘能力はお察しだが彼には特技があった。浄化能力である。汚れた衣服と身体も彼に取り込まれれればあっという間に綺麗な身体に! 取り込まれて吸収されるかもしれない恐怖さえ我慢すれば非常にありがたい存在だ。
二体目は実家で数百年放置された何とかという文明時代の縦に長い絨毯が付喪神化したジュタン。話は出来ないが魔力を込めればスライ込でも時速50キロぐらいで走ってくれるまさにこの世界での自動車だ。問題は風圧が凄いので常時それらから身を守る結界魔術を使わないと駄目だという事だ。お陰で5歳なのに風系統の魔術は思ったより使えるようになった。かまいたち! 風結界! あれ? 案外バランスが取れていないか。
果実なんかもスラーさんが毒を浄化しながら取ってきてくれるので食べるのも困らない。あの呼び出したというより作成した当初はあんなに小さかったのに頼もしくなってくれたものだ。ただ身体の大きさがだいぶ大きくなっているのでそろそろ大きさと重さが厳しい。ジュタンさんが厳しい。
ジュタンさんに注ぐ魔力と風の結界の維持にやたら魔力を必要とするせいか、大気から魔力を吸収するのに異様に慣れ、寝ている間も無意識に魔力を吸収するという状態にまでなった。
魔力をうっかり吸ってスラーさんの大きさが縮みました。今世で人に謝った記憶など一度も無い俺だがスラーさんには本気で謝った。気にしてないよ! とばかりに腕をポンポンと叩いてくれたが大丈夫か、怒ってないかちょっと心配だ。
どうするか、と悩んだがふと思いついた。そうだ。魔道具を作ろう。
魔道具の作り方は覚えていた。というより一応侯爵の息子に下手に怪我はさせられない、という事で外に出してもらえなかったのだ。外に出して危ないものから警護するのが面倒くせえ、と思っていたのもたぶんある。つまり家で一人で籠っている時間が多かったから魔術の勉強はしたのだ。学んだのは変装用の幻惑魔術と火水風土の四大属性魔術、それと付与魔術と魔道具作成術である。
マジックアイテム作ってみたい! なんてVRMMOやっていた頃のノリでやってみたら案外上手くいったのだ。
ただ単純な物だけだったが。後は前世でただのネトゲ無職だった俺には仕組みが理解できず短文を刻んだ石が炎を吹き出す、氷を吹き出す、風が吹き出す、岩が堕ちる、くらいで複雑な現象は全く起きなかった。単純ですけど下手な大人のそれよりは効果はずっと高いですよ、やはり貴族の方は違いますねえ、と嫉妬半分馬鹿にした言葉を半分で美人のメイドが言っていたがそういえばあいつも逃げたんだったか。
まあどうでも良い。とにかく単純な物限定だが効果は高い。それが私の魔道具の腕だった。
さてどうするか。自分の吸収力を封じる? それもなんだかな、というより出来るのか。どうするか。
うんうん唸っていた俺の前でスラーが椅子に変形してくれる。ベッドにもなれるし本当に優秀だよ。この世界でスライムが重宝されているというのも分かる。
四半日ほど考えてふと思った。
スラーに吸収した魔力を同程度返すようにすれば良いじゃないか。魔力の循環状態を寝ている間にも常時維持すれば良い。
魔道具はいらなかった。
森を抜ける頃には案外何とかなっていたのでおそらく自分は魔力の操作には長けている方のようだ。腐っても上位の貴族の血を引いているからだろう。
「エンチャントファイアウェポン<レーヴァテイン>!」
青い炎がスラーさんから立ち上った。ファイアスライムスラーさん。水と火が合わさって最強に見えなくもない。蒸発しなくて良かった。
「スラー体当たり!」
ゼリー状の体が細長く伸びて草を焼きながら走ってきていた狼に身体が当たった。狼は真っ黒な炭に生まれ変わりました。食べられる気がしない。肉食いたいなーでも野外で肉とか食あたりしそうだからうかつに喰えないよな。スラーさん肉も殺菌とか出来たかな。
七歳の体ではまだ狼とか戦える気がしない、と気づいたのは森を出て草原を歩いていた時だ。
やたらと速い狼がこっちに向かってきたのだ。ちょ、ちょっと待て! オロオロしていたらひょいと何かが狼に巻き付いた。
ジュタンさんだ。顔に巻き付き鼻と口を塞いでいる。暴れる狼だったが見る間にその動きは鈍くなり、止まったと同時にジュタンさんは巻き付いていた身体を話した。泡を吹いた狼の死体がそこにあった。
「ありがとう! 助かったよ!」
と抱き着こうとしたが気づいた。狼の唾液がいたるところについていると。
スラーさんに浄化してもらい改めて抱き着いた。そして理解する。魔物や動物から身を守る手段を手に入れないと駄目だ、と。
かまいたちと風結界は攻防のバランスが取れて良かった。が自分だけでなくスラーとジュタンも戦えるようにしたい。どうするか、とこれまた半日悩んで出した結論が
エンチャントで属性付与をしよう。だった。
実を言うなら俺が最も得意としているのは付与魔術だ。
たぶんこれは今世の俺が人と比べてだいぶ優秀な長所の一つだと思うが、俺は何かに新しく別の力を付与し、同化させるのが異常にうまかった。毒舌メイド曰く『気持ち悪いほど効果が高いです。魔道鍛冶師に向いているんじゃないですか?』とのことだった。いや、あいつはどうでも良い。
鉄や銀金属はてはそこらの石にまで火水土風闇光マイナーどころでは毒、呪い何でもござれに付与できたのだ。攻撃魔術は使える属性の種類は基本四属性と幻惑と回復以外使えないのに付与なら何でもできた。はっきり異常だと言えるのは相性が悪い属性の金属、例えば水星石という水の力が大きい石には基本的には相反する属性は付与できないのに何故か、あ、こうすれば火の属性ねじ込めるな、と感覚的に分かるのだ。ほぼ何にでも何の属性でも付与できるそれは紛れもなく他人より優位な俺の強みだと思う。
つまり結果が炎と水を併せ持ったよくわからないスラーさんである。魔力だけは馬鹿高いので炎も青い。というより近づくと熱い。燃える水のスラーさんだ。
「お疲れさ、お、おぉぉ!」
スラーさんにいつものノリで腕を触れられて手が燃えた。熱い熱いと踊りながらこんなこともあろうかと覚えておいた回復魔術を唱える。というより転生して誰もが先ず覚えるべきなのはケガした時のための治癒魔術だろう。俺はそう信じて疑わない。
これが明るいのかと言われると首を傾げる。