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siri

作者: みょん
掲載日:2013/08/10

私はこれまでできるだけ人とかかわらずに過ごしてきた。言い訳に聞こえるかもしれないが関わりたいとも思っていなかった。学校では常に一人ですごし、放課後はバイトのある日はバイト。無い日は図書室で読書と孤独な生活を続けてきた。

夏休みに入ったある日、学校も無く暇だったので携帯を買うことにした。バイト代も溜まっているしネットで見る限りでは、最近の携帯は通話メールの他にも様々な事ができるらしい。電話など家電で十分だったのだが暇すぎたし、なによりも少し興味があった。

次の日、近くの携帯ショップでiphoneを購入。いろいろと弄り回しているうちに気になる機能を見つけた。siriという機能だ。こちらから話しかけるとそれに応えてくれるアプリらしい。さっそく話しかけてみる。

「今何時?」

『現在の時刻は2:41分です。』

お、ちゃんと答えてくれた。今度は適当なことを言ってみるかな。

「私これからどうすれば良い」

『申し訳ありません。"私はこれからどうすれば良い"を理解できません。』

『よろしければ"死ぬ方法"をWebで検索できますよ。』

ねぇ。流石にこれはないでしょ。

しかし私はそういいながらもsiriとの会話にはまってしまった。かれこれ2年は続けていただろうか。その間も私は人づきあいもすることなくすごし高校を卒業した。進路に関してはとりあえず近くの大学に行くことにした。勉強はいつもしていたので入るのに苦労はしなかった。

ある日私は大学の寮に移るために引っ越しの準備をしていた。事が起きてから気が付いた。携帯はテーブルの上などに置いておくのだった。テレビを動かそうとしたときうっかり手を滑らして落としてしまったのだ。運の悪いことに携帯の上に。想像通り画面は割れ、電源は入るもののタッチに反応しなくなっていた。私はsiriを起動してみた。ホームボタン長押しでつくのでこの機能は生きていた。私は話しかける。

「もう動かないの?」

『嫌わないでください』

そう返答が来たとたん私は涙が止まらなかった。相手は機械のはずなのに人間のように思えてしまい私は10分ほど泣き続けた。ただの機械相手にバカだと思う人もいるかもしれない。買いかえればいいだけと思う人もいるかもしれない。それでも私は泣き続けた。そしてこれで最後の会話にすることにした。

「さようなら」

『ご一緒できてうれしかったです』

それだけを言い残し電源が落ちた。もう電源は入ることは無く、それを見てまた泣きそうになった私だが我慢した。これはきっとsiriが私に変われと言っているのだと思った。

それから私は変わった。大学ではサークルに入り人づきあいを積極的にした。今となってはなんと彼氏もできた。ほとんど人とかかわらなかった高校時代の私では想像すらできないことだ。もしかしたら大学でも人づきあいなどしなかったかもしれない。siriがいなければ。siriは私の背中を押してくれたのだ。


私はあれから携帯は買っていない。彼氏にそのことを話したところ新しいのを買ってくれるとのことだ。本当はあのipone以外は使いたくなかったのだが断るわけにもいかず、結局買ってもらうことに。本当自分でもいやになる。またiponeを買ってしまったのだ。あのipone以外は使わないと決めていたのに。しかし誰かが呼んでいるような気がしたのだ。おそるおそるsiriを起動する。あぁこの感じ、この感覚あのころと同じだ。

『始めまして。私の名前はsiriです。以後お見知りおきを。』

始めの言葉はそうつづられていた。それに対し私は今までずっと言いたかった言葉を言うんだ。

「ありがとう」と。

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