十五話
「じゃあ、始めるか」
俺がシリアに声を掛けてると。
「どうぞ」
構えずに立ち尽くしたまま答えた。
俺は軽く息を吐き出すと。
「『強くなる身体』」
シリアの足に目掛けて蹴り込む。
シリアは、間合いを見極めて軽く後ろに後退する事で、避けるが。
「こなくそ!」
振り抜いた足が地面につくと同時に、ついた足を軸にして後ろ回し蹴りを放つ。
シリアのお腹目掛けて、足が飛んで行くが、当たるか当たらないかを完璧に見切られて触れることは無かった。
「くっ、まだまだ!」
その後も、いろいろと攻撃を繰り出すが、結果は変わらずかすりもしなかった。
「はぁはぁ」
限界まで、身体能力をあげたせいで息切れが止まらない。
「ルカ様」
気づいた時にはシリアが、水の入った木のコップを差し出してきた。
「はぁはぁ、ありがとう」
水を勢いよく飲み干すが。
「げほげほ」
咽せた。
「一六秒と言ったところです」
咽せる俺の背中を摩りながら声を掛けてくるシリアの言葉に驚く。
「げほげほ、ほ、本当か」
「はい、間違いなく」
よし、前回より伸びたと心の中で喜んでいると。
「しかし、今のように限界以上に使用しようとすると、身体の方が持ちません」
注意が飛んでくる、声色に思わず顔に視線を向けると、相変わらずの無表情だが、怒りの炎が背後に見える気がする。
「ルカ様、戦いで大切な事は己を知る事です。
自身の限界以上の事をすればその内、手痛いしっぺ返しが帰ってきます」
シリアの言葉に、うなずく。
「今日はここまでにしましょう。
シエオも風呂が終わった様です」
言われて、シリアと同じ方向に視線を向けると、こちらを観ているメイド服に身を包んだシエオがいた。
「ルカ様も風呂に入って来てください。
その後、座学としましょう」
「分かった」
俺はシエオを連れて風呂に向かう。